BLEACH二次創作小説 No.45 『女心と夏花火』

        CP:剣やち(更木剣八×草鹿やちる)   登場人物:剣八、弓親、一角、乱菊、やちる

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その日は朝から、台風、竜巻、大地震・・・どんな天災よりも激しい人災に見舞われた。
十一番隊隊長・更木剣八が荒れている。
隊の訓練場では続々と重傷者が発生し、むしろ死亡者がでていないのが不思議な程だ。
「・・・一角」
「なんだ弓親」
「ちょっとこれ、ヤバイんじゃない?」
「そうだな」
訓練場の片隅に、こっそりとしゃがみこんでいる二人。
中央の荒れた光景を横目で眺めながら、その二人・斑目一角と綾瀬川弓親は引きつった顔で話し合っている。
「そもそも何で隊長がこんなに荒れてるのさ?」
「俺が知るわけねぇだろ!」
「しっ・・・副隊長は?」
「そういやぁ朝から見てねぇな」
「・・・それって」
「それか・・・」
二人は顔を見合わせて、同時にため息をついた。
弓親がそっと立ち上がる。
「じゃあ僕が探してくるから、一角はアレ、何とか止めといてよ。このままじゃ隊員全員が救護詰所送りになっちゃうからさ」
「アレって・・・隊長を俺一人で止めるのかよ!?」
「しーっ!声がでかいって!・・・だって霊圧探るのは一角より僕の方が上なんだから、適材適所でしょ」
「ちっ、しょうがねぇなぁ!」
一角も立ち上がる。
弓親が訓練場をそっと抜け出すのを見届けると、鬼と化している剣八に声を掛ける。
「隊長!」
「・・・おう、一角か。てめぇどこに隠れていやがった」
「あの、今日、副隊長は?」
ぴくり、と剣八の眉が跳ね上がった。
「・・・昨夜から帰ってこねぇ」
どすのきいた声に、訓練場の床が震えるようだった。
(それは・・・やべぇ!)
「今、弓親のヤツが探しに行ってますからっ!」
一角は焦って告げる。しかし。
「どうでもいい!」
そして剣八は辺りを見回す。
「オラ次!誰だ!?」
「隊長!それじゃ隊員が持ちませんよ」
「あぁ?じゃあお前が相手しろ、一角」
「・・・お・・・押忍!!」
(弓親~~~早く戻ってきてくれよ~)
一角の願いは、叶うか否か。




「副隊長ー!・・・あれ、ここって十番隊舎じゃん。何でこんな所に副隊長の霊圧が?」
きょろきょろと十番隊舎内を見回す弓親。
そこへ。
「あー!弓親っ!!ちょうど良かった!ちょっと手伝って!!」
「ら・乱菊さん!?いや僕、今忙し・・・」
「いいから、手伝えっ!」
「・・・ハイ」
あまりの乱菊の剣幕に、弓親は思わずうなずいてしまい、そのままずるずると十番隊舎内へ引き摺られて行った。


「アンタ、いいとこにいたわねぇ。急いで夜までに浴衣を仕立て直さなきゃいけないのに、私一人じゃ間に合わないのよう。アンタ、裁縫得意だったわよね?」
「まぁ・・・って浴衣ぁ!?なんで僕がそんなの手伝わなきゃいけないん・・・ってコレ子供用じゃない」
綺麗な花柄の浴衣地は、子供用にしては大人っぽすぎる柄ではなかろうか。
「だってやちるがコレがいいって言うからぁ」
「副隊長!?ここにいるの?」
「今、隣の部屋で昼寝してるけど?」
弓親は勢いよく立ち上がり、乱菊の指差す隣の部屋への続き戸を開けようとした。
が、後ろに引き摺り戻された。
「なっ!?」
「まずは手を動かす!!!」
寝不足なのか、目の下にわずかに覗くクマが乱菊の迫力に輪をかけた。
「・・・ハイ」
おとなしくうなずくしか、弓親にできることはなかった。


