BLEACH二次創作小説 No.65 『噂の真相』(うわさのしんそう) CP:ギン乱(市丸ギン×松本乱菊)
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「乱菊さん、この後飲みに行きましょう」
「松本、この後空いてるか?」
松本乱菊はここのところ、面倒なことになっていた。
先日の瀞霊廷通信に美人死神として紹介されてから、男性隊員からの誘いが半端なく増えてしまったのだ。
まだまだ下っ端だからと頑張って笑顔で断り続けていたが、それももう限界に近い。
特にこの、さっきからずっと横でぐだぐだ喋り続け、人のことを「乱菊ちゃん」呼ばわりする男に本当にムカついているのだが、隊の先輩とあっては無下に断ることも出来ない。
なるべく波風立てないように、気を使って断っているのに、全く気付いてくれない。
「だから乱菊ちゃんはもっと素直になった方がいいと思うなぁ」
(ちゃん付けするな! 何が思うなぁ、だ!! さっきから素直に断ってるつうの!!!)
心の中で怒鳴りまくり、寒い言葉に鳥肌を立てっぱなしだが、無神経な男には全く通じはしない。
(もう疲れた…)
笑顔を消して、少し不機嫌気味に追い返すと、ようやくその男は渋々ながらではあったものの何とか帰ってくれた。
乱菊は深い溜め息を吐いた。
(明日にはまた、何か言われてるんだろうなぁ)
噂を流す人間というのは、なぜ自分の作り上げた妄想をさも事実のように語るのだろう。
乱菊は護廷入りして一年で、既に何十人もの男性死神を食い散らかし、挙句の果てには玉の輿狙いで貴族やら隊長格を品定めしてるらしいという風評がついた。
くだらないそんな噂を鵜呑みにしてる奴等にも腹が立つ。
「乱菊」
背後から声がかかって思わず、またかと溜め息を吐く。
(しかも今度は呼び捨てだとぉ!?)
笑顔を作るのも忘れて振り返ると、ニヤリと笑う見慣れた市丸ギンの顔があった。
「モテモテやないの」
「ギン…」
久しぶりに見る顔だった。
どうしたらいいのか判らずに、つい俯いてしまう。
ギンは五番隊の副隊長になっていた。
乱菊は、一度だけ彼に会いに行った。
そして、後悔はしていないが、その逢瀬は互いの心に痛みを残した。
ぎこちなくなる乱菊の横へ、何事もなかったような笑顔のギンがするりと座した。
「瀞霊廷通信、見たで。美人死神やて?」
「…笑っちゃうわよね」
ギンが普通に話しかけてくれたので、乱菊もなんとか普通に返すことが出来た。
「ホンマやなァ。何を今更っちゅう…」
「そうじゃないでしょ」
「乱菊が美人なんは今に始まったことやないやろ。せやから今更で合うとる」
「そ…かな?」
「そうやで」
真正面に褒められて、乱菊は少しだけ赤くなった。
「それにしても虫が湧いて大変やなァ」
ギンがあたりを見回すと、明らかにギンが去るのを待ち、遠巻きにうろうろしている男性死神が片手の指くらいはいる。
視界に入らない者も含めれば、両手の指くらいはいるだろう。
乱菊がそれを見て、今日何度目かの溜め息を吐いた。
しかし、ふと気付いた。
いつもならこんなふうに待たず、重なるように声がかかるのに、今日は何故待ってるのだろう?
乱菊はふと隣を見た。
ギンの腕に巻かれた副官章……。
さすがに副隊長の邪魔は出来ないというところか。
馬酔木が描かれた副官章を摘んでみる。
(楽だなぁ)
「…ずっと横にいてくれればいいのに」
思わず声に出てしまった。
聞こえているはずのギンは何も言わず、乱菊の心中までも読んでか、ぽんぽんと乱菊の頭を優しく撫でた。
まわりで様子を伺っている男たちがハッと息を飲む気配が伝わってくる。
ギンは苦笑しながら口を開いた。
「これじゃ気ぃ休まらへんな」
「でしょ?」
「乱菊は、好きな男はおらんの?」
「なっ!?」
突然、爆弾が投下されたかのような問いに乱菊が絶句する。
(そんなの! …そんなの昔からアンタだけに決まってんじゃない!!)
