人体図に隠された黄金比 | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

レオナルド・ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図には「黄金比」が隠されていると、フィレンツェ科学史研究所博物館(Istituto e Museo di Storia della Scienza, IMSS)による「La mente di Leonardo」展の映像で解説している。

この有名なデッサンは、紀元前1世紀にローマ帝国で活躍した建築家ウィトルウィウスが著したヨーロッパで最も古い建築理論書「De Architectura」の第三書、第一章に書かれている文章を、レオナルドが視覚言語化したものである。


$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-黄金比1

① この映像によれば、まず人体が内接する正方形と正円に注目。

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-黄金比2

② 正方形の上辺の中央にコンパスの中心を置き、右下の角から右上に向かって円を描くと、正方形の上辺1に対して0.618の新しい辺が出来る。

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-黄金比3

③ そして、この0.618は人体図が内接する正円の半径と一致する。

なるほど、確かに一致する。

1:0.618はイコール1.618:1となり、この比率は古代より最も美しく感じる比率とされる「黄金比」であることが分かる。


$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-黄金比4

レオナルドはウィトルウィウスが書いた「実に、自然は人間の身体を次のように構成した。…頭は顎から一番上の頂まで1/8。」等を忠実に絵画として再現しただけでなく、この「黄金比」を内包することで、自然の英知を数学的に取り入れることに成功しているのである。これがこのデッサンの美しさの秘密なのではないだろか?

ダ・ヴィンチ・コードでも謎解きに使われた「フィボナッチ数列」も、この「黄金比」に関連するものだ。「フィボナッチ数列」の隣り合う数字を割ると「黄金比」となる。1200年初頭にピサのレオナルド・フィボナッチという数学者が提唱したもので、ウサギのつがいが増えていく問題を考えている時に発見したとされている。他にも花びらの数や植物の葉の付き方、ひまわりの種の数や蜜蜂の家系等にもフィボナッチ数は出現する。また「黄金比」はオウム貝の美しい螺旋構造にも現れている。

「黄金比」を数学的な問題として歴史上初めて意識したのは古代ギリシアの数学者、ユークリッドだったといわれているが、彼の書籍も読んでいたレオナルドは当然このような知識を持っていたはずだ。


ちなみにこの黄金比が使われていることで有名な古代建築物として、ギリシアのパルテノン神殿やエジプトのピラミッドがある。

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-パルテノン神殿

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-ピラミッド

そして現在ではパソコンの横長モニターやiPod、名刺やクレジットカードにもこの「黄金比」が使われている。

ウィトルウィウス的人体図は、「画家は自然を師とするべし」と言ったレオナルドが追求しただろう、大自然の神秘を数学的に垣間見るような不思議に感覚に囚われるデッザンなのである。