BLEACH二次創作小説 No.55 『寒いから』 CP:修乱 or 日乱 or ギン乱 (マルチエンディング方式)
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「寒い!」
乱菊は身を竦ませると、毛足の長い襟巻きの隙間を埋めるように締め直した。
「なんで死覇装には冬服がないのよ。あったかそうな羽織ぐらいつけてくれたっていいのに・・・」
頬を膨らませながら、ぶつぶつと文句を言う。
「でもまぁ俺たち死神は、霊圧である程度の寒さは防げますからね」
「違うわ、見た目が問題なのよ!」
乱菊はきっぱりと言い放った。
「あんたみたいなのがいるから、寒く感じるのよ!」
と指差されたのは、冬でも袖無し死覇装を当たり前のように着ている檜佐木修兵であった。
「え、でも俺も一応マフラーしてますよ」
「それよりもちゃんと袖の付いた死覇装を着なさいよ。見てるだけで寒くなる」
「そんなもんっすかねぇ」
修兵は頭を掻きながら、乱菊を見下ろした。
いつも最強の存在感を放つ大きく露出した胸の谷間は、この季節、襟巻きに隠されて目にすることはない。
しかしそれがまた逆に不思議な色気を放つのが、この女性の不思議なところだ。
「何?」
視線に気づいた乱菊が顔を上げた。
いえ、何でも・・・と、目を逸らす修兵からあっさりと視線を外し、乱菊は「まだかなぁ」と独りごちながら後ろの茶屋を振り返っている。
そこは茶屋の店先で、乱菊がひとり床机に腰掛け、修兵がその前に立っている。
たまたま休みが合ったので、修兵が美味しい甘酒を奢ると言って乱菊を連れ出したのだった。
乱菊がまた顔を上げた。
「寒いから、横座ってよ」
と視線で自分の隣を示す。
実は照れくさくて横に座れなかった修兵だが、寒いからと言われてしまえば従うほかない。
失礼しまーす、と冗談めかしながら、横に座った。
もともとその床机は二人用のさして大きいものではなかったので、大柄な二人が座ると肩が触れんばかりの近さになってしまう。
気まずさを隠すように乱菊に話しかけようとそちらを向けば、目の前にある乱菊の長い髪が甘く香った。
「あ・・・」
思わず頬を赤く染め、言葉を途切れさせてしまう。
それに気付いた乱菊が修兵を向けば、二人は近距離で顔を合わせる形になってしまった。
「ん?」
乱菊の方は大して気にしているようではなく、言葉を途切れさせた修兵を不思議そうに見ている。
顔ひとつ分、前に動けば、その艶やかな唇を味わえる。
理性の箍が外れかけ、無意識に手が乱菊の背に回ろうとする。
その瞬間。
「はい、お待ちどうさま~」
「やったー!」
のん気な店員の声と、乱菊の歓喜の声。
そして修兵の手は空振った。
乱菊はそんな修兵の失意など知る由もなく、笑顔で「はい、修兵の」と修兵の分の湯呑を差し出してくる。
礼を言いつつ受け取り、しばしそれで掌を温めた。
「んまーい!」
ふと横を見ると、乱菊が笑顔で甘酒を堪能していた。
寒さのせいか、僅かに鼻の頭が赤くなっている。
艶やかな唇が湯呑に近付き、ふうっと息を吹きかけると湯気がふわっと上がって。
(ヤバッ)
まずいものを見たかのように、慌てて視線を逸らした。
こんな無邪気で、可愛くて、綺麗なものを、この近さで見ていては・・・。
緩んだ理性の箍が、またぐらぐらと揺れていた。
「修兵?」
何が伝わったのか、乱菊がこちらを向いて小首を傾げた。
もうダメだ。
手にしていた甘酒が入った湯呑は、置いたのか落としたのか全く記憶にない。
ただ自分の腕は両方とも彼女に巻き付いていて、その柔らかな感触を全身で味わっていた。
「っ・・・」
言わなきゃいけないのに、言葉が上手く出てこなくて。
ただ、彼女を見つめることしかできなくて。
それでも。
驚愕に見開かれていた彼女の綺麗な青灰色の瞳が、ゆっくりと閉ざされていったので。
俺は彼女の柔らかな唇に、そっと自分に唇を押し当てた。
腕の中で僅かに身じろいだ彼女が愛おしかった。
「しゅーへー?おーい!」
ふと気付くと、修兵の目の前で掌がひらひらと振られていた。
「あ・・・あれ?」
「何ぼうっとしてんの?甘酒も飲まないで」
勿体ない、と笑う乱菊は、いつもの乱菊で。
修兵の手には冷めた甘酒が入った湯呑が握られたままだった。
(夢・・・・白昼夢?)
