BLEACH二次創作小説 No.49-4 『月窟の水』(げつくつのみず) 

                 CP:ギン白(市丸ギン×朽木白哉)    注・BLです

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これは4話目です。1~3話目はこちらからどうぞ。 → 【 月窟の水 1/7  、 2/7  、 3/7  】





◇ 3 ◇


その年、老齢の祖父は自ら引退を決意した。
年齢がということではなく、白哉に後継が務まると判断したことによる決意であろう。
それは自他共に判っていたことなので、白哉の六番隊隊長への就任は、あっけないほど簡単に済んだ。
問題は副隊長の人選にあった。
人と馴れ合おうとしない白哉には、副官を任せられるほど信頼に足る人物に心当たりがなかった。
三席を昇進させる手もあったが、その者は祖父に傾倒しすぎていて白哉を侮るきらいがあった。
毎日のように顔を突き合わせなければならない相手だ。
白哉は心底困っていた。
「他隊の者でも良いのだぞ?」
祖父にそう言われ、考えてみたのだが、他隊には全くと言っていいほど知り合いはいなかった。
元々四大貴族である彼は真央霊術院へも通っていない。
護廷にあっては隊長クラス、鬼道衆にあっては鬼道長クラスの者が朽木家へ通い、師となって白哉に合わせた学習を進めた。
だから、彼には同期も友もいない。
そういえば似たような境遇の者がいた。
五番隊副隊長の市丸ギンだ。
ギンは流魂街から真央霊術院へ入学したが、その傑出した才により、たったの一年で護廷入りが決まってしまった程で、友人を作る暇など無かったという。
同期とは、同時に霊術院へ入学した者なのか、卒業もしくは同時期に護廷に入った者なのか、さっぱりわからないのだという。
そして実力は折り紙付きだ。
白哉にとっては理解できぬ男ではあったが、何故だか傍にいて欲しい気がした。
もっと、知りたいと思った。


六番隊の執務室へギンを呼び出した。
「六番隊長さん、ご就任おめでとうございます」
ギンはいつもの貼り付いたような笑みのまま、素直に頭を下げた。
「で、何の用やの?」
しかし、挨拶を終えると態度は以前のものに戻った。
だが白哉にしてみれば、副官にいつもビクビクされるのも嫌だったので、これは逆に評価が高いというものだ。
「昇進とはならなくて申し訳ないのだが、六番隊の副隊長職を引き受けては貰えないだろうか」
「は?ボク?」
ギンは目を丸くした。
「ボクもう五番隊で副隊長なんやけど」
「勿論存じている。隊長格では確かに少ないが同位での移動はよくあることだ」
「ふうん」
ギンが妖しい目つきになった。
口の端を大きく歪ませ、手を伸ばす。
「何を・・・」
ギンの手が白哉の頬に触れた。
「そんなにあん時の続きがしたいん?」
「何を、言っている?」
「あんなコトしたボクを傍に置きたいやなんて、それしかないやろ?」
「そうではない。私は兄の力量を正当に評価し・・・ん」
その先はギンの唇によって封じられた。
反射的に突っぱねる腕は、何故にこんなにも力が入らないのか。
その手はギンの死覇装を掴むことが精一杯であった。
噛み付くような勢いで始まった口付けは、すぐに甘く官能的なものになった。
上唇は舌で擽られ、下唇は甘く噛み付かれ、それぞれが柔らかく吸われた。
吐息を漏らす際に開いた口内へギンの舌が侵入し、白哉の舌を見つけては絡め取る。
「・・・ん・・・あ・・・」
長く熱い口付けが終わった。
白哉は戸惑いと官能に身を震わせている。
ギンは彼の死覇装の握ったまま震えている白哉の手を優しく引き剥がすと、その手を自らの顔まで持ち上げた。
そして視線は白哉にぴたりと合わせたまま、その指を、口に含んだ。
「あ・・・」
呆然としている白哉を尻目に、ザラリとした舌で丁寧に指をしゃぶる。
その唇から洩れる卑猥な音に、白哉は思わず顔を背けた。
最後に爪に柔らかく歯を立てると、ギンは白哉の手を解放した。
「せやから、こないなことがしたいんやろ?」
「馬鹿な・・・ことを」
「ちゃうの?そないなエロい表情しといて」
ギンが嗤う。
「なっ・・・私は真剣に!」



「断る」



一片の迷いもない否定。
「・・・何故」
ギンは手を伸ばすと、細い指先をぴたりと白哉の額に当てた。
「アンタとは、上にも下にも立つ気にならへん」
「そう、か・・・」
言われてみて、白哉も気付いた。
そうかもしれない。
部下として欲しかったわけではない。
横にいて欲しいと願っていたのかもしれない。
納得しかけていた白哉の耳に嘲るようなギンの言葉が届いた。
「まァ、布団の中やったら別やけど?」
普段なら激昂しかねない言葉だが、白哉は既に自分を取り戻していた。
「・・・もういい。副隊長就任要請は忘れてくれ」
「ほな、な。六番隊長さん」
そういうとさっさと部屋を出て行く。
ギンの去り方はいつもあっという間だ。
呼び止める隙さえない。
白哉は甘く噛まれた指先を見つめた。
まるで毒を注入されたかのように、その爪は熱くひりひりと白哉の心を苛んだ。



数日後、ギンは三番隊隊長へと昇進した。
それを知って白哉は馬鹿なことを考えた、としばらく落ち込む破目になった。




二人の居場所は、上でも、下でもない。






月窟の水 5/7  へ 続く>