手紙 (リョーコ⑦)
その後就職して、結婚して、引っ越し。
離婚して、再婚して、また引っ越し。
長い年月を経て、高校の友人にいつぞやの無礼を許してもらい、
リョーコともまた連絡を取る様になっていたけど、
相変わらず音楽とは無縁の生活。
私にとって音楽は、苦しいだけの記憶でした。
我が身の無能さ、みっともなさに
思い出すとハートがチリチリする。
ある日一通の手紙を見つけた。
整理下手を自覚している私は、
手紙も読んだら捨てることにしてるんです。
それがクリアーファイルに挟んで、大事にしまってある。
?
なんだっけ?これ。 σ( ̄、 ̄=)ンート・・
消印は15年前。さっぱり覚えがありません。
それはリョーコからの手紙でした。
雑誌から切り抜かれたらしい、ボロボロの歌詞カード
スティービーワンダーの 「Over Joyed」
それから、メモが一枚入っている。
「いつか、あんたと一緒に」
15年前と言えば、私がめちゃくちゃ荒れてた時期です。
一方のリョーコは、クラブでピアノを弾いていた。
店の女の子と間違われて、お尻を触られたりして。
明日は仕事、ないかもしれん。
その日暮らしの下積時代。
自分も苦しかったやろうに、苦しむ私に「一緒に夢みよう」と
差し出した手紙。
私は返事も出さなかったと思います。
「何をばかげた事を」と一蹴していたかもしれません。
でもこんなに大事に残してあるんや。
ばかげた事にあんたも夢を見たんやん。
当時の腐ってた自分を、抱きしめてやりたい気持ちになりました。
その手紙を見つけてから、ちょうど1年になる来月。
私の主催でマックス(vo)とリョーコ(pf)は共演します。
このライブが決まった時、リョーコからメールが来ました。
「私とあんたの新しい関係にワクワクしています。
三人のライブやからな。『 Over Joyed 』 するで」
20歳そこそこの小さな誓いを、彼女は覚えていました。
私とリョーコ、マックスの夢は
まだまだこれからです。
OverJoyed
おしまい