BLEACH二次創作小説 No.83 『かわいいひと』 CP:ギン乱
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藍染五番隊隊長が副隊長であるギンに新人たちの案内役を任せたのは、これが初めてのことだった。
いつもはもっと下位の席官の仕事だが、直々に
「市丸がやるように」
と言われては拒否しようもない。
どうやら新人の中に、久しぶりに気になる素材がいるようだとギンも気付いた。
「そんで、ここが・・・」
ぴいぴいとざわめくひよこたちに向けて次の場所の説明をしようとした時、よく知る人物に出くわした。
ざわめきがぴたりと止まる。
(乱菊・・・)
ふたりは一瞬視線を絡ませたが、いつものように無言で会釈もなくすれ違う。
乱菊が通り過ぎると、新人たちのざわめきが一層大きくなった。
「すごい・・・綺麗な人だったね」
「それよりもあの胸!・・・ってか、あの人、檜佐木先輩が騒いでた人じゃねぇ?」
「あぁそうかも。なるほど、判らなくもないね」
見覚えのある金髪の子と赤髪の子の声が聞こえた。
(ふうん、新人たちにまで知られとんのか)
ギンはそのふたりに向き直ると、ニヤリと笑って問いかける。
「さっきの子と話してみたい?」
「えっ?」
金髪の子は真っ赤になって「いえ!そんな!・・・」と首をぶんぶん横に振ったが、赤髪の子は勢いよく「ハイ!」と答えた。
「阿散井くん、何で!?」
「情報仕入れて檜佐木先輩に売ってやる」
にかっと笑う赤髪の子と、その言葉に納得したような金髪の子。
「乱菊!」
ギンが声を掛けると、まださほど離れていなかった乱菊がくるりと振り返った。
「何?」
・・・最近、また綺麗になったような気がする。
そんなことを考えているとは全く思わせない表情で、ギンは近付いてきた乱菊に新人たちを示した。
「今年のウチの新人なんやけど、お前に質問があるんやて」
「アンタが新人の面倒をみてんの? うわぁ・・・」
「”うわぁ”てなんや。隊長の命令なんやから、しゃあない」
乱菊は、苦笑するギンの横をすり抜けて、新人たちの前に立った。
わっと十数人の新人たちが乱菊のまわりに群がる。
矢継ぎ早に繰り出される質問に、乱菊はサバサバと、また時には笑いを交えて答えていく。
その様子を少し離れて見ていたギンのもとへ、数人の新人女子隊員が集まってきた。
「市丸副隊長、質問があるんですけど、いいですかぁ?」
「えぇよ」
「不躾で申し訳ないんですけどぉ、・・・お付き合いされてる方とかいらっしゃるんですかぁ?」
想像外の質問に一瞬固まったギンより先に、キャーと甲高い喚声が上がり、その答えを聞くべくさらに数人の女子が集まってきて、熱心にギンを見上げている。
さらに、集まってきてはいないものの、数人の男子隊員の耳もこちらに向いているようだった。
ギンは右手の人差し指を立て、自分の唇にあてた。
「内緒」
期待を裏切ってかわいそうだが、さすがにありのままに答えるわけにはいかない。
「ええー!」
不満の声が上がるが、懲りない子たちは次々にプライベートな質問を投げかけ、ギンはそれをのらりくらりとかわしていた。
その様子を乱菊も横目で見ていた。
(アイツ・・・モテるのよね)
心中穏やかではないものの、乱菊は笑顔で新人たちの問いに答えていた。
しかし、先ほど聞こえてきた不快な声が甦る。
『・・・うわー媚び媚びぃ』
『若い男が好きなんじゃなぁい?』
『ええっ新人のうちから唾つけとくのぉ?』
『だって見るからに淫乱じゃん?』
不快な笑い声。
少し離れた場所から、微かに聞こえるような音量で聞かされる悪意の声。
(またか)
乱菊への女性の反応はきっぱりと二つに分かれる。
好かれるか、嫌われるか。
嫌われると、こうやって陰からの攻撃を受ける。
もう慣れたものだ。
慣れてはいるが・・・ムカつく。
しかもその女子隊員たちが、真っ先にギンのもとで媚を売っているのを見てしまっては・・・・・・。
「ギン」
乱菊は新人たちの輪を抜けると、ギンの腕を取った。
「何や、もう終わりか?」
「ちょっと」
ギンはその場で新人たちに待機するよう命ずると、乱菊に引っ張られて新人たちから見えない場所へと移動した。
「乱菊、どないした・・・・んん?」
