BLEACH二次創作小説 No.80 『笑顔の行方』        CP:ギン乱
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――――Side A 【乱菊】


笑えない。
笑顔になんてなれるわけがない。


子供の頃素直だった表情は、大人になると仮面を被るようになった。

笑みを見せれば、どんな場も滞りなく済む。

本意ではない笑顔なんか、使えて当たり前。


なのに―――。


ギンを前にすると何故だか顔が強張ってしまう。


笑え。

・・・笑え。


いくら自分に言い聞かせても、頬はぴくりとも動かない。

それどころか苦しくて、苦しくて。

どんなに歪んだ表情をしているのだろう。

もっとずっと綺麗な自分を見せたいのに。

乱菊はもどかしい気持ちを、そっと胸の最奥に押し込めた。





――――Side B 【ギン】


いつも笑みを絶やさないのは、子供の頃からの癖。


まだ人として生きていた頃、色素が欠乏している自分は、まわりの者にとって異端であり忌み嫌われる存在であった。

嫌われないように、怖がられないように。

まだ幼い子供のこと、笑みを見せれば相手の恐怖が薄らぐことを知った。

しかし面白くも無いのに、そうそう笑うこともできない。


だから、目を細めて口角を大きく上げる。


人が見たら笑っていると思う。

そんな表情がいつの間にか地顔になった。


・・・たったひとりの相手を除いて。


乱菊を前にすると、何故だかその表情ができなかった。

いつも綺麗に笑っている彼女が、自分の前では苦しそうにしているからだろうか。


笑っていて、欲しいのに。





――――Side C 【ギンと乱菊】


「なァ乱菊、笑って?」

そっと両手で包み込むようにして、その顔を覗き込んだ。

他人に見せるあの綺麗な笑顔を近くで見たかった。

「・・・笑ってるわよ」

「笑うてへんから言っとんのや」

乱菊は下唇を噛み締めた。

「・・・アンタだって笑ってないじゃない」

「そないなことないやろ」

「笑ってない・・・私の前じゃ、いつも」

真っ直ぐ見つめてくる乱菊の目を直視できなくて、彼女の頬から手を離すと、そのままぎゅうっと抱き締めた。


互いの鼓動だけが、静かな時間を支配する。


「・・・せやかて、笑えへんやろ?」

こんなに苦しくては。

「・・・笑えないわね」

こんなに・・・好きすぎて。



苦しくて苦しくて、息がしたくて、ふたりは唇を合わせた。

甘い吐息が胸の苦しさをやわらげ、すべてを満たしてくれる。


しかし、離れてしまえば


 より一層、胸を焦がすのだ。




恋なんて、楽しくない。



今日もまた、無言で、無表情ですれ違う。

笑顔の行方は、誰も知らない。




<Fin>








あとがき


80本目記念小説で、ギン乱です。


せつない恋心のお話を書きたいなと思って、こんなお話になりました。

どっちも相手が好きすぎて、楽しくなれないなんて、なんて不憫な恋。ほろり。しょぼん

でもそういう恋愛ってありますよね。


ちなみにタイトルは、ドリカムさんとは何の関係もありません。