昨年の6月25日土曜日、文京シビックホールでの11時公演がマイ楽だった。朝夏まなとさんの退団公演前のライブショー『A Motion』。梅田から続いた『A Motion』文京公演も、大千秋楽まで残すところ6回となった時点でのカーテンコールがまた熱気に満ちて、言うまでもなくその勢いは留まることを知らない状態だった。その熱気が最高潮に達した時、センターのまぁ様が組子達に振り向き「集まれっ!!」って皆を呼び寄せた途端、舞台上の組子達がまぁ様にくっついて団子状態になってわちゃわちゃになった瞬間がありました。もうわちゃわちゃだけど舞台上も客席も本当に笑顔いっぱいで幸せに満ちた空気が流れて、大楽にはどうなっちゃうんだろうと心配なくらいに大盛り上がりでした。

 

 当時『A Motion』に出演しないメンバーは、真風氏の『巴里祭』とずんちゃん主演のバウ公演に分かれて活動していました。『A Motion』メンバー29名が朝夏さんを取り囲む様子を客席から見ていた時に、「今、メンバーの中心にいるまぁ様が今度は真風氏になるんだね。相手役は誰になるか分からないし誰になるにしても、今のメンバーそのままでのトップ就任ってピンと来ないなぁ。」と、ちょっと冷めた思いが過ったのを思い出します。なぜピンと来なかったのかわからないけれど、なんとなーくらしくないなと感じただけで。そして『A Motion』が大千秋楽を終えて約2週間後に、伶美うららさんの退団発表、新生宙組トップコンビは真風涼帆&星風まどか、そして芹香斗亜さんが宙組に組替えと、立て続けに発表があり、6月25日に感じたことが現実になることを思い知らされたのでした。

 

 退団やトップ交代や組替えってこれまでに何十回いや何百回もしてきたし、組のメンバーが変わらないってまずあり得ないこと。そんなこと百も承知であり、まぁ様の退団を理解している上でありながらもこの立て続けの発表は、宝塚に戻って間もない私に、5組制になり組が分割された20年前を連想させ、よく分からない焦燥感に駆られました。何を焦ったのかな。この先どうしようかななんて思ったのかな。ま、そんな思いも一瞬でしたがね。その1週間後の月組公演『ALL for One』(←大好き♡)を観て弾みがついたのか、どうするって取り敢えず次の宙組公演を観るしかないでしょ!って切り替えることが出来ましたから、単純なヤツです。

 

 FNSか何かの歌番組で星組が出演していたことは知っていたけれどメンバーについては詳しく覚えてなくて。真風涼帆さんを初めて認識したのは『王家に捧ぐ歌』のウバルドで、その第一印象は「水夏希さんに似ている!」でした。お名前については「芸名が“真風涼帆”って、涼風真世さんからイイ感じに変えた女性らしい名前だね。」って思い速攻で覚えました。『王家に捧ぐ歌』は劇場ではなくDVDを観たワケで、その当時は宝塚の作品を観たのが映像でも超久しぶりで、中でもアイーダ役の実咲凛音さんに注目していたので、真風さんはそのお兄さん役っていう認識だったと思う。

 数回だけど宙組の公演を生で観続けるうちに、異彩を放つ方だなと思うようになりました。トップの朝夏さんとは持ち味が全然違うからそう思うのかも知れないけれど、そのキャラクターを生かした適任の役を演じているのでその異彩に関しては作品を観る時には全然違和感のないものでした。貴族や王族の役などに当たり、その異彩は身分の高い者を演じるのに効果をもたらしていた。それだけ宙組でいい作品に出会えたのかなと思う。『エリザベート』だって配役発表前はウバルドのイメージからかルキーニを推す声がよく聞こえたけれど、私はフランツが観たかったからそれが叶って安堵したもの。最近の『天は赤い河のほとり』でもヒッタイト帝国の皇子を演じているけれど、彼が自身を「余」と表現してしまいそうな皇帝ぶりが皇子の頃から滲み出ていて、脚本で描かれている以上の表現力や存在感は流石だと思う。

