この本は主人公と海で出会った先生との物語である。


先生との出会い

主人公が海水浴に行った際に、直感的に関心を持てるような人がそこにはいた。

その人のことをこの物語では先生と呼び、先生の家へと度々通うようになる。

先生は妻がおり、働いてはいないようである。

先生は、妻すら家に残し、よく一人である人の墓参りにいき、決して人を連れて行こうとはしない。

妻いわく、その親友が亡くなって以来、先生の性格は変わってしまった。

主人公の父親が病気であることを伝えると、先生は遺産の相続などについては生前に済ませておくことを強く言われる。

「自分は寂しい人間だ」「恋は罪悪だ」など先生は意味深な言葉を残している。

先生の過去の謎の多さ。時期が来ればこの隠し事を伝えると言う。

大学卒業後、主人公の父親が倒れたため、国へと帰郷する。

両親と私

帰郷した時には、父親は病気で倒れていたものの、一時的に体は良好になっているよう思えた。

父親は、自分が生きているうちに、息子が大学を無事に卒業できたことについて、喜ぶ。

しかし、日に日に、父親は体が衰えている事に気が付き、主人公は就職先を探すために、先生に斡旋を申し出る。

しかし、その返事は分厚い手紙であり、すでに先生はこの世にいないこと、先生の隠していた過去
が書かれていた。

先生と遺書

両親の死後、両親の遺産を叔父が全てを管理した結果、叔父が仕事や愛人へと用いる。叔父を軽蔑する。

先生が叔父から裏切られたことで、人間不信に陥る。

先生の大学時代の話で、当時住む場所がなかった先生は住む宛を探し求めていた。

そこで出会った、軍人の未亡人の妻とそのお嬢さまの元で下宿することになる。

先生は少しづつ、お嬢さんへの恋心を抱くようになる。

先生の親友であったKへの同情で、自分の下宿先で引き取る。

お嬢さんとKの関係が気になりだす、先生は、ある日、Kからお嬢さんへの恋心を直接聞く。

先生は、Kに対して、あらゆる質問をするが、Kの返答は曖昧なものばかりで、要領を得ない。

しかし、ある日、Kの雰囲気の変化に気が付き、K覚悟を持ったことを先生は悟る。

このままでは、Kとお嬢さんが結ばれてしまうため、先生は先回りをして、お嬢さんとの縁談へ漕ぎ着け、結婚することが決定する。

結婚出来ることが決まったものの、先生は内心、「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」と罪の意識が芽生え始める。

Kは結婚することを聞いた、数日後に自殺する。

Kがお嬢さんに恋心を抱いていることを唯一知っている先生が全ての真相を知っており、更に罪の意識の持ち、軽蔑していた叔父と自分が何も変わらないことに気がつく。

結婚後、妻が一緒にKの墓参りにいくと言った際にも、両者の間で深い思い違いがあることに気が付き、墓参りは一人で行くことを決意する。

天皇の死で殉死した大佐と同じように、Kの後を追って自殺する先生。


感想

この話では人間が持つ欲望・エゴイズムを主に描いていた。

恋は盲目という言葉があるが、本当に人間が恋に陥る時に、知性・倫理が保たれるかは、非常に重要なことである。

また、人間は罪の意識からは逃れられないという、ドストエフスキーの罪と罰のようなものと関連したテーマであるとも感じられた。