BLEACH二次創作小説 No.67 『主はきませり』(しゅはきませり)
登場人物:ウルキオラ・シファー、市丸ギン、藍染惣右介
<詳しくは → 小説TOP >
月が輝く天蓋の上の地。
古くより存在する破面たちには懐かしいとさえ思われる風景は、第4十刃ウルキオラ・シファーにとってそれほど見慣れたものではない。
音も無く、生き物の気配も薄いこの場所へ来たのは、その必要があったからだ。
虚夜宮で禁じられていることのひとつに、天蓋の下での第4以上の十刃の刀剣解放がある。
以前は第3以上とされていたが、ウルキオラが第4の地位に就いてからは彼も含まれることになった。
「鎖せ、黒翼大魔」
その言葉が発されると、闇の雨が降り、ウルキオラの背に大きな黒い翼が現れる。
翼と大きく突き出た仮面以外にそれほどの変化はないが、纏う力の差は歴然としている。
「黒虚閃」
示した指の先の地が轟音と共に大きく吹き飛んだ。
その威力を自らの目で確認すると、ウルキオラは大きく息を吸い込んだ。
意識を内へと集中させると、仮面紋が濃く太くなり、咽喉から胸へと移り肥大した孔からもそれが流れ出す。
腕と足は鋭く尖った獣のようになり、長い尾が地を打った。
仮面は角へと成り果て、纏う気は先ほどのものとは比べようも無い。
刀剣解放 第二階層。
この姿を試してみたかった。
二段階目の解放ができることに気付いたのはつい先日。
どれほど力が違うのか、試してみてから藍染様に奏上しようと思っていた。
先程のように指先で一点を示し、黒虚閃を放とうとする。
しかし、それは叶わなかった。
うまく気配を隠して天蓋の上へと、地の外れへと赴いたはずだったが、彼の尋常ではない気配を察した者が近付いてきているようだ。
「チッ」
ウルキオラは舌打ちすると、解放状態を解除する。
主である藍染にすら報告していないことを、他の者に知らせるつもりはなかった。
小者ならば消してしまっても良いが、ここまで嗅ぎつけてくる者が小者なわけはない。
何事も無かったかのように振舞うつもりであったが、誤算がひとつあった。
解放状態を解除したときに、衣服の大部分が消失していた。
通常の解放では起こらないことだが、二段階目の解放はその身をも損なうものらしい。
上衣は完全に消失し、袴も大きく裂けている。
どうしたものかと思案している間に、邪魔者が到着してしまった。
白く、細い影がゆらりと現れた。
「4番、ひとりなん?」
市丸ギン。
人を番号で呼ぶこの死神は、藍染の副官ではあるものの虚夜宮で仕事をしている姿を見たことがない。
しかし、異変を感じればこうやって真っ先に駆けつけてくるのか。
ウルキオラは表情には出さないものの、内心驚愕していた。
虚夜宮からこの地まではかなりの距離がある。
ウルキオラの気配に気付いたことも、そしてここに到達するまでの時間も、有り得ない能力である。
得体の知れない死神。
ウルキオラの彼に対する評価は、常にそう上書きされる。
ギンはすたすたとウルキオラに歩み寄ると、腰を曲げて顔を近付け目線の高さを合わせる。
そうして、無言のウルキオラに重ねて問いかけた。
「ひとりか訊いとるんや。答え」
「……そうです」
「ほな、これはどういうことや」
ギンの冷たい指先がウルキオラの咽喉元の孔の下からつつと下り、裸の胸を撫ぜた。
「説明してみぃ」
「……」
ウルキオラは未だ上手い言い訳を見つけられずにいた。
唇を横一文字に引き結んだままのウルキオラを眺め、ギンはニヤリと嗤った。
「キミは、ボクの前やと無口になるなァ」
空いた手でウルキオラの顎を強く掴み、力ずくで上向かせる。
「さっきのは何や? 言うてみぃ」
「……何も」
カチリと小さな音がした、そう感じた瞬間にウルキオラの咽喉に短い斬魄刀の先端が突きつけられていた。
チクリと感じるその感触に、息を呑んだ。
胸を撫ぜていた筈のギンの手が斬魄刀を握り、引き抜いて、咽喉を突き、皮膚に僅か触れる位置で止めたのだ。
鯉口を切る音が伝わるだけの、その短い間に。