言いたい。
けど、言えない。
「……知ってるくせに」
「そぉか? いつ心変わりされてもおかしないからなァ」
「変わんないわよ。 そんなすぐ変えられるくらいなら、今ここにいるわけないでしょ」
死神になったのは、ギンを追ってきたからだ。
ギンが、乱菊の頬に手を伸ばした。
「…ほんなら、もうしばらくはそのままでおってくれる?」
「何? え?」
戸惑った乱菊の唇を、ギンの唇が塞いだ。
(嘘)
思わず目を見開いた乱菊だったが、優しく啄ばまれているうちに自然と目蓋が落ちた。
何でギンが突然こんなことをしたのかも、人前だということも、全てどうでもよくなった。
甘い、甘い口付けに、ただ夢中になった。
気がつけば、陶然となりながらギンの腕の中にいた。
こんなにギンの胸は広かったのか。
ギンのひんやりとした躯に高潮した頬の熱が奪われて心地よかった。
「何、なの…? 見られてるって分かってるのに」
理由が知りたかった。
何故突然こんなことをしたのか。
ギンは乱菊の耳に口を寄せる。
「虫除けや」
「虫……」
ギンはニタリと哂った。
「五番隊副隊長の女には、そこらの男は手ぇ出せへんやろ」
「……ギンは、…それでいいの?」
(私で、いいの?)
置き去りにされた過去が、乱菊の心の傷になっていた。
ギンは乱菊を選ばないのだと、ずっと思っていた。
「えぇよ」
柔らかな声が、乱菊の耳を擽った。
溢れてくる涙を大きな瞳に溜め、乱菊はギンにぎゅっと抱きついた。
ギンは乱菊の髪を撫でながら、胸の内で言葉をこぼす。
(知られたない人には、もう知られてもうたしなァ。)
隠し通すことができないなら、さらけ出してしまえばいい。
特別なことではなく、何でもないことにしなければならない。
「乱菊」
「…何?」
「キスして」
言霊に支配され、乱菊は吸い寄せられるようにギンに口付けた。
その姿を見て、まわりで呆然としていた傍観者たちがひとり、ふたりと立ち去っていく。
乱菊からの口付けを見てしまっては、もはやどんな曲解も通らない。
この二人はデキている、そう結論付けられた。
噂というものの怖さを知っている乱菊の不安をよそに、二人の噂は虚構が混じることなく静かに流れた。
松本乱菊は、五番隊副隊長市丸ギンと付き合っている、らしい。
この「らしい」というのがポイントだった。
というのも、この噂が流れていても、乱菊とギンがそれらしい姿を見せるどころか、ふたりでいる姿さえも見ることができなかったからだ。
複数の目撃者がいたのでガセとはならなかったが、その後、噂は過熱することもなく、シンプルだっただけに事実として認識されて消えた。
乱菊に声を掛けてくる男はほとんどいなくなった。
時々、噂に疎い者や、信じようとない者が現れたが、周りの者に耳打ちされては焦って立ち去っていく。
噂の張本人たちはというと。
乱菊は昼休憩に自室に戻ることが増えた。
そこに、時々こっそりと入り込んでは昼寝をしているギンの姿があるからだ。
ふたりは短い逢瀬を大事に楽しんだ。
誰の目にも留まることのない、ふたりだけの秘密の逢瀬。
<Fin>
あとがき
ううーん。
なんかうまく纏まんなかった。orz
この話は、
乱菊って絶対モテるよね?
↓
でも今は修兵と射場さんくらいしか表立っていないなぁ。
↓
あ、副隊長だからか。
↓
じゃあ、新人の頃とか大変だったんだろうなぁ。
↓
…そのときギンはどうしたんだろう?w
という思考から生まれましたw
まだ若い、少年少女の域を脱したばかりのギンと乱菊の話です。
おかげでストレートに甘すぎる二人にビックリしたw
ウチの小説の流れに組み込まれているので、時期的には「氷の劣情」「闇の劣情」の2~3ヵ月後くらいです。
藍染サマに乱菊のことを知られたくなくて葛藤しているギンが、隠すことを諦めるのに少々時間がかかったようですねw
その間に乱菊の方に虫がたかり始めてしまった、と。
それも藍染サマの仕業だったら、ちょっと怖いな、とか今思いましたw
「劣情」がイタい話だったので、幸せな話にしてあげたかった。
そんなお話でした。