傑作映画『キャプテン・フィリップス』 | デイビー・バラードの映画館

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東京国際映画祭のオープニング上映にて、いち早く観てきました。
上映前にはポール・グリーングラス監督とトム・ハンクスが登壇するというおまけ付き。


さて、映画の話に入りましょう。
本作、日本版ポスターのビジュアルからイメージされるようなお涙頂戴感動ドラマではありません。
実際に起きたソマリア海賊による人質事件を題材にした、かなり骨太な作品です。

中盤からの、主人公フィリップス船長がソマリア人に拘束されるシーンは、まるで自分もその場にいるような息苦しささえ感じます。
いつ殺されるかも分からない状況下で、フィリップス船長がとる一つ一つの言動から目が離せません。見ているこちらも、彼と運命を共にするような緊迫感があるからです。

ここはポール・グリーングラスの手腕の素晴らしさで、動きのあるカメラワーク、編集スタイルにより、ノンフィクションをより臨場感たっぷりに見せる見事な演出でした。


冒頭にお涙頂戴感動ドラマではないと書きましたが、でも泣けます。笑
言いたかったのは、泣かせる目的の安っぽい感動作じゃないということ。

私が泣けたのは、映画で描かれる主人公フィリップスのリアルな人物像と心理描写によりすっかり彼のストーリーに引き込まれたからです。

ここで主人公キャプテン・フィリップスを演じるトム・ハンクスの話に移りましょう。
本作でのハンクスの演技は、キャリアの中でもベストに入るでしょう。それくらいの大熱演でした。

ハンクス本人の人柄のせいなのか、彼の演じるキャラクターはまるで観客である私たちのすぐ身近な存在に感じます。登場した途端、ハンクスが演じるキャラクターに感動移入してしまうでしょう。過去にオスカーを受賞した『フォレスト・ガンプ』しかり、名作『アポロ13』もしかり。
これほど深い共感を呼ぶ演技を見せる役者はなかなかいません。本作はまさに、そんなハンクスの魅力が活かされています。

クライマックス、私の涙にはいろいろな感情がこもっていました。改めてこの話が実話であると知らされると、震えが止まらないくらいです。

良い題材に優秀なスタッフ、キャストが結集した本作は、アカデミー賞をはじめ映画賞有力候補の声も上がっています。
ですが賞を獲得するか否か以上の価値がこの映画にはあります。

絶望的な状況下での1人の船長の勇気を描いたヒューマンドラマであり、
ソマリアの海賊と拘束された船長、アメリカ海軍との攻防にハラハラするサスペンスでもあり、
実際の事件を扱った社会派映画でもあります。
そしてポール・グリーングラス監督の見事な手腕と、トム・ハンクスの名演とがコラボレーションを果たし、これ以上ない完成度に仕上がっています。


みなさん、
ぜひこの映画を映画館で観てください。
公開は11月29日です。


作品詳細
キャプテン・フィリップス
Captain Phillips
2013年アメリカ
ソニーピクチャーズ/コロンビア映画
監督 ポール・グリーングラス
脚本 ビリー・レイ
原作 リチャード・フィリップス、ステファン・タルティ
出演 トム・ハンクス

日本公開2013年11月29日(金)