ギリシア神話の中でも、大工だったダイダロスが息子イカロスとともに監禁されていたクレタ島から脱出するために、羽と蝋で翼を作った話が出てくる。イカロスは太陽に近づきすぎて、羽を固定していた蝋が溶けたために墜落死してしまうストーリーは有名だ。

その後の記録としては、875年アンダルシアのムーア人による飛行実験や、
11世紀の英国マームズベリの修道士の実験、
1178年のコンスタンチノープルで、柳の枝で補強した大きな白衣に身を包み高い建物から飛び降りたが骨折、
1499年イタリアのペルージャでもジョヴァンニ・バッティスタ・ダンティらも墜落したという記録が残っている。
飛行機という考えは、13世紀にイギリスの哲学者修道士ロジャー・ベーコンによって提唱され「人類は翼を羽ばたかせる機構も含めて、空を飛ぶ機械を作ることが出来る」と宣言されている。
ちなみにベーコンの『大著作』では数学、光学、化学に関する記述が含まれており、宇宙の規模についてまで言及されている。また、後世において顕微鏡、望遠鏡、飛行機や蒸気船が発明されることまで予想している。ベーコンは他にもユリウス暦の問題点を指摘し、アイザック・ニュートンより400年も早く水の入ったグラスにおいて光のスペクトルを観測していた。
さらに彼は当時世界の最先端にあったアラビア科学と哲学に親しんでおり、近代科学を先取りして経験と観察の重要性を強調した。ベーコンには百科事典を作る構想があったが断片しか残されていない。
何だかレオナルド・ダ・ヴィンチのような人である。
そしてこちらはレオナルドがアトランティコ手稿に書き残した飛行機械の設計図である。

アトランティコ手稿f.70r_a_飛行機械
レオナルドは飛行機械の製作に情熱を注ぎ「人類は翼を羽ばたかせることによって、人を空中に支えることを実現する能力がある」と記している。実験を重ねた結果、レオナルドの考えは「羽ばたき機械」から「コウモリのように滑空」するという方向に変わっていくが、結果的にこれを実証したのがドイツの技術者オットー・リリエンタールである。リリエンタールが自ら設計したハンググライダーでの実験は1890年代に行われている。
同時期にはフランスの電気技師クレマン・アーデルもコウモリ型の蒸気機関付飛行機を製作、1機は50mの飛行に成功したとも言われている。
そしていよいよ1903年12月17日、米国ノースカロライナ州キティーホーク郊外の砂丘で59秒間、260mの飛行に成功したのは、ライト兄弟だ。
レオナルドが夢見た飛行機械から実際に機械で空を飛ぶまでに400年程経っているが、ライト兄弟からアポロ11号の月面着陸まではたったの66年しか経っていない。