消火器事件 | アラカンのリハビリライフ☆五体満足を目指して

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2020年に脳出血で左片麻痺に。自主リハビリを続け、回復への道のりや旬の話題、趣味について発信していきます。

1963年(昭和38年)12月生まれの人間が、脳出血からの左片麻痺で治療中であることを利用しつつ、半世紀以上生きてきた軌跡を振り返る半生記エッセイ。今日は休み時間に廊下に常備していた消火器から消火剤を撒き散らした話。

ある日の休み時間のこと。

級友と話をしながら、そばに備え付けられていた消火器のレバーを右手で少し握ったり離したりしていた。

校内の廊下のいたる所に消火器が備えられていて、火の気が生じたらすぐに消火できるようになっていた。

後から考えると、誰かがストッパーを外していたのだろう。

級友が面白おかしい話をふってきて、思わず笑い転げた瞬間だった。

僕のレバーを握る手に少し力が入った。

その瞬間!

ババーッ!!

せきを切ったような音とともに、真っ白い粉が、消火器のホースから噴出しだした。

あたりはあっという間に白いモヤがかかったように真っ白になった。

横を歩いていた女子たちが悲鳴を上げて走り去っていく。

級友も僕もあまりの突然の出来事に、その場で立ち尽くすだけだった。

別の男子が

「なんやねん、これ!? どないしてん!!」

と駆け寄ってくるが、僕は消火剤を噴き出し続ける消火器に目をやるだけだ。

そのうち、先生たちが駆けつけ、消火器を取り外して噴出を止めようとするが、消火器は全く言うことをきかない。

とにかく噴出するに任せるだけだ。

数分後、「こんな小さな消火器にここまで消火剤が入っていたのか」と思わせるほどの大量の粉を撒き散らしてようやく消火器はおとなしくなった。

あたり一面は消火剤の粉が降り積もり、薄いピンク色に染まっている。

黒い学生服は、消火剤で真っ白になった。

先生の指示で女子たちが雑巾がけをし、授業時間に10分ほど食い込んで、ようやく片付け終わった。

誰かのイタズラでピンが抜かれていたことから、大きくお咎めを食らうことはなかったが、それにしても文字通り「触らぬ神に祟りなし」と思わせる事件だった。