BLEACH二次創作小説 No.62 『大事だから』 CP:日乱
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尸魂界はまだ混乱を抜けきっていない。
自らの躯の傷は癒えたが、あちこちに燻っている火種が今にも燃え上がりそうなこの不穏な気配に、気の休まる暇もない。
見せかけだけの平和に、なんの意味があるというのだ。
心に負った傷は、癒えようはずもないのに。
十番隊舎の執務室で日番谷冬獅郎は重い溜め息を吐いた。
(藍染の野郎・・・)
すっかり騙されていた自分が情けなくて、悔しくて。
冬獅郎はぎりっと奥歯を噛み締めた。
眉間の縦皺は、あれから消えたことがない。
一太刀たりとも届かずに切り捨てられ、幼馴染みを救うことすら・・・。
(そういえば、今日はまだ雛森を見舞ってなかったな)
信じていたものに、敬愛していたものに、裏切られ殺されかけた彼女の痛みは如何ほどのものか。
雛森桃は意識は取り戻したものの、未だ正気とは言い難い。
虚ろに目を開け、「嘘・・・嘘・・・」と繰り返し力無く呟く彼女は痛々しく。
そんな姿を見るのは正直辛い。
しかし見舞ってやりたい気持ちがあった。
冬獅郎は鎮痛な面持ちで席を立った。
執務室の扉を開けようとした瞬間、それは先に開かれた。
「あ、隊長。・・・お出掛けですか?」
副官の松本乱菊だった。
乱菊は、いつものように笑う。
しかし冬獅郎は、彼女の笑みが形だけでしかないことに気付いている。
間違いなく彼女も心に傷を負ったのだ。
彼女の幼馴染みの所業によって。
(馬鹿な奴)
こんな時くらい、辛い顔をすればいいのに。
頼られない自分の悔しさを、そんな言葉で誤魔化した。
「・・・雛森の、お見舞いですか?」
反射的に顔を上げた。
やましい気持ちがあったわけではない。
でも、こんな乱菊の前で雛森のところへ行くなどと・・・。
「行ってあげてください。あの子まだ様子が・・・」
乱菊は笑顔で答える。
(あ・・・)
今、
彼女の心が空っぽになった。
「・・・馬鹿ヤロッ!」
こんなときほど目線の違いが悔しいことはない。
冬獅郎は短く怒鳴ると乱菊の腕を引っ張り、その場に膝をつかせた。
おでこが触れ合いそうなほど顔を近付け、その力のない瞳を睨み付ける。
「そんなカオしてるお前を放っておけるワケねぇだろう!」
「だって隊長・・・隊長にとって雛森は大事な存在じゃないですか・・・あの子、あんなに傷ついて・・・なのに・・・なのに」
行かないでなんて、言えません。
その言葉は声にはならなかった。
苦しいほどに乱菊を抱きしめた冬獅郎の腕によって。
「お前・・・勘違いしてんなよ! 何度も言ってんじゃねぇか。俺が一番大事なのは、お前だ」
「だって雛森は・・・」
「あいつにはガキの頃世話になったけど、別に・・・家族みたいなもんだ。好きとか、そういうんじゃねぇ」
「だって・・・」
冬獅郎は乱菊の顔をじっと見つめた。
「俺は好きな女に、そんなカオさせたくねぇよ」
「隊長・・・」
「笑えよ」
そう言って冬獅郎は乱菊に顔を寄せ、ゆっくりと口付けた。
唇をそっと合わせたとき、乱菊の目から一筋の涙が流れるのを見た。
それで火がついた。
噛み付くように、貪るように。毀れる吐息さえも逃さぬように。
「お前は俺のもんだ。覚えとけよ」
「・・・はい、隊長」
腕の中の彼女は、とても温かかった。
俺は、ずるいか?
大事な存在を失ったお前の悲しみにつけこんでいるのか。
それでもいい。
それでもいいんだ。
お前が俺だけを見てくれるなら。
腕の中で乱菊が身じろいだ。
「隊長」
「なんだ」
「・・・お見舞いに、いかないと」
「だから!」
「それでも・・・いかなきゃダメですよ」
怒鳴ろうとして。
でも、乱菊の表情がさっきとは違うことに気付いた。
(行かなきゃ行かないで、また気にすんのか・・・全く)
「・・・いつもは我が儘なくせに」
「はい?」
「早くいつもの我が儘なお前に戻れよ」
照れ隠しに、乱菊の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
そして手を引いて彼女を立たせる。
「ほら、行くぞ」
「え?」
「見舞い、お前も一緒に行けばいいだろ」
「あ・・・」
乱菊が微笑んだ。
その顔を見て、ようやく冬獅郎の眉間から、縦皺が姿を消した。
二人は連れ立って執務室を後にした。
無人の部屋は、窓から差し込む夕焼けに朱く染まった。
<Fin>
あとがき
冬獅郎誕生日記念小説です。
日乱・ギンヒツ・藍日でアンケートとって、日乱とギンヒツが同票だったので迷ったんですが。
先に票を獲得した日乱に致しました。
ギンヒツ支持の方、ごめんね。
誕生日記念小説。
たまたま知った恋次・納得いかない出来になってしまったギン・頑張った乱菊の3人に続いて4作目となった冬獅郎の誕生日記念小説だったんですが。
前3作はたまたま「誕生日」をお題に書いてたんですが、別にそんな縛りはなくてw
今回は原作の展開に沿わせた話になりました。
尸魂界篇が終わったトコですね。
この話はずっと書きたくて頭の中でもやもやしていたモノでした。
ようやく形になって嬉しいです。
個人的には、シロちゃんの「笑えよ」の一言にギャー!!!ですw
眩暈っちゃう。
自分で書いておいてwww
シロちゃんの殺し文句的なセリフが大好きです!(爆)
ということで、ハッピーバースデイ!
シロちゃん♪![]()
もっともっと、いい男になれよ!w