1963年(昭和38年)12月生まれの人間が、半世紀以上生きてきた軌跡を振り返る半生記エッセイ。今日は小学校時代に悩まされた車酔いにまつわる話。
我が家にマイカーが来て、快適なカーライフになったかと思いきや、とんでもない状況が待っていた。
乗り物酔い、である。
後部座席に座って10分も走ると、もう三半規管がおかしくなって、胸が悪くなってくる。冷や汗が出て、リバースしそうになってくるのだ。
これが電車では全く何もない。バスでもなんともない。学校の遠足でチャーターした観光バスでの移動中に、酔ってリバースするクラスメートは数人いたが、僕とは全く縁遠かった。
にもかかわらず、我が家のマイカーではいきなり酔ってしまうのだ。
当時の車なので、クッションが悪かったのかもしれない。何が災いしたのか、今となっては不明だが、とにかくマイカーに乗ることがトラウマとなった。
マイカーのシートの合成皮革の匂いを嗅ぐだけで反応してしまい、思わず生アクビが出ると、危険シグナルだ。
正直、子ども心に悩んだ。
聞くと、父親も若い頃はとにかく酔い性だったらしい。当時、修行していた大阪郊外の工場に通うため、路線バスで通っていたときに、途中、小さな山を抜けるところがあり、左右にカーブが続く区間があったらしい。そこで酔ってしまって途中下車することもしばしばあったんだとか。
車を運転するようになったら、車酔いからは解放される、とは聞いたものの、にわかにはしんじられなかった。
小学校から中学生、高校生時分は、ほとんど車に興味がなく、マイカーに乗ることもほぼなかった。いつしか車はコンソルテから中古のカローラに変わっていたが、乗ることはなかった。
大学時代に免許をとり、父親を助手席に乗せてカローラで試し乗りすることがあったが、緊張の連続で酔うどころではなかったのだが、それで車の揺れに身体が馴染んでしまったのか、まったく車酔いから解放されて今に至っている。