クラスメートのOくんが、「最近ハマっている」と、一冊の文庫本を貸してくれた。星 新一というSF小説家の書いた短編集だ。
それまでは、眉村卓の「ねらわれた学園」や「なぞの転校生」「時をかける少女」などのSFものを好んで読んでいたが、星新一は初めてだ。
数ページを追って、……ハマった。
それからは、星新一のショートショートを書店で買い漁り、Oくんとお互いに貸し借りをしだす。
そのうち、自分もショートショートを書いてみたい、と思うようになった。
たまたまその頃、生徒会製作で学校全体て文集を発行することになり、作品の募集が始まった。随想、ポエム、コンテンツは何でも良いらしい。
「これだ!」と思った。
それからはいつも(授業中でも)ネタを繰り出して構想を練り、いよいよペンを取る。
あっという間に書き上げ、作品を投稿した。
締め切られて数週間後、「蘖(ひこばえ)」と名付けられた文集が出来上がり、全校生徒に配られた。
ペラペラめくると、無事に僕の作品が掲載されていた。何度も読み返しては悦に入ったものだ。
たから小説家になろう、と思ったことはなかったが、自分の文章力も捨てたもんじゃない、と改めて自信がついたものだった。
生徒会編纂の文集は翌年も発刊され、そのときも自分の作品が掲載された。