映画鑑賞「コクリコ坂から」(ちょいネタバレあり) | David room

映画鑑賞「コクリコ坂から」(ちょいネタバレあり)

ごぶさたしています。
ちょうど2ヶ月ぶりの更新になります。
7月の間は、本業の地デジ化追い込みで忙しかったです。
地デジ化も終わり、8月になり少し仕事にも余裕が出てきて、ひさしぶりにブログを更新します。

私唯一のブログである、このブログも更新も不定期で細々とやっていますが、アクセスを見ると見に来てくれる人がキチンといるんだなぁと思い、うれしさと共に、もっといっぱい更新しなきゃ、とも思います。

さてさて、本題は、ジブリ待望の新作、「コクリコ坂から」の感想です。
David room-コクリコ坂から

昭和、それも東京オリンピックの前の年という時代が舞台。その時代の懐かしさと、時代の持つ空気感、日本はまだ貧しいけど、みんな礼儀正しく、一生懸命生きている。私は、学生運動というのをあまり知らないけれども、その頃の学生は本当に文化的で、勉強家で、立派な思想を持った、生き生きとした若者だったんだなぁと感じました。アニメを通して、その時代の持つ文化や空気が伝わってくるというのは、アニメの力を感じます。


冒頭のみんなで食事をするシーン。主人公の海が、朝からガス炊飯器に火をつけて、朝食の準備をする。みんな揃って食べる時代がそこにはあります。そして、街の肉屋さんや魚屋さんが自分のことを知ってくれている、地域コミュニティの結束が高かった時代。今は、本当に人と人とのつながりが希薄な時代、当時は、「向こう三軒両隣」が仲が良かった時代です。

カルチェラタンと呼ばれる建物が出てきます。文化系の部活の部室が集まる建物で、当時の思想を持っている学生の溜まり場でもあるようです。学校側は、このカルチェラタンが古いし、汚いので建物を壊そうとしており、それに反対する学生たちが、激しい反対運動をしています。

このカルチェラタンの学生たちは、哲学に夢中な暑苦しい学生がいたり、太陽の黒点観測を10年もやっている学生もいたり、当時の思想を持った学生の総本山のような感じも受けます。その古い建物の歴史だったり、カルチェラタン独特の文化を大いに感じ、実際の1960年代の学生たちも、このように思想の持った人々が多かったのかもしれないなと感じました。


学生運動と聞いて思い浮かべるのは、日米安保条約に反対した学生たちが、反対運動で血を流し、一部は暴徒化して死者も出たということ。国の行く末を不安に思い、みんな結束したのですが、暴徒化したことに関しては、とてもマイナスのイメージを持っています。この映画を見て思ったのは、その時代の学生たちは思想があるということ。学問に励み、若者が今よりももっともっとイキイキとしている。

この映画には、安保闘争のような強い学生運動は描かれてはいなかったが、思想を持った学生が、学校と戦ったシーンは、しっかりと描いてありました。

この映画は、主人公海と俊の恋愛も、とても丁寧に描いています。というか、これが話の主軸かな。
海と俊は、惹かれ合っているにもかかわらず、俊が海は禁じられた恋であることがわかっていまします。
海の親たちは朝鮮戦争などで血を流しています。戦争が彼らの生まれた頃にあり、そういう時代背景が彼らにも強く影響してます。

私がこの映画で一番感動したのも、この海と俊の出生の事実がわかったところでした。


このコクリコ坂からの象徴ともなっている、旗。
父の航海の安全を願う旗です。
海と俊の旗のやりとりも昔を忘れないという思いを感じます。


戦争が終わって何にもない時代から、東京オリンピックまで、日本人は必死で国を立てなおそうと一丸となってがんばっていたんですね。学生は勉学に励み、必死で物事を考え、思想を持っていた。大人たちは、戦争を引きずりながらも、必死で仕事をがんばっている。

今の時代は、個人主義が当たり前の時代。
やはり個人の方が楽だし、集団はうっとうしいし、めんどくさい。
でもあのめんどくさい時代の良さというのがあるんだなって思いました。


今年の3月11日、国難とも言うべき、東日本大震災がありました。原発による放射能汚染もあり、日本は大変な状況にあります。

この映画を見て、日本がひとつだったあの頃のように、もう一度みんなひとつになって、がんばらないといけないんじゃないかって、思いました。
あの学生のように、哲学、科学、それぞれの専門を一生懸命探求し、カルチェラタンの学生運動のように、時にみんなひとつとなってがんばっていくべきなんではないかと…

でも文字通りみんなひとつになってという意味ではなく、
それぞれがそれぞれの分野で頑張ればいいと思うんですよね。
人って結構エネルギーがあるもので、エネルギーをぶつける先がどこどこのTV局だったりするわけです。
そのエネルギーのぶつけるところが、物事をよくする方向に向けられることを祈るばかりです。

長くなってしまいましたが、最後に声優さんのことについて書かせてください。
長澤まさみさんが主人公海の声なんですけど、本当にしっくりきて、よく似合っていて、最高でした。
普段の長澤まさみさんの声は少し甘ったるい声で、はじめは制作スタッフもミスキャストと思ったそうですが、色々と声をリクエストする中で、長澤まさみさんがトーンを落として落ち着いて話したら、この凛とした海の声が出来上がったそうです。

主題歌のさよならの夏、それから映画の場面音楽もとても素晴らしかったです。


ジブリの中で現実を描いた作品、「おもひでぽろぽろ」、「耳をすませば」にひとつ素晴らしい作品が加わって、大好きな作品になりました。