この日のエピソードは、現在のシンケンピンク=白石茉子と、その母である先代シンケンピンク=白石恭子の

「親と子の和解の物語」

というお話。

戦隊作品での「親子和解」バナシというのは、たいていは親の側が「自分の子供が地球を守る戦士」であることを知らず、ひょんなことからそれを知り、最後には応援する......というパターンが割と定石のような印象。

しかし、さすが小林靖子脚本というか、さすがシンケンジャーワールドというか、今般のエピソードは
「親をスポイルする生き方を選ばざるを得なかった子供」
という要素が非常に大きい話だったように思います。

現在の殿様=シンケンレッドが十八代目であるシンケンジャー、先代十七代目のシンケンジャーは最後の戦いで十七代目シンケンレッドが(幼少時の十八代目の目の前で)絶命し、茉子の母親である先代シンケンピンクも心身共にボロボロになる重症を負う.....という何とも苦い勝利。

身も心もボロボロに深く傷ついた先代シンケンピンク=白石恭子の療養のために、白石家の入り婿である恭子の夫・白石衛(まもる)は、満身創痍の恭子を連れてハワイに旅立ちます。
まだわずか5歳の茉子を、白石家に置いたまま......。

そのため茉子は、祖父母に育てられ、幼き頃から(おそらく先々代のシンケンピンクと思われる)祖母により侍としての稽古を積んでいくことになるのです。

父が母を連れて家を出て行ったあの日、泣きながらそれを追いかける茉子の姿は恭子の目には入らず.......。

その日から、無意識に親をスポイルすることで自分の心を孤独のつらさからカバーする茉子の生き方が始まったと言えるでしょう。

この「親をスポイルする生き方」が、また違った形で明確に現れていたのが、タイムレンジャーのタイムレッド=浅見竜也。
日本の政治経済界でも有数のトップ企業・浅見グループに生まれたばかりに、幼い頃から自分自身ではなく「浅見の名前に群がってくる人間達」の姿に気づき、父親の敷いたレールの上を生きていくだけの進路に常に反発し続け、自分の未来を自分で切り開くために家を飛び出し便利屋を起業するかたわらタイムレッドとして戦う日々を送るわけですが......。

親も兄弟も親族もスポイルすることで自分を保っているという点では私も同じなので、茉子の
「置いていかれたと思った」
という台詞が心に深く深く刺さり、他人事ではない気持ちでした。

竜也は幾度もの紆余曲折と父との衝突や葛藤を乗り越えて、最終的に「自分の未来」を決めていくのですが、茉子と恭子についてはこの日の放送1回で和解までもが描かれています。
娘を省みる余裕が微塵もないほどに心身深く傷ついた母の想い、それでも茉子を想わない日は一日とてなかったという母の想いを、ちゃんと知ることができ「置いてけぼりにされた孤独」をちゃんと迎えに来てもらえたからでしょう。
個人的には、10数年以上も抑え込んでいた孤独がそんな容易に和解できるものだろうか、とも感じるのですが、救いがあった茉子に対し、外道衆側の「情念ゆえに生きながら外道に落ち、孤独と悲しみから解放されない薄皮太夫」という存在の対立構造が第八幕から脈々と続いており、シリーズ終盤に向けての両者の絡みの関係上、茉子の「孤独が癒され、より一層強くなる」というプロセスは、短期にわかりやすい形で処理される必要があったがために、エピソード1回できっちりと落とし前がついたのかもしれません。

救われた茉子の心。

しかし、それに対立するような立ち位置の薄皮太夫の心は、茉子の孤独すら容易に凌駕するほどの悲しみと孤独。

茉子のように太夫の心が救われる日は、果たして来るのだろうか......と、太夫にも思いを馳せずにいられない回でした。



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