問いかけの言葉は、乱菊の唇によって塞がれた。
あまり自分からしてくることがない乱菊からの情熱的な口付けに、ギンも熱意をもって応えた。
「どうした?」
唇が離れてもギンにくっついたまま離れようとしない乱菊に、ギンはゆっくりとその髪を撫でた。
乱菊は顔を上げると、何か言おうとして、躊躇し、結局何も言わずに踵を返した。
「・・・何やの、ホンマに」
ギンは苦笑しながら新人たちのもとへ戻ると、案内を再開した。
次の場所へと移動を始めると、するするっと先ほどの金髪の子がギンの横に並んできた。
「あのっ」
「何や?」
「こ、これを・・・」
その子が差し出したのは懐紙。
「?」
ギンが怪訝な顔を向けると、金髪の子はもじもじと顔を赤くしながら目を伏せた。
「く・・・口紅が・・・」
言われて、受け取った懐紙で口を拭うと淡いピンクの口紅が付いていた。
(ありゃ)
乱菊が言い淀んだのはこれか。
言わなかった理由に気付いて、ギンは噴き出しそうになるのを堪えた。
(可愛いことをしよって)
思わず笑みを漏らしながら、そっと忠告してくれた金髪の子の頭を撫でた。
「おおきに」
「いっいえっ!」
嬉しそうに頬を染めながら後ろへ下がっていった。
後方からぼそぼそと喋る声が聞こえた。
もう声は覚えた。
さっきの金髪の子と仲の良さそうな赤髪の子。
「あれってやっぱデキてるってことだよな」
「ええっ、僕には何とも・・・」
「だって・・・したってことだろ?」
「そうかもしれないけど・・・」
「檜佐木先輩には言えねえなぁ」
「そうだねぇ」
「・・・それにしてもいい女だったなぁ」
胸もすっげーでかかったし!と赤髪の子が鼻の下を伸ばした。
「・・・あれ? そういえば雛森さんは?」
「あ」
まわりをきょろきょろと見回すふたり。
ふたりの斜め後ろで胸に手を当てて俯いていた少女がギロリとふたりを睨んだ。
「阿散井くんも吉良くんもサイテー!」
「えっ雛森さんっ!?」
「うわっ、お前っ・・・・痛ぇ!」
バシンと鈍い音がして、赤髪の子が背中を押さえた。
きっと背中には見事なもみじが咲き誇っていることだろう。
「妬いたん?」
「妬いてない」
その日の夜、ギンは乱菊の私室をこっそりと訪れた。
「ボクよりもお前ん方が囲まれてたやないの」
「アンタのとこには媚びた雌犬ばっかり集まってたじゃない」
「うわァ、口悪・・・」
「どうせ隊でも言い寄られたりしてるんでしょ?」
「そらまァ、無くはないけど」
乱菊がむっと口を尖らす。
昼間の光景を思い出してしまった。
話の流れに見せかけて、べたべたとギンの腕や手に触れていた女の子たち。
(この手が・・・私にだけ触れていればいいのに)
乱菊はギンの手を取ると、そっと自らの頬へと押し当てた。
ひんやりとして大きな掌の感触をゆっくりと味わう。
その様子をじっと見ていたギンはくすりと笑むと、もう片方の手も使って乱菊の両頬を包み込み、そっとピンクの唇を啄ばんだ。
「えぇよ、もっと妬いて」
「・・・バカ」
甘い口付けが、乱菊の心の棘をゆっくりと溶かしていった。
<Fin>
あとがき
ほいっ!
2作目、ギン乱!!
ウル哉さんと、あとメッセージの方でギン乱リクを受けました。
ありがとうございました!
80作目がギン乱だったので、今回はパスしようかなと思ったのですが、熱い思いに負けましたw
でも切ないのはNo.80「笑顔の行方」でたっぷりやったので、今回は甘々!
メッセージの方でいただいたリクに、No.65「噂の真相
」の後あたりがいい、とあったので、そのあたりの時期のお話です。
ギンが副隊長になって少し、くらいですね。
なので、ふたりが若い!甘い!恋愛が直接的だ!!
なんだろう・・・むずむずするよぅwww
金髪の子が出ばっちゃったので、少々長くなりました。
てんこさんのリクが今回はどうしても入れられなかったので、せめてイヅルの登場シーンだけは確保しました。
ごめんなさい!
でも躾3と藍ギンイヅは、いずれ必ず書くので待っててね!
赤髪の子は完全にオチで使ってますw
恋次ファンの方、ごめんなさい。
恋次と修兵は、今後もこの方向ですw
あ、雛森もかなぁw
さてラブラブも書いちゃったし、次のギン乱はどうしたらいいんだろう・・・・。
月末ヤバし。(苦笑)