パロディ童話「バカチン売りの少女」(作:うお~たぁ) | うお~たぁの独り言

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むかしむかし、感染症の流行していた寒い時期の事でした。

汚らしいマスクを着けたバカチン売りの少女が、
密を避けながら通行人に呼びかけました。

「バカチンはいかがですか?」
「お願い!一本でもいいんです!誰かバカチンを買ってください!」
「4回目のバカチンを打てば感染が完全に収束します!」


でも、誰も立ち止まってくれません。

ここでは売れないので、場所を変えようと少女が歩き始めた時です。

目の前に一人のマスク非着用者が近づいてきました。
危ない!少女はうつされると思ったのか慌ててよけようとして転んでしまい、
そのはずみに自分が着けていたはずのマスクがどこかへ飛んで行ってしまいました。

少女は失ったマスクをあちらこちら探しましたが、どうしても見つかりません。

仕方が無いので、マスク非着用の状態で歩き出しました。

人通りのある道を通っているうちに自分の悪口を言われているのに気づきました。

そして、マスクを着用していないと石を投げつけられたり、蹴られたりする…

そんな怖いニュースが流れていたことを思い出しました。

少女は身の危険を感じ、人通りの少ない路地裏へ避難をしました。

バカチン売りの少女は薬屋さんの従業員として働いていました。
バカチンが一本も売れないまま薬屋さんに帰っても店主は中に入れてくれません。

それどころか「この、やくたたずめ!」とひどくぶたれるのです。

 

「殴ったね?親父にもぶたれた事ないのに!!」
なんてことは口が裂けても言えませんでした。


バカチンも4回目なので売れる気配が全くしなかったのですが、
お給料をもらえなくなるのでそのまま帰るわけにもいきません。

家に帰るのにも人通りの多いところを通らないといけないので、
マスク非着用の状態で帰るとなると無理ゲーです。

少女はあまりの寒さに凍えそうになってきました。

「そうだわ。バカチンを打って体を温めよう。」
そう言って少女は一本のバカチンを打ちました。
グサッ!
バカチンを打った後の腕の痛みは意外と心地いいものでした。

痛みで寒さを少しだけ和らげることができたのです。

そして、少女の目の前にみんながマスクを外している光景が広がりました。

「バカチンを打てば感染が収まって元通りの生活になるって本当だったのね!」

少女がみんなに話しかけようとした時、みんなの姿が消えて、
打ったはずのバカチンの効果も切れていきました。

「バカチンは何回も打たないといけないのね!」

少女は再びバカチンを打ってみました。

あたりはぱあーっと明るくなり、光が壁を照らすと、
まるでレストランの中にいるような気持ちになりました。

レストランのテーブルからはアクリル板がなくなっていて、
みんなが楽しそうに喋りながらご飯を食べています。

「私も参加させて!」と少女は輪の中に入っていこうとしました。

するとその時、すうっと少女が打ったバカチンの効果が切れて、
レストランの中の楽しい空間はあっという間に消えてなくなってしまいました。

少女はがっかりしてもう一度バカチンを打ちました。

するとどうでしょう。

地元の祭りの賑わっている光景が浮かびました。
祭りに来ている人たちはみんな笑顔で楽しそうです。
金魚すくい、射的ゲームなどの愉快なお店もたくさんあります。
少女がそれらのお店で景品5等となっている骸骨のキーホルダーをじっと眺めていると、
楽しい祭りの光景は消えてしまいました。またバカチンの効果が切れたのです。

「バカチンには幻覚を見せる効果があるのかしら?」

けれども景品5等の骸骨のキーホルダーは何故か消えずに飾られたままです。

「まるで呪われたアクセサリーのようね…」

その骸骨のキーホルダーはJCHO財団に所属していたシゲルおじいさんにそっくりでした。

少女は社会で死んだことになっているシゲルおじいさんの言葉を覚えていました。

「人流より人数」「ステイホームなんて必要ない」「飲食店を閉める必要はない」

少女は優しくなかったシゲルおじいさんのことを思い出しました。
シゲルおじいさんはバカチンを猛プッシュしていた有力者の一人でした。

「ああ、シゲルおじいさんに天誅を食らわしたいなー」

と少女の中で"闇少女"が目覚めようとする中、またバカチンを打ちました。

すると少女の目の前に汚らしい顔がぼ~っと浮かび上がってきました。

それはJCHO財団から補助金を盗んで追放されたシゲルおじいさんの顔でした。

世間の誰からも相手にされなくなったシゲルおじいさんは、
行く当てがなくなって少女の元に生霊を飛ばしたのです。

少女「そうだわ。シゲルおじいさんの生霊にバカチンを全部打てばいいんだわ。」

シゲル「一人で何本も打つ馬鹿がおるか!?」

少女「でも、おじいさんは打てば打つほど効果が出るって言ってたでしょ。」

少女は早速シゲルおじいさんの生霊にバカチンを打ちました。

少女「シゲルおじいさん、代金は払ってもらうわよ!」

するとクレジットカード決済でシゲルおじいさんの貯め込んでいた補助金マネーが支払われました。

シゲル「ぐおわあああああ!わしの貯めた補助金があああ!」

シゲル「わしがバカチンを打つと補助金で払われるとはどういうシステムじゃ!?」

シゲルおじいさんのヘドロのような臭い息に耐えながら、
少女は自分の持っていたバカチンを全て打ちました。

少女「悪霊よ!退散しなさい!」

シゲル「おろろ~ん…おろろ~ん…」

するとシゲルおじいさんの生霊は浄化されて消え失せました。
その後、シゲルおじいさんの姿を見た者は誰もいないといいます。

集まった町の人々は、
「かわいそうに。補助金を盗んだ罰が当たったのね。」
と言いました。

これで少女の手元のバカチンは全てなくなりました。

盗まれた補助金が戻ってきたので少女はそれを全て寄付して、
正義のヒロインとして町のみんなから讃えられることとなりました。

それ以降は感染症の話を聞くこともなくなり、
誰も傷つくことなくお話は終わるのでした。

めでたしめでたし。

シゲル「わしは!?」



元ネタはこちら。

 

 

元ネタの「マッチ売りの少女」はとても悲しいお話なのですが、
今回はややギャグ色強めでアレンジさせて頂いております。