BLEACH二次創作小説 No.68 『躾』(しつけ) 登場人物:平子真子、市丸ギン、藍染惣右介
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五番隊隊長・平子真子が隊主室の戸を開くと、目の前の廊下には小さな少年がきょとんとした顔で立っていた。
「お前、誰や?」
その少年はちゃんと死覇装を纏っているにもかかわらず、隊主室から出てきた隊長に挨拶をしようともしない。
それどころか、
「アンタこそ、誰や?」
と訊き返したのだった。
思わず真子はぶっと噴き出した。
「えぇ度胸やないか。お前ここがどこだかわかっとんのか?」
「…実は迷うた」
その少年は悪びれずに笑った。
真子も釣られて笑うと、少年の頭にぽんと手を置いた。
「今年の新入隊員か?」
「せや」
「…なんでこないな所におる?」
新入隊員は今頃集合して、それこそ五番隊隊長である真子を待っているはずだ。
「せやから迷うたんや」
「名前は?」
「市丸ギン」
(コレが例の天才少年か……)
真子はジロリとギンを眺めた。
(ホンマにガキやないか)
「で、アンタは?」
ギンはそんな真子の視線を気にもせず、そう呑気に訊いてくる。
「お前ん隊の隊長や」
真子が勿体つけずに答えてやると、さすがにギンは目を丸くした。
しかし小首を傾げてにっこり笑い、
「ほんならよろしゅう」
と堂々と挨拶してみせたのだった。
(大したもんやな)
真央霊術院でたった一年しか学んでいないギンを己の隊に引っ張ってきたのは、いずれ上に立つ器量があるだろうと見込んだからだ。
そしてこの僅かな会話の中で真子は自分の予想が当たっていたことを確信した。
それにしても隊長と知ってなお、堂々と横を歩くこの少年は…。
(それとも…子狐に化かされとるんか)
ギンの吊り上った目を見て、思わず笑いを堪える。
思わず一歩立ち止まって、後姿を見る。
小さな尻にはふさふさの尻尾は付いていないようだ。
「何してん?」
突然立ち止まった真子をいぶかしむ様にギンが振り返った。
「何でもないわ」
真子は再び横を歩き始めたギンのサラサラの銀髪をぐしゃぐしゃと掻き乱してみたが、やはり尖った耳は隠れていないようだった。
集会場へ二人が到着すると、ずらりと新入隊員たちが並び、その前には副隊長である藍染惣右介が立っていた。
藍染の号令で、全員が隊長である真子に頭を下げる。
すると、低くなった藍染の目線にギンの姿が入った。
礼からなおると、藍染はギンを睨み付けた。
「市丸、集合場所はここだと通達があったはずだけど?」
「ここ、ややこしいんやもん。迷ってしもた」
「コイツ、隊主室前におったで」
真子が口を挟む。
「わ! 言うたらアカンて!」
ギンが慌てる。
「…言葉遣いがなってないな」
藍染の眉間に縦皺がよった。
「…市丸は列に入りなさい。それから後で執務室に来るように」
「……」
ギンは無言で頬を膨らませた。
「市丸、返事」
「…はぁい」
ギンは渋々返事をすると、おとなしく新人たちの列に加わった。
列に入るとその小ささが一際目立つ。
「では、平子隊長より訓示を」
仕切りなおした藍染の言葉で、ようやく五番隊入隊式が始まりを迎えた。
五番隊執務室では、隊長と副隊長が書類を見ながら何やら言い合っている。
「コイツはあかんやろ」
「まだ、判りませんよ?」
「せやかていきなり席官に着けるほどの実力は無いわ」
「…では内々に候補としておきます」
「それでえぇ」
新人たちの位決めであった。
通常の新人はまず見習いとして配属されるが、能力のある者は最初から席官の座が用意される。
しかし、今年の五番隊は不作。
このままでは席次に着ける者はいないのではないかと思ったその矢先、執務室の扉が叩かれた。
「入れ」
入室してきたのは、五番隊の三席に名を連ねる者であった。
「お願いがあって参りました」
その男は小柄な真子では見上げなくてはならないほど、体格がいい。
鬼道にも秀で、いずれは他隊の副隊長に推薦しようかと思うほどの男だった。
しかし、こんなふうに突然何かを願い出てくるのは初めてのこと。
「何や」
「市丸を三席にして下さい」
「…何やと?」
真子が驚いた顔で三席を見上げた。
「市丸て、新人の市丸か? いきなり三席て、何言うてんねん、ド阿呆」
「そう言われるとは思っていましたが、実は先日、正式に彼と勝負をして負けました」
「はぁ!? お前がか?」
「そうです。油断もしていませんでしたが、全く手も足も出ませんでした」
「……正式な勝負て、他に見とった奴はおるんか」
「はい。四席以下数名はもちろん、藍染副隊長にも立会いをお願いしました」
真子が藍染に視線を向けた。
「ほんまか、惣右介」
