半年以上前から、ステロイド外用薬を塗っても、どんどん湿疹が悪化して、
あまりにひどいために、悪性リンパ腫などの病気を疑われていた高齢の男性の患者さん。

その方は、老人施設に入居されており、
スタッフの手で、毎日、たっぷり強いステロイド外用薬を塗られていたのでした。

それでも湿疹が治まらずに、ステロイドの内服薬も処方され、さらに悪化したために、
ドクターゆきのクリニックを受診されました。

全身に隆起した紅斑が広がり、ちょっと服を持ち上げただけで、カサカサと薄い皮がおちてきます。両手はごわごわと角化落屑が多くなっていました。
皮をちょっととって顕微鏡でみてみると「ヒゼンダニ」がいました。
「疥癬」と言って、老人施設やディサービスで流行るダニによる感染症でした。

ステロイド外用薬は免疫抑制作用もあるので、「疥癬」の患者さんに塗ると悪化します。
早速、ステロイド外用薬は中止し、ステロイドの内服を少しづつ減らしていきました。
殺虫薬を投与して、2か月ほどで「ヒゼンダニ」は退治できましたが、
ステロイド外用薬を止めた後から、四肢に結節性痒疹(1~2cm位の大きさの結節が多発)ができました。


かなり痒いようで、ひっかいて傷だらけになっています。
認知症の方なので、施設のスタッフが「掻かないで~」と言っても無視して、容赦なく搔いているのでした。
ご本人は、傷だらけでも大して気にされてないようでした。傷だらけで流血しながらも、施設内をうろうろして、他の人に話しかけたりしていたそうで、相手の方は相当びっくりしたことでしょう。

結節性痒疹は、通常、ステロイド外用薬を使用しても、治しにくい難治な皮疹なのですが、
結局、このおじいちゃんは、それらをすべて「自分で掻きむしりとって」、
数か月後には、すべて治してしまいました。盛り上がりは消えてしまいました。

もちろん、その間に、ステロイド外用薬は一切処方しませんでした。もちろん、保湿剤も処方していません。
そして、もう痒くなくなったとのことで、通院は終了しました。

「おお~、搔いて治すとは、このことを言うんだな~」と感心した症例でした。