BLEACH二次創作小説 No.57 『誕生日 <改訂版>』
CP:ギン乱・藍ギン 登場人物:ギン、藍染、雛森、イヅル、乱菊 注・BLあります
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扉がノックされた。
しかし返事を待たずに扉は開き、細身の躯がするりと部屋の中へ入り込んできた。
「お呼びですかァ?藍染隊長」
三番隊隊長・市丸ギンである。
ここは五番隊の執務室。
正面の机には隊長である藍染惣右介、横の机には副隊長・雛森桃が座している。
「あぁ市丸隊長、ご足労をかけたね。・・・雛森君、すまないがお茶を頼むよ」
「はい、藍染隊長」
桃が出て行くと、ギンはふと副官の机に触れた。
昔、自分が使っていた机だ。
「何や、懐かしいもんやなァ」
「君は隊主室には来ても、この執務室には滅多に来ないからね」
皮肉気に微笑む藍染。
「用なん、ないし。で、わざわざボクをこんなとこへ呼びつけたんは何です?」
「これを渡そうと思ってね」
藍染は取り出したものを机の上に置いた。
それは小さな、手のひらほどの包みだった。
「何です?」
「開けてみてごらん」
ギンは素直に包みを開いた。
「これ・・・干し柿やないですか。何で?」
「この時期干し柿なんてなかなかないだろう?貴重品なんだよ。大事に食べたまえ」
「や、そういうことやなくて、何でこんなんボクにくれるんです?」
「今日は君の誕生日だろう?」
「せやった?」
「忘れていたのか・・・どうせ夜にはまた幼馴染みとやらに捕まって僕のところには顔も出さないんだろうから、こうして呼んだんだよ」
「にしても、干し柿て」
「君には着物や装飾品を贈っても喜んでもらえないからね。これでも考えたんだが」
「確かに、今まで貰ったもんの中では一番嬉しいですけど」
「なら良かった。・・・お礼はキスでいいよ」
ニヤリと笑う藍染。
日頃言わない様なことを言われ、一瞬ぽかんとしたギンは、目を伏せて口の端を大きく歪ませた。
「ほんなら、雛森ちゃんが戻ってきたら、そうしましょか?」
途端に藍染が憮然とした表情になった。
ギンは心底面白そうに笑う。
「嘘ですよォ、嘘。そんな顔せんといて下さい」
そして、まだぶすっとしたままの藍染に軽く口付けた。
「はい、おおきに」
藍染はギンの手に自分の手を重ねた。
「ギン、あの女との約束なんか断って、今晩は僕のところに来ないか?」
「それは・・・約束できまへんなァ」
ギンが困ったような顔をしているとき、桃が戻ってくる気配があった。
桃が部屋に入る頃には、二人は既に適当な距離を取っていた。
「ほな、これはありがたくいただいて行きます」
「もう行くのかい?お茶くらい飲んでいけばいいだろう」
藍染の言葉を無視すると、ギンは桃に向き直った。
「雛森ちゃんゴメンなァ。急ぎの仕事まわされてもうたんや。お茶はまた今度な」
「はぁ」
ギンは包みを手にそのまま部屋を出て行く。
「すまないね、雛森君」
「いえ」
「全く・・・思うようにいかない男だ」
藍染はため息をついた。
桃はそんな藍染に茶を差し出すと、客用の茶碗を片付け始めた。
◇◆◇
三番隊執務室では、戻ってきたギンが書類に向かいつつも別なことに頭を悩ませていた。
「約束を断れ言われても、約束なん、無いしなァ」
ギンは苦笑いしながら、ひとりごちる。
「そもそも十番隊が今日どこにおるかっちゅう話や」
独り言のつもりだったが、横にいた耳聡いイヅルに聴かれてしまった。
「十番隊ですか?確か今日は遠征のはずですが」
「あァ、ならえぇんや。ありがとな、イヅル」
「いえ」
(乱菊が遠征行っとんのやったら、藍染さんのお誘い断らんでも良かったかなァ・・・いや、あかん、あの男をつけ上がらせるだけやな)
ギンがぼうっと考え事をしていると、イヅルがおずおずと寄ってきた。
「あの、隊長」
「何や」
「あの・・・今日良かったら飲みに行きませんか?」
(イヅルもおったか・・・)
この優秀な副官は、隊長の誕生日もしっかり把握しているのだろう。
「せやなァ・・・考えとくわ」
ギンは笑顔で答えると、それ以上追及されないよう目線をイヅルから書類に移した。
しばし黙して真面目に書類を片付ける。
そして立ち上がると、何事もないように部屋を出て行こうとする。
「隊長!?」
「ちょお、お散歩してくるわ」
「なっダメですよ。仕事が・・・」
「そこの書類は全部終わったで」
「え?この量を全部?まさか・・・って隊長!!」
思わず書類に気を取られた僅かな隙に、ギンは姿を消していた。
「散歩って、結局帰ってこないんだから・・・あーまた松本さんに怒られる」
イヅルは頭を抱えた。
◇◆◇
逃げ出したギンはふらふらとその辺を歩き回っていた。
人にちょっかいを掛けるのは大好きだが、逆に人から関心を持たれるのは面倒でしかなかった。
僅かな相手を除いては。
「ギン!見つけたっ」
突然、後ろから羽交い絞められるように飛びつかれて、ギンは思わずよろめいた。
「なっ!? 乱菊!?」
「も~どこ行ったかと思ったわよ。吉良にちゃんと逃がすなって言っておいたのに逃がしちゃうんだもん」
「お前、十番隊は今日遠征やてイヅルが・・・」