思わず大きな溜め息を吐いた。
冷めた甘酒を一気に呷ると、少しだけ気持ちがすっきりしたような気がした。
この先、マルチエンディングとなります。
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【 その1 幸せ修乱編 】
【 その2 やっぱり日乱編 】
【 その3 ラブラブギン乱編 】
あとがきへ
【マルチエンディング その1 幸せ修乱編】
店からの帰り道。
楽しげな乱菊と並んで歩きながら、修兵はふと思った。
(なんかデートしてるみたいだな)
(乱菊さんが喜んでくれるなら、・・・それでいいか)
自分を納得させたそのとき、するりと腕に何かが巻き付いた。
温かいそれは乱菊の腕で。
さらに、こつんと肩に乱菊の頭が乗った。
え?と固まった修兵の顔を覗き込み、乱菊は花のように笑う。
「ありがと、修兵。また連れて来てね」
頬に柔らかい温かなものが触れた。
それが乱菊の唇だということに気付くまで、相当な時間がかかった。
乱菊はするりと腕を引き抜くと、修兵の背をバンと叩いた。
「わっ」
固まっていた修兵がようやく動いた。
「さぁ帰ろ」
「・・・ハイ」
再び並んで歩き始める。
(冬も、いいもんだな)
修兵は幸せを噛みしめた。
<Fin>
選択へ戻る あとがきへ【マルチエンディング その2 やっぱり日乱編】
店からの帰り道。
楽しげな乱菊と並んで歩きながら、修兵はふと思った。
(なんかデートしてるみたいだな)
(乱菊さんが喜んでくれるなら、・・・それでいいか)
「乱菊さん・・・」
「あ、隊長~♪」
修兵の呼びかけを遮るように乱菊が声を上げた。
見ると前方を十番隊隊長・日番谷冬獅郎が歩いている。
冬獅郎は、乱菊の声に足を止め、振り返った。
「松本、今日は休みだろ?何してる」
「修兵に甘酒奢ってもらったんです~。美味しかったですよ~♪」
「甘酒か・・・いいな」
「でしょ?隊長も今度一緒に行きましょうよ!そんで奢って下さい」
「何で俺が奢んなきゃなんねぇんだ?」
「だって隊長の方がお給料いっぱいもらってるじゃないですかぁ」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
「え~」
楽しげに会話する十番隊主従を、修兵は置物のようにただ眺めていた。
乱菊はようやく修兵に振り向くと、
「じゃあね修兵!今日はありがと!」
と笑顔で手を振り、当たり前のように冬獅郎の横を歩き始めた。
吹き抜ける風が妙に冷たく感じた。
「寒・・・」
修兵は身を震わせた。
寒いのは、心の方だということに気付きたくなかった。
一方。
「そもそも私は隊長のせいでいっつも寒い思いしてるんですから、たまには温かいものでも奢ってもらわなきゃ」
「それって・・・」
「もちろん氷輪丸のせいですよ!」
「それは・・・悪かった」
さすがにそれは否定できない。
「だいたい隊長ばっかあったかそうな羽織着てずるい」
「ずるいってお前、これは隊首羽織だろが」
「ずるいずるーい。あー寒いなぁもう!」
もはや駄々っ子のように文句を言う乱菊に、冬獅郎は溜め息を吐いた。
そしておもむろに乱菊の手を掴む。
「じゃあこれであったまっとけ」
突然繋がれた手をじっと見る乱菊。
「・・・あったかいです」
「そりゃよかった」
照れ笑いする冬獅郎を見て、乱菊は真顔のまま、がばっと冬獅郎に抱き付いた。
「うわっ!何してんだ、松本っ!」
「何これ、あったかーーーい!!!」
「はっ離せっ!」
「隊長って、あったかい~。・・・・子供体温だからですか?」
「うるせぇ!!・・・離せっ!」
「嫌です!」
赤面した十番隊隊長の怒鳴り声は、しばらく続いたようである。
<Fin>
【マルチエンディング その3 ラブラブギン乱編】
店からの帰り道。
楽しげな乱菊と並んで歩きながら、修兵はふと思った。
(なんかデートしてるみたいだな)
(乱菊さんが喜んでくれるなら、・・・それでいいか)