「はい」
藍染は何事も無かったかのように答える。
「何で言わんかった?」
「言葉で説明しても納得いただけないかと思いましたので」
「……」
そのとおりだった。
信頼している三席が、たった一年で統学院を出てきたような子供に、手も足も出ないなどと信じられるはずがない。
しかし。
いきなり三席とは……。
「まだ早い」
そう言わざるをえない。
まだ、その資質をきちんと確認出来てはいない。
直感と一度の事実だけで、三席に任命することは真子には出来なかった。
すると質問された時以外ずっと口を挟まなかった藍染が自ら口を開いた。
「確かに僕も見た限りでは市丸の力の方が勝っていると思います」
「せやかて…」
「でも市丸にはまだまだ足りてないものが多すぎる。僕も三席に任命するのには抵抗があります」
「せやろ? なら…」
「でも……」
藍染が口篭った。
「何や」
「あのようなタイプは、責任を持たせずに下位に置くと、今以上に奔放になってしまうような気もするんです」
真子はギンの振る舞いを思い出した。
確かに下位にいて、その強さが本物ならば、その力を持て余すだろう。
余した力をどこに持っていくのか、それくらいならば自らの目の届く範囲に置いておいた方がいいかもしれない。
「特に礼儀作法等については、今後しっかりと躾けねばなりませんし」
それもまた然り。
ふと、真子は藍染がギンを三席に就けたがっているような気がしてきた。
口では抵抗があるとか言いながら…。
真子の中に、ひとつの考えが浮かんだ。
眠れる虎を起こす餌。
「んー、しゃあない。…市丸を三席に任命する」
「隊長?」
「そん代わりに、惣右介、お前が責任持って市丸を躾けること!」
「はぁ!? 何ですか、それは」
「決定や。お前は今日から市丸の教育係な」
藍染の戸惑いの表情。
(これが芝居やったら、大したもんやな)
真子は自分が大きな賭けに出たことを自覚した。
眠れる虎は起きるか、否か。
さっさと真子が隊務から上がり、藍染もそろそろ引き上げようかとしていた頃になって、ようやくギンが執務室に顔を出した。
「すんません。また迷ってしもた」
悪びれずに答えるギンに、藍染は上から溜め息を落とす。
「初日からこれでは困るね」
「すんません」
藍染はギンの目線に合わせるために、彼の目の前にしゃがみこんだ。
「今朝は何をしに隊主室に行ったんだい?」
「せやから、迷うたて」
「そんな言い訳が通るとでも?」
「……」
藍染の目からはいつもの優しさは消えていた。
ギンの顎を片手で握ると、丸みを帯びた頬に藍染の指が食い込んだ。
「それで?」
「う……知らん場所があるんは落ちつかへんねん。せやから、見て回っとっただけや」
「本当に?」
「ほんまや!」
ギンの声に怯えを感じ取ったので、藍染はようやくギンの顎から手を離した。
「君は今日、入隊式に遅刻したばかりではなく、用もないのに隊主室近辺への踏み入り、隊長や上位の者に対しての礼儀もなっていなかった。これは罰則を与えられるべき事柄だ」
「罰則やて!? いきなり?」
「まだ告知前だが、君には上位の席次が与えられる。それなりの責任を伴うということだ」
「そんなんまだ就いとらへんのやから関係ないやろ!」
「上官への口答えは許されていないよ、市丸」
「…横暴や」
「それが嫌なら正しい行動を取りたまえ」
「……」
下手にこのまま口論を続けると、この融通のきかない副隊長に牢にでもぶち込まれそうだった。
それも面白そうだが、初日から入牢したなどと不本意な噂のネタを提供する気にもなれない。
それでなくとも一年で統学院を卒業したことで、まわり中から嫉みや好奇心などの不愉快な視線を浴びまくっているのに。
ギンは頬を膨らませたままではあるものの、罰を受けれることにした。
「…罰則て何や」
藍染はギンを見ながら少し悩んだ。
反省文など書かせても上手いこと書いて、その実、全く反省しなさそうな子だ。
ふと思いついて、藍染はギンの首に白い陶器のような首輪を嵌めた。
「何やコレッ!?」
ギンが慌てて外そうとするが、外し方が分からない。
「鬼道を封じた。仕置きが終わったら外すから安心しなさい」
「仕置き……」
藍染の腕がギンの腰を横抱きに抱え上げた。
片膝を立てた腿の上にギンをおろす。
ギンは何をされるのか判らずに、首だけを曲げて必死に藍染の方を窺い見る。
いつ解かれたのか、ギンの袴がするりと足元に落ちた。
「なっ!? 何するんや! この変態!!」」
慌ててジタバタと暴れるも、押さえつけられた腰はびくともしない。
着物が捲り上げられ、下帯を着けただけの小さな白い尻が外気にさらされた。
「やめぇ!……ひっ」
バシッと乾いた音が響き、ギンの躯がびくりと震えた。
(え?)
