サイゼリアでランチ | 大河滔々

サイゼリアでランチ

待合には最適なロケーション。。。




駅周辺の他のファミレスは、


100メートル以上先に、


ロイホが見当たるだけ。



こじんまりとした店内には空調が効き、


誰かに遭遇する可能性も非常に少なくて、


南口での待ち合わせに重宝してる。



ここ以外を指定したことはない。


彼女の職場にすぐ近いので、


密会には細心の注意を払わねば。




ビルの2階にあるサイゼリアは、


お昼時で混雑でごった返していた。


なんとか喫煙席をキープ。



着席と同時に一服してしまう。


燻らす煙に待ち遠しさを乗せて。


時計は13時の5分前を指している。



きょうは何分に会えるのだろう。


待ちあぐねるのは慣れたとはいえ、


あのコに会いたい気持ちは未だ変わらず。




(タバコを消し)入り口に視線をやると、


Mちゃんが不安そうな表情で、


オレを探しているのが目に留まった。



予想していた時刻より早い到着に、


一瞬戸惑いと驚きを感じつつ、


手を振り自分の位置を知らせた。



オレに気づくと打って変わり、


笑顔で早足にこちらへ向かってくる。


オレも満面の笑みで出迎えた。




「おう、お疲れ。


来てくれてありがとう。


会社はバタバタしてる?」



『お疲れさまです。


連絡が取れないから、


来てくれないんじゃないかって。


不安でいっぱいだったんですよ。


もしいなかったらどうしようかと。』



「そんな訳ないじゃん。


Iさんのためなら必ず来る。


いつでもどこへでも。」



『気持ち悪いなあ。


お願いですから普通にして下さいね。


ところで何を食べます?』



「適当に頼んじゃおう。


何を食べたい?


迷うなら二人で分け合って食べよっ。」



『小エビのカクテルサラダと、


マルゲリータピザがいいかな。』



「メインは若鶏のグリルにする?


それとも大好きなぺペロンチーノ?」



『パスタにしたいけど、


ニンニクが気になっちゃう。』



「大して使ってないし、臭いは大丈夫!」



『思い切っていっちゃえ。


Wサイズで頼んじゃいます。』




注文を伝え、料理が出るまでしばし歓談。


対面から口を開いて出てきたのは、


アイツの話題だったんだ。




『Mさん(カレシ)が虫をやるのはいいの。


私も止めろとは思わないんです。


悪いのは思いやりがないこと。


連絡がこなかったり、


メールが返ってこなかったり、


自分が忙しくてできないにしても、


相手を気遣うような一言がほしい。


それだけでやり取りがなくても我慢できます。


サイゼリアで思い出したけど、


去年付き合って間もない頃に、


カレシの家の近く世田谷のお店に、


連れていかれたんですね。


エスカルゴを生まれて初めて食べました。


カタツムリって教えられたから、


私はイヤだった。


そんなのムリ!!


それでも美味しいからって勧められて…、


正直本当にマズかった。


もう二度と口に入れたくないですよ。』



「それは大変だったね。


エスカルゴは癖があるので、


万人向きとはいえないな。


サザエが好きなら抵抗無いと思うけど。


ちょっとしつこいかもしれないが、


アイツの性格は変えられないよ。


変えようとしてもいけない。


受け入れるか、我慢するしかないんだ。


結婚を考えているんだろう。


そうしたら一生耐えなきゃならん。」



『分かってます。


でもMさんが本当に大好きなんです。


やっぱり最近は、


好きだけじゃダメなんだなって思いますよ。


いつかはヨリを戻せたらと考えているけど、


いつになることや。。。(笑)』



「去年は同棲や結婚をしようと、


アイツから散々コクられたんじゃないの?」



『付き合ってすぐ1年後に同棲して、


2~3年後には結婚して籍を入れようと。


嬉しかったんですけれども重かった。


元カレと別れたばかりで、


気持ちの整理もまだだったし、


落ち着いてもいなくて、


そんな気分にはなれなかったの。』



「最近、その話は出ない?」



『全然出ませんね。


好きとも言われてないかなあ。』



「アイツに愛されてるって言ってなかったっけ?」



『最初はね。。。(笑)


会うたびに‘愛してる。’としつこくて、


気持ち悪かった。。。(笑)


私その言葉が大嫌い。


誰にでも簡単に言っちゃうような、


軽々しく使ってはいけないと思う。


あっ、でもこないだ最近、


別れてから愛してるって、


Mさんから言われちゃった。』



「それはベッドの上で?」



『そんなバカじゃないですよ。


別れてからはそういうコトしてません。


付き合ってもいないのに、


身体を許す訳ないでしょう。


カラダだけの関係なんてありえない。


そこまで軽い女じゃありませんから。』



「そりゃそうだ。


いまはお互い距離を置いて、


自立(律)するのに専念しては?


