BLEACH二次創作小説 No.58 『柿』          登場人物:松本乱菊、吉良イヅル

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秋晴れの空の下、たわわな橙色がそこここにぶら下がっている。
「もうそんな季節かぁ」
呟く声が寂しく聞こえるのは、秋という季節が持つもの悲しさなのだろうか。
乱菊は木の幹に触れた。
「今年の柿、どうするのよ。もう」
忍び込み慣れた三番隊隊舎の裏庭。
数本の柿の木は今年も順調な実りをみせている。
しかし、この木を植えた者はもうここにはいない。
乱菊は橙色の大きな実をひとつもぎった。
鼻を近付けて香りを確かめる。
いつもの、柿の匂い。
大きく息を吐くと、木の幹に背をもたせ掛けるように、ずるずるとその場に座り込んだ。
「・・・・・・」
言葉は出てこなかった。
柿の実を握り締めたまま、空を見上げた。
橙色の大きな雫が、今にも降ってきそうだった。


「松本さん・・・」
おずおずと声がかかった。
乱菊は声の方を見ることもなく、答えた。
「この柿、どうすんの?吉良」
イヅルは俯いた。
「どう・・・しましょうね。どうしたらいいのか、僕にはわからなくて」
「これ、干し柿用の渋柿なんでしょ?そのままじゃ食べれないし」
乱菊は口の端だけで笑った。
「ほーんと面倒だけ置いてっちゃうんだから」
「本当ですね」
イヅルも力なく笑った。
そして柿の実をひとつもぎると、乱菊と木の幹を挟んで背中合わせになるように座り込んだ。
「あぁ今年もいい出来だなぁ」
艶々と輝く柿の実を眺めた。
「どうするのよ」
「・・・干し柿にするしかないでしょうね。このままじゃ食べれないんだし」
「・・・・・・なんのために?」
「何の・・・」
イヅルは空を仰いだ。
まるでそこに誰かの面影を見出そうとしているかのように。


でも、いない。


ふたりの横を通り過ぎた風が、熱を奪っていく。
「馬鹿だよね」
「馬鹿ですね」
二人は同時に苦笑しながら立ち上がった。
乱菊はイヅルに柿の実を渡した。
「作るんでしょ?」
「はい」
「美味しく作ってね」
「松本さんも手伝ってくださいよ」
「イヤよ。面倒くさい」
「ずるいなぁ。いつもお裾分けしてるじゃないですか」
「ふふ。楽しみにしてるからね」
乱菊は手を振り、去っていく。
「ずるい人ばっかりだ」
イヅルは両手の柿の実を眺めた。
突然、がぶりと齧りついた。
「うわっ!・・・本当に渋い・・・」
イヅルは顔を顰めた。
「だから干し柿なんか嫌いだって・・・」
空を仰いだのは、目に溜まった涙をこぼさないようにではない。
ただ、青い空が、そこにあるから。


「言ったじゃないですか・・・市丸隊長・・・」



<Fin>








あとがき


秋っぽい話を書こうと思って・・・いるうちに12月に入っちゃいましたw
我が家にちょうど柿の実がいっぱいあるのも理由のひとつかな。
あ、ウチのは渋柿じゃなくて、あまーい柿です♪


なんとなく柿の木に背を預けて座っている乱菊の姿が浮かびました。
手には柿の実がひとつ。
反対側に同じ姿のイヅルが思い浮かんで、こんな話ができました。
物悲しいのは、秋だからですよ。
きっと・・・。