「戦隊のイエロー」といえば、やたらと「カレー」でしょ?と言われることが世間的に多いと思います。
実際には、スーパー戦隊33作品の中で「カレー好きなイエロー」というと、元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』のキレンジャー・『太陽戦隊サンバルカン』のバルパンサー・『爆竜戦隊アバレンジャー』のアバレイエロー.....くらい?だったように記憶しておりまして、よくよく「みんな初代キレンジャーのイメージだけで見てるのね...(;^ω^)」と思ったり。
私なんぞはむしろ、『電磁戦隊メガレンジャー』のメガレッド=伊達健太の焼肉好きっぷりのほうが印象に刷り込まれてるんですけどね...(;^ω^)」

で、目下大人気放送中のシンケンジャー第三十六幕『加哩侍』は、そんなイエローのカレー好きが披露される話?......などではなく。

「苦労する信念と、妥協を要する成功と、どちらを選ぶ?」

という、「信念と妥協のはざまに生ずる葛藤」のお話でした。

東映『侍戦隊シンケンジャー』公式サイト
第三十六幕『加哩侍』ページ
http://www.toei.co.jp/tv/shinken/story/1190058_1569.html

シンケンゴールド=梅盛源太。
幼馴染の志葉家の殿様・志葉丈瑠(のちの現シンケンレッド。先代の17代目シンケンレッドは先代シンケンジャーの最終戦にて、幼い丈瑠の目の前で絶命。)との約束を守るために、独自の稽古で居合い抜きを身につけ、侍としてのモヂカラを持てないために「電子モヂカラ」を編み出し、折神(シンケンジャー世界での式神。折神が合体して巨大ロボになる)も自分で作り出してしまう、まさに「天に愛された才能を持つ快男児」。

しかし、そんな源太もなぜか(?)父親から看板を受け継いだ寿司職人としての腕は
「普通」
(;^ω^)(;^ω^)(;^ω^)
のレベル(苦笑)。

今エピソードにて、源太が生まれて初めて作ったカレーが「寿司屋台に行列ができ、マスコミ取材が殺到する」ほどの美味しさで、飲食業プロデューサーとおぼしき男性が源太に「全国チェーンでカレー店展開」をはかろうと近づくくらい、「寿司は普通だけどカレーは美味」だったという、寿司職人としては複雑な心境になる展開。

自分が「カレーライスが食べたい」と言ってしまったばかりにそんな展開になってしまったことに心を痛めるイエロー=ことはとの対話の中で、源太は営業不振で寿司屋をたたみ夜逃げした父親の気持ちが「今ならわかる」と口にします。
父親の無念と源太に馳せる父の希望を、「たとえ形が違っても自分が店を出す」ことでかなえたいと言う源太。

でも、源太の本心は........。

幼き頃から、彼の心は骨の髄まで「寿司職人」だったようなものです。
丈瑠のまねをして「稽古着ルック」をしてみても、やっぱり変テコな寿司屋ルックになってしまう少年源太(第十八幕『侍襲名』参照)。
この世を外道衆から守るために幼き日々が稽古に明け暮れるだけの孤独な少年丈瑠の、おそらくたった一人の「友達」であった少年源太は、丈瑠への差し入れもやっぱり「寿司」(笑)。

寿司はキッパリとあきらめカレー1本で出店すべきだと言う飲食プロデューサーに、迷いから目が覚めた源太の怒涛の一喝。

「おれは、寿司屋だ~~~!!!」

この一連の流れには「苦労する信念と、妥協を要する成功と、どちらを選ぶ?」という選択の苦しみが包括されており、身につまされるものを感じてしまいました。

日本では、中国武術はまだまだ「ど」が100個つくくらいマイナーで、ちゃんとした認知度はいまだに相当に低いと感じている私は、源太の「寿司」を「武術」に置き換えたら、これはそのまま私自身の姿だよなぁ......と痛感せずにはいられないのです。

収入に全然ならなくても「武術教えます。フィットネススタイルじゃないものを」と苦労して「教室を設けて生徒を募るだけ」に終始してしまうだけなのか、

フィットネスにアレンジして本流からそれようが、それをとりあえず「武術」と呼んでしまって成功に持っていくのか、

どうするのが自分にとって一番良いのか.......と、源太の葛藤がまるで自分のことのように思えてしまったエピソードでした。


ちなみに、日本では今のところ上記の2パターンにだいたい皆様二分されるようにお見受けしているのですが、私の友人でもある前香港武術代表隊隊員・鄭家豪は、祖父と父親が生業として営んでいる武館を継がずに、香港社会のコミュニティ活動に関わる仕事に就き、その側面から「スポーツとコミュニティのかかわりを深め、スポーツ界への支援がコミュニティからフィードバックされるようにしたい」という志を持って今年から本格的に働き始めた様子です。

日本で武術がもっと市民権を得るためには、日本でも家豪のようなそういう側面で「武術と社会との接点」を俯瞰で見ることができる人材が、「武術教練」でも「IOCコーチ」でも「太極拳インストラクター」でもないジャンルに進出していかなければいけないと思うのですが、「指導する立場」もしくは「連盟組織の役職」でないと評価されない、あるいは見下されるという現状では、思い至る人は少ないのではないかしら?と忸怩たる思いにさいさまれるこの頃です。


源太のように、いさぎよく、気持ちの良い生き方ができるようになれるようになりたいものだな......と感じずにはいられなかった一幕でした。



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