(尻を、叩かれた?)
呆然としているギンを尻目に、藍染は続けざまに打ち据える。
「子供の仕置きとはこういうものだよ」
「痛っ! 痛いて!!」
痛みと羞恥で顔を真っ赤に染め、涙目になったギンが叫ぶ。
しかし藍染の手は止まらない。
無表情のまま、ギンの尻を打擲する。
「やめっ……ご、ごめんなさい。お願いや。……堪忍、して」
ようやく藍染の手が止まった。
「反省したかい?」
「……はい」
しゅんと萎れたギンを降ろすと、藍染は大きく息を吐いて立ち上がった。
ギンは慌てて着物の裾を下げたが、叩かれた尻に着物が触れただけで全身に震えるような痛みが走った。
「……うぅ」
尻は真っ赤に腫れ上がっている。
(くそぉ)
反撃したいが、それは許されないし、今の状態ではままならない。
せめて鬼道が使えさえすれば……。
「これ、外してください」
ギンが首輪を指差す。
藍染はギンの意図に気付いてか、にっこりと笑った。
「駄目だ。やっぱりそれはしばらく着けておいてもらうことにするよ」
「何でや!? なんでアンタがそないなこと勝手に決めんのや!」
「それは……」
藍染が口篭ったのを見て、ギンはほくそ笑んだ。
しかし、それも全て藍染の手の内だった。
「それは僕が君の教育係に任命されたからだよ、市丸君」
「……は?」
藍染の笑みに、ギンはぽかんと口をあけて固まった。
「僕の躾は厳しいから、覚悟するように」
藍染はギンの頭をポンポンと軽く叩くと、「じゃあ明日」と言って、そのまま執務室を出て行ってしまった。
「何…やて?」
(あの男が、自分の、教育係?)
真っ赤な尻はじんじん痛み、その晩ギンは眠ることさえ出来なかった。
それは実に効果的な仕置きであったのだ。
肉体の痛みを伴う矜持の粉砕。
ギンは悔し涙を滲ませながら、褥に触れるたびに跳び上がりそうな痛みに耐えた。
翌朝、五番隊では新しい席次の発表があった。
昇進したものばかりの中、新人でただひとり席次に、それも三席に就いたギンに今まで以上の視線が集まった。
しかし、当の本人は寝不足と未だ続く尻の痛みでそれどころではなかった。
「市丸、破格の割り当てやで。しっかりと働けや」
真子はパシンとギンの尻を叩いた。
もちろん激励の意だが、ギンはぶるぶると震えてあぶら汗を流すと必死に悲鳴を噛み殺して、ようやく「はい」と小さく返事をした。
真子は怪訝そうにギンから藍染へと視線を向けた。
藍染は何事も無かったようにいつもの微笑を浮かべてはいるが、何があったかを大体察知した真子は、ギンの頭をぐしゃぐしゃっと掻き回した。
「ま、教育係にしっかりと躾けてもらうんやな」
ギンにだけ聞こえるような小さな声で告げる。
ギンは涙目にならながらも、隊長・副隊長を睨みつけた。
(お前らなんかに負けへん!)
心の中の決意表明は、あっさりと伝わってしまい、隊長が噴き出し、それによってこらえ切れなくなった副隊長も笑いが止まらなくなってしまった。
他の隊員がきょとんとする中、笑い声だけが五番隊舎に響き続けた。
<Fin>
あとがき
ありゃ、思ったよりも長くなっちゃいました。(汗)
書き始めてから書き終わるまで1ヶ月以上かかるってなんなんだか。
おかげで展開も変わっちゃいましたw
当初考えていた展開は、尻叩きの後、ちゃんとギンの看病もする藍染サマ、という感じだったんですが。
エロくなるのでヤメました。(爆)
やっぱり私にはショタは無理っすw
時系列的には「Es werde~」の金の章
の続きですね。
真子とギンの出会い。
藍染サマの教育係就任。
ギン三席就任。
全部、妄想です。(笑)
過去篇の妄想は楽しいですね♪
過去篇で書きたいモノの中に、真子と喜助の会話があるんですけど、未だ達成できていなくて残念です。
機会があるといいんですけど。