上向かされているせいで、それを目にすることはなかった。
しかし、目を向けていたとして、それが見えたかどうか。
「藍染さんに逆らう気ぃか?……もう一遍だけ訊いたるわ。さっきのは…」
「藍染様ならともかく、貴様に言うつもりは……」
「神鎗」
ウルキオラの背後で轟音が響いた。
随分と離れたところにある巨大な何かが壊れ落ちる音が響き続ける。
ギンが拳ひとつ分斬魄刀を引き戻し、その名で解放した瞬間、長く伸びた刃がウルキオラを突き抜け、遠くの何かを破壊したのだった。
ウルキオラの額から、冷たい汗が噴き出した。躯がガタガタと震える。
ギンはその様子を満足げに見やると斬魄刀を手元に戻した。
斬魄刀はまた短い姿に戻っている。
ウルキオラは、がくりとその場に両膝をついた。
震える手で恐る恐る咽喉に触れてみる。
そこには虚になったときから存在する孔しか存在しなかった。
ほっと安堵の息が漏れた瞬間、頭上から強い衝撃を受けた。
「っ!?」
ギンの足がウルキオラの頭を踏みつけ、なおも地へと押し付けている。
ウルキオラは顔を砂にめり込ませながらも抵抗を試みるが、その足はびくともしない。
「さァて」
ギンは背後を振り返りながら言う。
「どないしはる、藍染さん?」
「!」
顔を向けることは叶わないが、必死にそちらに意識を向けても藍染の気配をウルキオラが感じることはできなかった。
(そこに、居られるのか?)
「ギン」
美しい低音の響きが静かな虚圏の空気を震わせた。
「あまり私の破面を苛めないで欲しいね」
「せやかてコイツ……」
「ギン」
「……」
「私がいいと言っている」
「……はい」
ギンは足下のウルキオラをひと睨みすると、その頭を蹴るように足をどかした。
ようやく自由になったウルキオラだったが、隠し事をしている後ろめたさからか、藍染を前にその頭を上げることができなかった。
そのまま這い蹲るように姿勢を正し、平伏することしかできない。
「顔を上げなさい」
今の顔を見られたくない。
しかし、その言葉に逆らうことはできない。
ウルキオラは砂にまみれたままの顔をゆっくりと上げた。
堂々とした藍染の横に、ニヤニヤと嗤うギンの姿がある。
藍染に何やら耳打ちしては、くすくすと笑っている。
悔しさに内腑の奥が捩れそうだった。
藍染はギンに何やら一言かけると、ウルキオラに歩み寄り、彼の腕を引いて立たせてやった。
そうして優しく顔や躯についた砂を掃ってやる。
「藍染様っ」
恐縮したウルキオラは慌てて身を引こうとしたが、その頭にぽんと大きな手が乗せられた。
「いいんだよ。ギンの言ったことは気にしなくていい」
「あのっ」
言わなくてはならない。
いや、自分から藍染に伝えたかった。
しかし、藍染の手がウルキオラの咽喉を優しく包み、その言葉を封じた。
「いい、と言ったはずだ。……大丈夫。君を信じている」
優しく、蕩けそうな甘い言葉に、ウルキオラは陶然となった。
「ありがとう、ございます」
藍染は踵を返すと、ギンを連れ立ってそのまま立ち去ってしまった。
ウルキオラはその姿を見えなくなるまで見送っていた。
彼の、主の姿を。
「まァた人のこと悪モンにして」
ギンが拗ねたように文句を言う。
「ふふ。お前はそういう役が気に入ってるんだろう?」
「まぁ、せやけど」
二人の笑みを見ているものは誰もいない。
白く光る、虚圏の月以外は。
<Fin>
あとがき
久々にFinって書きました。orz
書いても書いても完結しない文章ばかりで、どうしようかと思いましたよ。(-_-;)
書き上げられて良かったです。
で、なんでウルキオラ?w
自分でも良くわかんないのですが、なんか急に書きたくなった、のか?
いや違うな。
Sなギンを書こうとしたら、相手がウルキオラになっただけかも。
なんかウルキオラが不憫w
最近頭の中がBL寄りなので、BLじゃない話を書こうと思って書きました。
恋愛モノも排除して。
そしたらこんな感じです。
たまにはこんなでもいいですか?w