BLEACH二次創作小説 No.85 『儚きもの』        CP:ギン乱
<詳しくは  →  小説TOP







十番隊副隊長・松本乱菊は、現世での任務が好きだ。
上司の目を盗んでは抜け出し、瀞霊廷にはない新しい洋服を見たり買ったりするのが趣味なのだ。
今日もそうしてお気に入りの洋服屋をまわってきたところだった。
「ふふふ、戦利品、せんりひ~ん♪」
気分良く出鱈目な節回しで歌いながら、紙袋に入った戦利品を振り回していた。
そこへ。

「ご機嫌やなァ、乱菊」
ぴたりと、口も手も足も止まった。
聴き慣れた声、からかう様なその口調。
「ギン! 何でここに!?」
驚いた。
ここは現世だ。
瀞霊廷で偶然会うことはあっても、現世で会うことなどまずない。
まさか・・・。
「私の後をつけてきた、の?」
恐る恐る尋ねてみると、ギンはぶっと噴き出した。
「阿呆か、ボクかてそんなヒマやない。お仕事に決まっとるやん」
とは言いつつも、このタイミングで現世に行ける仕事を偶然見つけ、引き止める副官に残る仕事を丸投げして逃げるように現世に来たことは、もちろん乱菊には内緒である。
(イヅル、怒っとるやろなァ)
怒りに震える副官が目に浮かぶようで、ギンは苦笑した。
――それにしても。
「なっ、何よっ」
「お前、そん服短すぎとちゃう?」
「えええっ!? こっこれくらい現世じゃ普通でしょっ」
「そおかァ? ん~~・・・」
じぃっと見つめられて、乱菊は頬を染めながら慌ててミニスカートの裾を引っ張った。
「見慣れへんからかなァ。お前が着物以外の服着とるんを見るんは初めてやし」
そういえば、現世で会うのは初めてなのだから当たり前のことだった。
そして乱菊もギンの洋装を見るのは初めてだった。
ギンはその細身の長身に良く似合うシンプルでラフめのジャケット姿ではあったが、よくよく見るとそれが品の良い高価なブランドであることがわかる。
(何か意外・・・)
ギンがそれほど服に気を使うタイプでないことを乱菊は良く知っているし、技術開発局が現世任務時に義骸用として支給してくる服はジョークを通り越して嫌がらせとしか思えないセンスの服しかない。
こんな上等な服を支給することなど絶対にない。
「何や、どないしたん?」
今度は逆にじっと見つめられて、ギンが怪訝そうに問う。
「ん・・・アタシもギンの洋服姿見たことなかったから」
「まァ、せやろな」
「その服・・・自分で買った?」
「・・・・・・」
ギンが凍りついた。
乱菊の女の勘が告げる。否、と。
(じゃあ誰に)
「ギン?」
乱菊の爛々と光る眼に射抜かれて、ギンは観念した。
「貰いもんや。ボク、現世の服なん興味あらへんし」
「・・・誰に?」
「・・・・・・」
ギンは無表情で沈黙したが、乱菊には彼が必死で言葉を探しているのが判った。
こんなふうに言葉に詰まるギンを見たのも久しぶりだった。
乱菊はくすりと笑った。
「もう、いいわよ。別に追求したいワケじゃないもの」
あからさまにギンはほっとした様子を見せた。
「乱菊・・・イイオンナやなァ、お前」
「当然でしょ」
ふわりと長い髪をかき上げて、乱菊は色っぽく笑った。
(どうせ無理に訊き出したところで、本当のことなんて絶対言わないくせに)
追求するだけ無駄なのだ。


乱菊はするりとギンの首に腕をまわした。
「ギンによく似合ってる」
「せやろか?」
「うん」
よく見ればジャケットのボタンの糸もポケットのステッチにもギンの髪の色に近い銀糸が使われていたり、ギンの男としては細すぎる手首に巻かれた時計は優美な形でちらりと見えた文字盤にはダイヤが光り、シンプルな装いに華やかさがプラスされていた。
(ギンのこと、よく知ってる人なんだろうなぁ)
そう思うと、胸の奥がずきんと痛んだ。
ぎゅっと抱きつくことで、その姿を視界から外した。


逆にギンは少し戸惑っていた。
乱菊の服はいつもの死覇装とはあまりに違いすぎた。
薄く柔らかい服は、抱き締めればその躯の美しいラインが掌に伝わってくるし、何よりも――。
「お前、やっぱりこれはアカンわ」
「え、何?・・・やっ」
ミニスカートの裾のラインを、ギンが指先で乱菊の裏腿に印した。
「こんだけ短いて・・・ありえへん!」
「ギン!」
「・・・アカンて。そないにそこらの男にサービスせんといて」
甘えるように言われて、ドキッとした。
「なァ乱菊」
「わ、わかったわよ」
こんなことを言われたのは初めてで、ついあっさりと了解してしまった。
何でだろう。
「ギン・・・いつもと違う」
「・・・せやろか。・・・そうやなァ、ここなら誰も見てへんしなァ」
ギンは少しだけ寂しそうに笑った。
そしてゆっくりと顔を近づけてくる。
「ここなら誰に見られても三番隊隊長と十番隊副隊長じゃないから?」
「せやろ? ・・・単なる、男と女や」
唇が重なって、すぐにそれだけじゃ物足りなくて、ふたりの舌が互いを求めて絡み合った。
何も、考えられなかった。
ただこのままずっと、こんな時間が続けばいいと・・・。


いつの間にか唇は離れていた。
「ほな、な」
笑顔で立ち去ろうとするギンを引き止めるべく伸ばした手は空を切った。
いつもならたっぷりとした袖に手が届くのに。


現世は、まるで夢のように儚い。



<Fin>













あとがき


ギン乱記念日おめでとう!クラッカー
昨年も「ギン乱記念日って何ですか?」って訊かれたので、前もって答えておきます。
ギンと乱菊が出逢った日、おめでとう!という意味の記念日です。
ふたりが出会った日をギンが乱菊の誕生日にしたワケですから、この日はもともとは出逢った日なのですよ!w
20巻の「…なら、ボクと会うた日が乱菊の誕生日や」ですよ~~~♪


さて、小説の方ですが、リクエストは2つでした。
ひとつはウル哉さんからいただいた「切なめ→甘めのギン乱」で・・・・あ、間違えた!甘め→切なめと勘違いしてた!すっすみません!
もうひとつはメッセージの方から「現世でみたい」とのリク。
実はこの時点で乱菊誕生日用の日乱の話がなんとなく思いついていたので、おふたつ共ギン乱記念日用になりましたw
で、ミックスした結果こんなカタチにw
ごめんなさい。
現世は別にギン乱リクじゃなかったので、乱菊誕生日用の方で、現世でわいわいがやがやも良かったんですけどねw
現世でのギンの話はずっと前からあっためていたんです。
でも乱菊との絡みで考えたことはなくて、今回リクをいただいたときに、現世でばったり出会ったふたりの姿が浮かんでしまったのでしたw


洋服の話も以前から考えていたもの。
アニメのバウント篇でしたっけ?恋次がひっどい服で一護の学校に来たの。
あれのインパクトが忘れられなくてw
きっと技術開発局は嫌がらせで義骸には変な服を着せて渡すんだろうなぁとw
服装を気にする人はすぐに服を変えるだろうし、気にしない人は恋次のようになるんだろうと設定しましたw
ウチのギンは服装を全然気にしないので、五番隊時代から今に至るまで藍染サマが与えるままですw
乱菊に言えなかったのはそういうワケですね。


藍染サマとギンの現世での話もあるんですけど、まだ書けてないなぁ。
いつか書きたいです。