毎週更新、インドのおもしろ政治風刺アニメ『So Sorry』にて、「インド製品と中華製品が戦ったら、インド製が勝つぜ!』と言わんばかりの勘違い?思い込み?プロパガンダ?それとも?なエピソード( 2018/01/21(日) 現実は反対だと思う。 )が昨年8月に公開されていたわけですが......

 

割と直近での更新で、今度はその対象がパキスタンになっております。

対中国編の時と同様に、ここでもインド側が相手をバカにして笑う描写がくっきりと描かれています(苦笑)。

このアニメは、インドのマスメディアの最大手とも言えるところが制作・配信してるわけですが、そこがこういうものを作ってしまうところに、「自国と自国民に対するインドの自信」が見て取れるような気がするのです。

「風刺」作品ですから、それはそれで別によくて、それを以てこのシリーズそのものをどうこう、という気持ちはないので、『So Sorry』シリーズはこのまま「わかりやすくインド政治と社会を面白く風刺」して行ってくれればそれでオッケー、と自分的には思うわけですが。

 

が。

 

この回の内容、ということだけに限って言うと、対中国編のときと一緒で「周辺国よりインドがすごいんだぜ!」という自信(我が家から見ると過信に見えてしまうのですが)と、そこから来る「相手を嘲笑して面白がる」が垣間見えるのですね。

「実際にインドに住んでいた時に多数遭遇した、彼らが強く持っている過信と同じだな」

と、経験上感じるのです。

我が家的にはこれについて、「日本が先の大戦で明確に敗北を喫したような「完敗」経験が、現在のインド人にはないから、「負けたことによって学習できる謙虚さ」に欠けてるのだろう」という考察・分析をして、内輪でかなり話し合ったことが複数回あります。

インドは、現在のインド(Hindu=ヒンドゥー教徒の国)になる前に、ムスリムとモンゴル系のムガール帝国だった時期が500年強、そのあと長きにわたりイギリスの植民地として存在してきたわけですが、現インド国となってからは大きな国際紛争で負けてきたわけではないので、そのあたりが彼らに「India is a great country(インドは偉大な国)」と言わせる何かをもたらしているのかもしれません。

 

「自信」というのはそれが増長して膨張したものでなければ、持つことを何ら否定されるべきではないと思うのですが、これが「度を越してしまう」ことがあると、ちょっと問題かな、とは思います。

 

インドのマスメディア、少なくとも英文メディアで見られる政治家たちの発言を見る限りでは、「国際的な現実への知識・経験が足りないが故の、自国発展への過信」がかなり垣間見えているように感じるのですね。

インドのみならず新興国の政府発表や政治家コメントは「(単に)願望を表してるだけ」の場合も少なくないはずなので、発言に過信が滲み出てくること自体は、「それはよくあることだから」と言っても差し支えないのでしょうけれども......

 

インドに数年住んで、いろんな立場や階層の人たちと実際にコミュニケーションした経験から言うと、

「人のことそこまで笑える立場じゃないのに、嘲笑してdisりすぎだよなぁ」

と思わされるインド人男性がかなり多いことだけは、一人の個人が痛感した経験としては間違ってなくないと言えると思います。

確かに、他国の開発した技術を使って、とはいえ衛星を打ち上げたり、とかは、ちゃんと「すごい」とは思うのです(宇宙事業にしろミサイル開発にしろ何にしろ、他国の技術買ってきて使ってるだけ、と言える現実があるのはまぁそれはそれとして)けどね。

 

そういう諸々を考えていくと、この『So Sorry』対パキスタン回を初見した時に感じたのは、

「打ち上げ100回目成功、っつったって、他国の技術買ってきてるだけじゃん」

「総合的品質で見れば中華製に負けてるのに中華を嘲笑した次は、パキスタンへのネガキャンか〜」

「インドの中パへのdisりや反発の仕方って、なんだか日本の「対中韓」へのそれとそっくりだなぁ」

「ソフトウェアのアウトソーシングとかで「インドすごい」ムードになってるから、ずいぶん自己過信してるなぁ」

というのが率直なところです。

 

一言で言ってしまえば、「いつもの、安定のインド」だな、とも思うわけですが。

 

「負けた経験を得てその負けを認め、謙虚さを学習する」ってすごく大事なのだな、と痛感します。

インドが本当の意味でさらに発展していけるかどうかは、そこも一つのポイントになるのかもしれません。

 

 

ムガル帝国誌〈1〉 (岩波文庫)