第二章 力を蓄える装置があれば | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

「これは何なの?」ある日アトリエで構想を練っているレオナルドにサライが話しかけた。「イル・パラディーソ(天国)という幻想的な舞台装置。スフォルツァ城で1月に行われた結婚式のお祝いで使ったものだよ。音楽に合わせてこの大きな歯車を回すと連動された歯車が次々に回転して、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星の七つの星をイメージした服を着た少女達が、この地球の周りをぐるぐると回るという仕掛けさ。石頭の教会の連中達はまだこの地球がエルサレムを中心とする円盤だと言っているが、とんでもない!実は地球は宇宙に浮かぶ球体なんだよ。古代ギリシアの文献にもそう書いてある。ドイツの研究者達の中には、地球が太陽の周りを回っていると考えている者も多い。教会からは異端者扱いだけどね。」そう言ってレオナルドは宇宙について書かれた本をサライに見せた。



レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-天国の祭典



舞台演出イル・パラディーソ(天国)




「ところで、」レオナルドはサライの前に座ると問いかけた。「この間言っていた未来のエンジンとやら、それはどうやって力を出しているのかな?」「うーん、良く分からないよ。あっ、でも僕のおもちゃの車は電気で動いてたっけ。」「でんき?それは何だ?」「発電所で作るんだよ。」「はつでんしょ?」「そう、水力発電所とかで作るんだよ。水の力で。それで電池に充電するんだ。」「でんちにじゅうでん???力を溜める装置、か?」「火で動く発電所もあるけど地球温暖化になるから止めたほうがいいんだって。」ちょうどその時ゾロアストロがアトリエに戻ってきた。本名はトマゾ・マジーニ・ダ・ペレートラ、レオナルドとはフィレンツェにいた頃からの長い付き合いだ。彼は精錬工の親方であり、機械工であり、鉛工であり、彫金師であり、彫刻家でもあり、画家でもあり、降神術師でもある。有名なアルキメデスの螺旋階段を丹念に改造して、水を低いところから吸い上げて高いところに噴射するように排水ポンプを作ったりと、彼はレオナルドの設計した機械を実際に製作した。ゾロアストロと呼ばれていたのは、彼がかつての伝説の預言者ゾロアスターの国、中央アジアにいたことがあるからである。


「またホラを吹いているな、サライ。東洋ではこの少年のように天使の顔を持った悪魔に時折人を遭遇させる神秘の法則を、カルマと言う。レオナルド、君の場合は前世でこの少年と何か約束事があって、今ここでそれを果たさなければならないのさ。だからしっかりサライの相手をしてやんな。」レオナルドは微笑んだだけで何も答えなかった。



その夜、レオナルドはひとつのアイディアを得た。「水の衝撃力を封じ込める装置。。。」


「ゾロアストロ!起きてくれ!おい、起きろ!」ゾロアストロは眠い目をこすりながらつぶやいた。「何なんだよ、こんな時間に。。。」「分かったぞ!力を蓄える装置があれば、私達の機械は空想の産物ではなくなるんだ。ついにその方法を思いついた!」まだ目が覚めきらないゾロアストロにレオナルドは言った。「ルカ・パチョーリはいつ戻る?いろいろと計算してもらわなければならん。君にも頼みたいことがある!さぁ、起きた起きた!」



ゾロアストロは不機嫌そうにベッドを降り、小さなテーブルの脇にある椅子に座った。「いったい何事だ? パチョーリとは来週の火曜日にスフォルツァ騎馬像の鋳造の件で会うことになっているよ。」「そうか。ものすごく頑丈な板バネとそれを入れるケース、そして歯車、それから強力な力を少しづつしかも均等に取り出すための無段階変速装置を作るため、この世に無いほどの頑強な材料が欲しい。」「何だって?普通の鋼じゃだめってこと?」「それではすぐに壊れてしまう。とにかく超強力なやつを頼むよ。ドゥオウモを動かせるぐらいの力を封じ込める装置が必要なんだ!」


続く…







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