雨は上がっていた。

日暮れにはまだ早いが、分厚い雲のおかげで音無川沿いの石畳は黄昏時のように薄暗い。

神社へゆくには一度岩槻街道へと登るのか、それとも他に道があるのか。目を凝らせば街道への途中に七五三の幟が揺れていて、その間を階段が丘の上へとのびている。その階段の口で白猫が姿勢良く座っていた。

おそらくそこが近道に違いないし、そうでなくても大した寄り道にもならないと踏んで、猫の横を通り過ぎようとした。

白猫と目が合った。微妙な緊張感が走った。試しにしゃがみ込んでみると、白猫は少し身構えた。手を差し伸べる。一瞬迷ったようにみえたが、白猫はゆっくりと近づいてきて、手の甲に額を押し付けてきた。

ひとしきり撫でたところで、キリがないと立ち上がると、猫は背中を向けて微動だにしなくなった。

無言で語る背中は憤りと痩せ我慢と寂しさが入り混じっていて、君は実に猫だなあという感慨以上のものはない。

帰りに同じ道を戻ると、若い男が件の猫を撮影していたが、そこへ自転車でおばちゃんが乗り付けてきた。白猫はおばちゃんに駆け寄った。おばちゃんと猫の会話からすると、その野良猫は夕飯を待っていたのだろう。

都心には雨上がりの虹がかかり、即位礼正殿の儀は滞りなく行われ、飯はまだかと猫は鳴く。

王子神社にはそんな猫がいます。