 

 GRAPH4月号の新生宙組トリデンテの会談が微笑ましい。「小柳先生が(真風さんはトップになってから)何作目?と仰っていた」と芹香さんに言われた真風氏が「失礼な!フレッシュだぞ!」と反論するあたりなどが面白い。同じようなくだりを歌劇の座談会で読んだし、小柳先生に限らず別の記事やコメントや会話などでも見聞きする。究極は「真風さんは新人の頃から出来上がっていた…」との言葉。

 別の業界でそのような言葉で表現される方って、その業界での技術に秀でている方かもしくは華があって落ち着いている方のいずれかだと思うけれど、真風さんの場合はおそらく後者でしょうね。そういった方ってウチの会社にもいるなぁ…って思い巡らせた時に解ったことがある。その方は現在支社長で同期の中では一番早く出世している。業務一つひとつにハイレベルな技術や知識があるわけじゃないけれどとにかく顔が広い。社長や上層部も知らない多くの方々と面識があり、そんな人徳ぶりも業務に活かすことしか考えずに自然に発揮し、とにかくオーラがある。人が付く。そしてその方って今はたまたま支社長だけれど、支社長だからこその仕事ぶりではなく常に自分らしく同じペースで主に営業面で実績を遺してきた。誰かの顔色を窺うことなど一切しない。その仕事ぶりやオーラはずーっといい意味で変わっていなくて、ただ肩書が変わってきただけのような方って感じ。

 真風さんが新人の頃から出来上がっているからとトップ就任の新鮮味をふざけて疑問視するあたり、ウチのボスと同じだなと。トップになった真風さんではなくて、トップ状態の真風さんではないかなと。真風さんはようやく0番に立ったワケではなくで、常に立ち位置が“真風”だったんだと思う。その位置がセンターに来ただけに感じられる。もちろん一切同じではなく、今回のトップ就任は真風さんの精進の賜物だと思うけれど、そのオーラからして他人との競争意識が芽生えることなく自身との闘いの中でステージを務めて来られたのではないでしょうか。そして『A Motion』で感じたことは全くの勘違いであり、真風さんの隣やサイドに誰が居ようとも真風さんは真風さんで変わらない輝きを放ち続けることを再認識いたしました。

 

 そう言いながらもまぁ様の退団と共に組の顔がガラッと変わってしまった宙組。記念すべき20周年に文字通りの新生宙組とは、あらためましておめでとうございます。実力があって可愛いまどかちゃんが長身の真風さんにスポッと収まると絵になって「宝塚を観た!」って気分が上がります。芹香さんも組替えの大劇場一発目が『シトラスの風』で良かったのでは。前記事で『明日エナ』について語ったけれど、ゴスペルの歌手としていい仕事してたと思うし、『天河』のラムセスもカッコ良かった。ユーリとの会話も好きだし、オロンテス河でカイル側の兵が揃った後にエジプト軍が浮かび上がって登場するところは大好きなシーンのひとつです。

 

 

 歌劇誌で新しい組の名前を募った時にハガキで応募したんだよ。激しく外れたよ。“宙組”と決まったと聞いて当時「スケールでかっ!!」と思ったよ。私が書いたのは“風組”。カスリもしなかったと思うけれどその一発目のショーが『シトラスの風』って風やん!って思ったし、20年の時を経ての記念公演がまた『シトラスの風 -Sunrise-』でトップコンビが真風&星風の風風コンビとくれば私の中で眠っていた“風組”が主題歌と共に呼び起こされないワケがない!これも何かの縁ですよね。応援しますよ!もうしてるけど。

 

 

 

   ※ その瞬間のイメージで敬称や呼称や愛称呼びなど表現に統一性なく書きました。