その日は始発の電車に乗り、山梨へ向かっていました。

 

猿橋駅に差し掛かろうかというタイミングで、小田急線で人身事故のニュースが電光掲示板に流れました。

 

実はこの日、山梨に行くか、静岡に出るか迷っていたのですが、韮崎のワニ塚の桜を一度見たくて、中央線を選んだという経緯があったのです。

 

もし静岡へ向かっていたら、事故に巻き込まれて立ち往生していた訳で、今思えばこの時点で既に「選んでいた」ことになる訳です。

 

 

 

 

思いのほかしんどい(体が鈍りすぎていたともいう)韮崎の段丘を登りワニ塚の桜を収め、ついでに神代桜に立ち寄るも、人が多くて遠目でスルー、白州の天然水で渇きを癒し、生かさず殺さずの傾斜がうれしい甲州街道をひた走り──

 

目指していたのが、諏訪大社上社の摂社である御射山(みさやま)神社こと原山さまです。

 

八ヶ岳からの吹き下ろしに負けじと、ヒルクライムを続けてきましたが、境内に入るとぴたりと風が止みました。風が入ってこない、といった方が正しいかも。

 

静まりかえっていました。

 

秋の草むらに踏み込んで、虫の声が止まる。正にその感じでした。

 

息を潜めてこちらを窺っているような感覚を抱き、これはとんでもない所へ来てしまったかもしれないと腹をくくります。

 

御射山社、国常立命社、浅間社、神功皇后社、子安社、大祝有員社、大四御廬社、磯並社と一社ずつ丁寧にお参りをし、一番奥の三輪社に手を合わせ終わると、森の息づかいが戻って来たようでした。

 

安堵しつつ、境内を後にしようとして気付いたのです。まだ一社残っているらしいことに。

 

再度鳥居を潜り、見落としていた西宮社に手を合わせ参道を戻ると、鳥居の脇に何か落ちているのに気付きました。

 

一端通り過ぎたものの、やはり捨て置く訳にはいかないと、その空き缶を拾い上げました。

 

悪名高いストロング系チューハイをよりにもよって、ここに捨てるのか……

 

しかも中身がまだ少し残っている。

 

途中でぶちまけたら最悪だなあと思いつつ、出てすぐの所にゴミ箱がありますようにと、ロードバイクのフロントバックに、空き缶を括り付けたのでした。

 

 

刺激的なダウンヒルのお陰で、案の定少し酒をぶちまけつつも、しかるべき場所へ捨て、諏訪大社上社前宮、本宮と巡り、諏訪七不思議のひとつ「葛井の清池」と欅の大樹で有名な葛井神社に立ち寄って、疲れ切った体にタンパク質を摂取すべく、サイゼリヤへと舵を切り、ここでようやく御札の話に繋がる訳ですよ。

 

思うに、達屋酢蔵神社で授かった御札は「たいへんよくできました」ってことでしょうか。特別に氏子に迎えてくれたかのような御札でしたからね。

 

神様からの気持ちは素直に受け取るが吉ですよ。

 

僕の持つ神秘十字線と仏眼という宿命に、この日の運の流れが重なり、龍の通う霊地で陰徳の返礼を受けたというお話でした。

 

読んで下さった方にも、よい気が巡りますように。