ふと、ふわりと冷たい風のようなものが通り抜けていった。
風というより・・・。
乱菊がぴたりと足を止めた。
「乱菊さん?」
修兵が問うと、乱菊はちょっと困ったような笑みを浮かべていた。
「ごめん修兵、用事思い出しちゃった。先に帰って」
「・・・はい」
乱菊は修兵が去るのをその場で見送り、その背が遠ざかると横の木立に入り込んだ。
たまたまその瞬間に振り返って目撃してしまった修兵は、なんとなく自分もそちらへ足を向けた。
後をつけるわけじゃない、そう言い訳しつつも気配を消して乱菊の背を追う。
でもそれはやはり乱菊を裏切る行為だ。
修兵は足を止めた。
苦笑して、道へ戻ろうと身体を反転させる直前に、乱菊が目的地に辿り着いていたことを知った。
(そういうことか・・・)
乱菊が、長身の男に抱き付いていた。
その男も彼女を抱きしめていた。
雪景色に埋もれそうな銀色の髪に、白い隊首羽織。
三番隊隊長・市丸ギン。
張りあうこともできない、格上の相手だ。
修兵は足早にその場を立ち去った。
あまりの寒さに身を縮ませながら。
「なんでこんなとこにいるの?」
「たまたまや」
「なんで私に合図したの?」
「そこに乱菊がおったからや」
「躯、冷たいよ?」
「ずっと外におったからなぁ」
ふたりはぎゅっと抱き合ったまま、身じろぎもしない。
「寒ないんか?」
「・・・こうしてれば、あったかいよ」
「・・・ほんまやな」
ギンは冷たくなった鼻先を乱菊の鼻先に擦り合わせて、くすりと笑うと、温かな唇を存分に味わった。
熱い舌を絡めて、白くけぶる吐息を漏らす。
「乱菊はいっつもあったかいわ」
「あんたがいつも冷たすぎるのよ」
「なら、冬はボクんこと嫌いになる?」
「・・・ならないわよ」
乱菊はじっとギンを見つめた。
「好きだもん」
乱菊の言葉にギンの方が戸惑った。
「なんや今日はえらい素直やなァ。甘酒で酔ったんちゃうやろな」
「やっぱり見てたんだ」
「う・・・たまたま見掛けただけやで!」
「見てたんだ」
「う・・・」
乱菊はくすっと笑った。
「妬いた?」
「そんなんちゃう」
「妬いたんでしょ?」
「妬いとらん」
「じゃあそういうことにしといてあげる」
そう言うと乱菊は自分からギンに口付けた。
ふたりの間には暖かな空気が流れていた。
<Fin>
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あとがき
修兵救済小説になりましたw
(イヅルは救済できなかったのに、修兵は救済できた!www)
当初の予定ではいつもどおり修兵は不憫な役で、話はそのまま日乱にもってく予定でした。
ところが途中で、ふと、このまま修乱でもいけるかなって思い始めて。
その路線で書き始めたら、苦戦して。
いっそ一番書くのがラクな、ギンに攫わせたろか、とも思ったんですがw
なんとか最後まで行けましたw
なんで苦しむかって、ウチの乱菊は修兵には気はないんだもんw
修兵のことはかわいがってるけど、気持ちはギンと冬獅郎にのみです。
それでも幸せな展開になるよう、すっごく苦しみましたw
しかし展開に苦しみまくったおかげで、マルチエンディングできんじゃね?ってくらい話の枝葉が広がりました。
書くか、否か、ちと悩んでますw
面白そうだから書いてみるかな?
というわけで、書いちゃいましたw
上記あとがきでは、修乱編を本編として書き上げ、おまけとしてマルチエンディングで他の予定だったんですが。
全て含めてマルチエンディングに変更しちゃいましたw
修兵・・・ごめん。
やっぱりちゃんと救済できなかったみたいw
ホントはもう一編、邪魔者編を書きたかったんですが、量が多すぎちゃうし時間もかかり過ぎちゃうのでやめました。
恋次・イヅル・雛森の無邪気な邪魔を入れる予定だったんですが、なくても問題なさそうだしw
ちょっと面倒で気が逸れちゃうマルチエンディング方式、いかがだったでしょうか?