何年かして交際してもいいかも。


確か25歳に結婚すると、


結婚線が出てなかったか?」



『3年後は分からないよ。


まず相手がいないもん。


Mさんは何かの資格を取って、


私は通信で高校を卒業して、


お互いに安定したら、


再び付き合おうと話し合った結論なのに、


口だけで何もしようとしてない。


去年からずっとそのまんま。


私は一人暮らしをするお金と、


学費を一生懸命貯めてるのに。


毎月5万円はきつくても頑張らなきゃ。』







「きょうの服装可愛い。


あっ、ブーツ履いてきたんだ!


買ったって昨日言ってたやつ?」



『褒めてくれてありがとう。


そうです、こないだの休みに買ったの。


夏なのに変かなあ。


でもブーツ履いてる人を見かけたんですよ。』



「ベージュのワンピが夏らしいし、


秋との端境期で先取りしてる感じ。


バランスは悪くないとオレは思う。」



『良かったぁ。


丈が短めの茶色で気に入ってますね。


それと会社が冷房効きすぎてて、


ストールを持ってきたけど失敗だったかも。


黒だと重いですよね。』



「うん、確かに。


夏なんだから白か、


薄いグレーやベージュのように、


軽い色合いがいいはず。」



『やっぱりそうかぁ。


話が飛んじゃうんですけど、


私って元カレと別れて以来、


自分の好きな格好をしてます。


Kさん(辞めたバイトの女の子)に、


“Mちゃんって洋服の趣味変わった?


いまのファッションの方が、


Mちゃんらしくて似合ってる。”


と、言われて嬉しかったぁ。


Tシャツにパンツ、スニーカーが、いまのスタイル。


以前はスニーカーなんてありえなかった。


ヒールかブーツしか履いてなかったでしょ。


前カレ好みのお姉さん系は卒業。


付き合ってる人の影響って受けません?』



「ああ、それはあるかも。


交際するコに合わせて変わってた。


モードからストリートまで。」



彼女は愛する気持ちを胸に秘め、


期待半分、諦め半分で、


アイツが思いやりをもち、


経済的に自立するのを待っている。



お互いが依存し合うことなく、


それぞれ独立した関係になり、


添い遂げる日を望んでいるんだ。


いつになるかは分からないまま。



アイツはオレと同じ道を歩んでる。


具体的に何をしたいのか分からず、


趣味に逃げ込まずにはいられなかった、


20代前半のあの頃と。




一念発起し一つ一つ課題をこなさねば、


何ひとつとして実現しないだろう。


同時に並行するなんて無理難題。


オレもアイツも不器用な性格だ。



あのコもそう、


同じ中退トリオでつながった縁。


偶然知り合うまでまさかお互いに、


ドロップアウトだとは知るはずもない。



まるで運命に導かれるように、


不思議と仲良くなり、


紆余曲折を経て現在に至る。




食事を終えて別れる前に、


オレは誘うことにした。



「今夜、オレの車で一緒に帰らない?」



『渋滞に巻き込まれないかな。


こないだみたいに遅れたらイヤだし、


お母さんと気マズくなるのは…。』



「前回は新宿から初めてで、


途中迷ったじゃない。


何度も通って慣れた道だし、


中野からの方が早く着く。


今回はトバして行けるから。」



『分かりました。


20時に上がるので、その時間に。


ちょっと遅れたらゴメンなさい。


どこで待ち合わせます?』



「いつものドンキの前で。


20時に迎えに来る。」



『はい。


もし北浦和まで間に合いそうもなかったら、


途中の駅で降ろして下さいね。


電車で帰りますから。』




恒例で手を差し伸べてきた。


右手で固く握手を交わし、


それぞれ姿が見えなくなるまで手を振って、


笑顔でバイバイしたんだ。