心の支え
心の支え
家を出た日から、もう絶対に泣くまいと心に決めた。
両親に家を「出て行け!」と言われた日から、新しい住処を見つけるまで毎日泣いていた。
とても不安だったから。
新しい生活をすることに。
住む場所を決め、家を後にするとき、決して家を振り返らないことにした。
この家を必要としないほど強くなろうと思ったから・・・
それから、1度も家に戻っていない。
いや、それは正確ではない。
1度だけ戻った。
両親が絶対にいない日を見計らって、兄弟のような存在であるペットに会いに行った。
抱きしめて、耳に「さよなら」と別れの挨拶をした。
それから、帰っていない。
もちろん、両親にも・・・
だが、ひょんなことから顔を合わせなければならないときがきた。
大好きだった祖父が亡くなった時。
亡くなる前、ガンに侵されたと聞いて、2度祖父に会いに行った。
一度は祖父の家で。
二度目は、病院で。
私が最後に病院を訪れた日、病気は急変し、立ち会うこともなく亡くなってしまった。
祖父のお葬式に行って、祖父の写真を見ていると、”あっ、亡くなったんだ”という感情しかしなかった。
葬式に出席すれば、もっともっと悲しい気持ちになると思っていたのに、意外だった。
葬式が進行し、祖父が棺に入れられ、蓋をつけられていくと、急に祖父との思い出が体の中を駆け巡った。
上野に行ってカニを買いに行ったこと、デパートの地下でウナギをごちそうになったこと、一緒に実家に帰ったこと、祖父の昔の話など・・・
ひとつひとつの物事が映画のスクリーンのように次々と目の前に現れてきた。
すると、瞳の中からポツリポツリと涙がこぼれ始めた。涙が出るたびに何度もぬぐったが、とどめもなく流れてきた。
止まることなく次々と・・・
私の様子を見るに見かねた叔母が私を抱きしめた。
力強くギュッと。
一人暮らしをして、もうかれこれ3年、少しは強くなったと思ったけど、まだまだなのかな!?
そんなことを叔母にもらすと、「泣きたいときは泣いてもいいんだよ」と言ってくれた。
これまで私は祖父が私と両親の間の中に入って、溝を埋めてくれると信じていた。
口下手の私は両親に対して本心を伝えることができないので、祖父に伝えてもらおうと思っていた。
本当は両親に甘えられない分、祖父に甘えていたのかな!?
そんな企みも失敗に終わってしまった。
お互い素直になれない親子は、今も溝を隔てて生活している。連絡ひとつ取らずに・・・
これでいいのかな!?会えばきっとお互いけなしあうだけ・・・
でも、私は孤独。
孤独を埋めるために、毎日大忙し。
自分の生き方を同意してもらったり、誰かの胸で温めてもらったり、心の温もりが欲しくてわざと失敗したり・・・
私って弱いな。
満面の笑みを浮かべている満月にひとりつぶやいていた。