「そうよ、十番隊は今日は遠征。だけど私は遠征が決まった時に休みを申請しといたのよ」
「副隊長が・・・ほんまに十番隊長さんがお気の毒やわ」
「仕方ないじゃない、今日じゃなかったら私だってちゃんと遠征に行ったわよ」
「今日て・・・」
「アンタの誕生日は私が祝う!・・・昔から、そう決めてるのよ」
「何、言うてんのや・・・ほんまに」
ギンは乱菊の頭にぽんと手を乗せた。
「・・・阿呆やなァ」
でも、少しだけ、じんと胸が熱くなった。
いつだって冷たい自分に火を灯すのは、幼き日に出会ったこの少女。
「で、どう祝ってくれるつもりやの?」
「まずは飲みに行くわよ」
「・・・それ、ボクのお祝いなん?」
「あったりまえじゃない」
引き摺られるようにして、飲み屋まで連れて行かれた。
観念して中に入る。
すると、
「市丸隊長!お誕生日おめでとうございまーす!!」
大勢の声が響き渡った。
見ると店の中の客、全員が見知った顔だった。
「乱菊・・・なんやコレ」
「だって私だけじゃなくて、みんながアンタのこと祝いたいって言うんだもん」
独り占めしちゃ悪いじゃない?と言いながら、乱菊はギンを中央の席に着かせた。
隣の席のイヅルがギンに酒を注いでくる。
「しゃあないなァ」
居心地の悪さを隠すために、ギンは杯を一気に空けた。
それを見てまわりからは歓声が上がり、あちこちで杯が干された。
宴は夜遅くまで盛り上がったが、ギンと乱菊は普段通り、会話を交わすこともなかった。
◇◆◇
「幹事が真っ先に酔っぱらうて・・・何しとんねん、まったく」
ギンの背には、酔いつぶれた乱菊が乗っていた。
「ほら、乱菊、お前の部屋に着いたで?」
遠征のため、人気の少ない十番隊舎の一室に、乱菊を運び込んだ。
「ほな、帰るで?」
乱菊を布団に寝かせて、帰ろうとするギン。
その羽織の裾を、乱菊の手が掴んだ。
「・・・何してん?」
「まだ・・・」
「まだ、何や?」
「・・・まだ・・・いて」
ギンは、苦笑するとその場に座り込んだ。
そして乱菊の頭を優しく撫でる。
「何やの。甘えて」
乱菊は上体を僅かに起こすと、ギンの死覇装を握りしめ、真っ直ぐにギンを見つめた。
その潤んだ瞳の意図を正確に察したギンは、妖しい笑みを浮かべると、乱菊を抱きしめながら口付けた。
その夜、乱菊が切なげに漏らした吐息は、全てギンだけのものだった。
◇◆◇
翌朝、早朝。
「お腹すいた!」
と元気よく起きたのは乱菊。
その横で唸っているのはギンだった。
「・・・もすこし寝かせてぇな」
「ダメ、朝のうちに隊長が戻ってくる予定なんだから」
乱菊はギンの額をペシッと叩いた。
「あいた。ひどいなァ」
思わず跳ね起きるギン。
「もすこし優しゅう起こしてくれへんの?」
「どうやって?」
「優しゅうちゅーするとか・・・あいたっ」
二発目の平手がギンの額に直撃した。
ギンは大きくため息を吐くと、渋々と立ち上がって身支度を整える。
ふと死覇装の袂に入れっぱなしになっていた小さな包みを見つけた。
「せや、乱菊、えぇもんあるで」
「何?」
ギンは包みをそっと開いた。
「わぁ!・・・ってなんでこの時期に干し柿?」
「だからたっかいらしいで、よう知らんけど」
「そんなの、どうしたのよ」
「貰うた。ほら、食べ」
「ふーん・・・じゃあ、ありがたく一個だけもらおっかな」
「全部やるて」
「ダメ。残りはアンタが全部食べなさい。・・・あ、コレ美味しいわよ?」
一齧りした乱菊が極上の笑みを見せた。
「どれ」
ギンもぱくりと一口齧った。
乱菊が持っている齧りかけの干し柿を。
しかもちょうど乱菊が口にしているタイミングで。
唇が触れ合ったのは、もちろん偶然ではない。
「・・・馬鹿」
乱菊の呟きを、ギンは笑顔で往なす。
「ほんまや、美味いな」
口の中の干し柿をごくりと呑み込むと。
「こっちの方が」と言って、乱菊に口付けた。
そうして、柔らかく甘い唇を存分に味わった。
「ほな、行くわ」
「うん」
ギンは乱菊を抱き寄せ、彼女の耳元に口を寄せた。
「おおきに、な、乱菊」
乱菊は笑顔でギンを送り出すと、大きく背伸びをして空を見上げた。
外は秋晴れ、雲一つない青空だった。
<Fin>
あとがき。
ギンの誕生日記念小説です。
アニメでのギンの「13kmや」または「卍解」「神殺鎗」放送記念に再公開♪
とはいえ、改訂版w
旧版は、ギンの誕生日から3日間、乱菊の誕生日(ギン乱記念日)から2日間、の計5日間公開して、削除しました。
しかし最近、新規のアメンバーさん、読者さんが増えてきていて、読みたいという要望もありましたので、再公開に踏み切ることにしたわけですが。
旧版の終わり方がすんごいキライというか、やっつけ仕事だったのが悔しくて。
結局、大幅加筆修正をしての、再公開に踏み切りました。
というよりナンバーも変えちゃったので、ある意味新作?w
と言っても、前半はそんなに手を入れていません。
後半をがっつり変えました。
飲み会後の描写は、まるっきり新しいものです。
(旧版は、飲み会中に乱菊に干し柿あげて、心の中で乱菊に感謝して終わり、でした)
まぁ正直言えば、改訂版も微妙に納得はしてないけど。
藍ギンもギン乱もそれぞれラブラブっぽいので、いいかな、と。