人口至上主義の弊害と題しましたが、筆者は人口は一定増加していく方が国家にとっては望ましく、また、我が国で起きている少子化は食い止めるべきだと考えています。
ここで言う人口至上主義とは、2000年以降高まった地方分権の掛け声と同時に煽られた過度な都市間競争の弊害として顕現するに至った、住宅地域開発施策を指しています。
さて、現在日本全国で、人が住んでいない空き家が約800万戸もあることをご存知でしょうか。
国土交通省調査の統計によると
2013年において、総住宅数の13.5%、820万戸が空き家だそうです。http://www.mlit.go.jp/common/001125948.pdfもちろん、空き家認定に関しては、非常に曖昧な基準との評価もあるため、この統計が過大との批判があるようですが、膨大な住宅が既に過剰になっていること、今後人口減少によって増大していくことは確実でしょう。
そのような住宅過剰社会にスポットを当てた本がこれです。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883979
(P8より抜粋)
野村総合研究所によると、このまま空き家になった住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2013年に約820万戸の空き家が10年後(2023年)には約1400万戸、空き家率は21%に、20年後(2033年)には約2150万戸、空き家率は30.2%になると予測されており、3戸に1戸が空き家という将来が待っています。
何も対策を講じないという前提ではありますが、
20年後には3戸に1戸が空き家になるというショッキングな分析になっています。空き家の発生による問題として、国土交通省は大きく次の5つを挙げています。
①倒壊、崩壊、火災発生のおそれ等防災性の低下
②犯罪の誘発
③ごみの不法投棄
④衛生の悪化、悪臭の発生
⑤風景、景観の悪化地震大国の我が国においては、特に①の防災性の低下は深刻な問題ではないでしょうか。
遅きに失した感はありますが、国においては、2014年度に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(公布は2014年11月27日)を制定し、国と地方が協力して、空き家の減少や活用に取り組んでいるところです。
先に紹介した本の中では、多様な観点から空き家増加の原因を分析し、その対応策が述べられています。拙ブログにおいては、市街化調整区域の規制緩和を取り上げたいと思います。
この本では
「焼畑的都市計画」と表現されていますが、本来、開発を抑制すべきである市街化調整区域の開発基準緩和により、農地エリアに住宅のバラ建ちが進行、住宅過剰の一要因となっているのです。具体的には、
2000年の都市計画法改正によって、開発許可権限のある自治体が、開発許可基準に関する規制緩和の条例を定めれば、市街化調整区域でも宅地開発が可能とされたのです。
では、なぜ、このような「焼畑的都市計画」が横行したのでしょうか?
著者は、次のように述べています。
(P80より抜粋)
それには、他の市町村がどうなろうと、自分たちのまちの人口をとにかく増やしたいという根強い人口至上主義が影響しています。特に自治体の首長や議員の多くは、「市街化調整区域のせいで人口が増えない、だから都市計画の規制緩和をして新築住宅を建てられるようにすれば、人口が増加するのだ」と根強く信じ込んでおられるのです。
当然ながら、規制緩和をした農村地域では若干人口が増えますが、
内実は市内中心部あるいは周辺市町村からの移住者がほとんどで、限られた人口を奪い合っているだけというのが実情のようですね。
著者は、このような
規制を緩和して人口を奪い合う状況を「規制緩和合戦」とも表現しています。
(P169より抜粋)
人口をとにかく増やしたい市町村は、必然的に自分たちだけの視点・論理で、開発規制を緩和する方向に流れる傾向にあります。その結果、隣の市町村同士で、限られた人口・開発需要の奪い合いが起こり、さらなる規制緩和を繰り返すといった悪循環極まりない「規制緩和合戦」が繰り広げられているのです。そしてその規制緩和合戦によって、近隣同士でお互いに人口の低密化を進行させながら、居住地の面積は拡大するという、非効率なまちへと作り替えられているのです。
住宅建設はそのすそ野の広さや住宅入居後の家具や電化製品購入等々、多大な需要も発生するため、経済波及効果は非常に大きいと言われています。また、現金収入が僅少な農家にとってみれば、開発規制緩和による土地売却やアパート経営は魅力が大きい。
しかしながら、都市計画策定に関しては、経済的観点は二の次、三の次とするべきでしょう。
過剰な都市間競争は、人口減少、内需縮小下にある我が国では無意味だと考えます。人口確保にせよ、工場等の立地競争にせよ、パイの奪い合いになるだけですからね。結局は、外資や移民に頼ることになりかねません(既になってますが)。
とにもかくにもお薦めの一冊です。著者が多分に漏れず、我が国が深刻な財政危機にあることを前提に論を展開している点が気になりますが、そこを除けば貴重な提言満載の本だと思います。
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