「そもそも何で乱菊さんがウチの副隊長の浴衣、仕立ててんのさ?」
二人でひたすら浴衣を縫いながら、弓親が尋ねる。
「昨日の夜、急にあのコが来たのよ」
「昨夜?」
「そう。どうしても今日の夜に浴衣が着たいって。どこの仕立て屋だって、その日の内に仕上げてくれるところなんてないでしょ?無理だって言ったら・・・あのコ、なんか思いつめた顔してるからさぁ」
「・・・」
「仕方ないから、私の浴衣の中から気に入ったのを選ばせて直してるんだけどね」
乱菊は優しく笑う。
「何で乱菊さんがそんなの引き受けてんのさ?義理ないじゃん」
「こんなに小さくたって女心でしょ?・・・わかるからさ」
「む」
ふふ、と笑う乱菊が思い出しているのは、いつの日のことだろう。
「副隊長がねぇ・・・」
「終わったー!弓親、そっちは?」
「あぁ、これで・・・終わり」
「・・・アンタ、やっぱり上手いわねぇ。ありがと!」
「いや、ウチの副隊長のだし」
「キャー!もう夕方じゃない!?早くやちる起こして着付けなきゃ!!」
焦りまくる乱菊の後ろ姿を、ぼーっと眺める弓親。
「女心か・・・・・・。ん?夕方!?ヤバッ!一角!!」
乱菊のペースに引き込まれ、すっかり忘れていた。
(無事だといいけど)


ようやく隣の部屋から二人が出てくると、やちるだけでなく乱菊も浴衣姿だった。
「あっゆみちー!何してんの?」
「何してんのじゃないですよ、副隊長。何も言わずに一晩も帰ってこないなんてダメですよ」
「・・・剣ちゃん、心配してた?」
「朝から荒れて荒れて・・・もう無事な隊員一人も残ってないんじゃないかな」
「アハハ」
「まったく・・・でも、その浴衣、良く似合ってますよ」
「ふふ、可愛い?」
「えぇ、とっても」
「・・・剣ちゃんも、喜んでくれるかな?」
「そりゃあもう」
やちるが、はにかんだ笑みを見せた。
それを見て弓親は、乱菊の言葉の意味を知った。
(そうか・・・女心か・・・)
「ちょっと、弓親!何でアタシには一言もないのよ」
「ハイハイ。乱菊さんも、とーってもキレイですよー」
「投げやりに言うな!」
流したものの、その姿はまさに大輪の花の如く輝いている。
「で、何で乱菊さんまで浴衣なのさ」
「何言ってんの?今日はこの夏最後の花火大会じゃない。さっウチの隊長も呼んでこなきゃ」
うきうきと冬獅郎を呼びに行く乱菊を見送った。
(そうか、花火大会・・・だから)
「さっ行きましょうか、副隊長」
「うん、ゆみちー」
手を繋いで歩き出した。



十一番隊舎に到着すると、訓練場からは物音一つしない。
「ヤバイ・・・かも」
そうっと覗いてみると、ぼろぼろになった一角が倒れていた。
慌てて駆け寄る。
「一角っ!」
「・・・弓親ぁ、遅ぇーよ」
「ごめん一角、ちょっと事情があってさ」
「ったく、副隊長は?」
「連れてきたよ。で、隊長は?」
「そこの庭にいるはずだ」
それを聞いたやちるは、庭へと駆け出した。


細い三日月の月明かりの下、剣八が静かに座していた。
「剣、ちゃん」
声をかけると、閉じていた目が静かに開き、やちるを見据えた。
見慣れない恰好に少し戸惑ったものの、僅かに剣のこもった声を投げかけた。
「どこに行ってた」
「乱ちゃんとこ」
「急にいなくなるな」
「うん・・・でも」
「でも?」
その時、大きな音と共に花火が空を彩った。
「わ、始まった」
「やちる?」
やちるは笑顔で剣八の羽織をぎゅっと握りしめた。
「だって、やちる綺麗な浴衣着て、剣ちゃんと夏の最後の花火見たかったんだもん」
「・・・やちる」
そのまま、ぴとっと剣八にひっつく。
「今日だけだから・・・明日から、またいつものやちるに戻るから」
剣八は驚いたようにやちるを眺めると、上空へと目を逸らし、次の花火を待った。
二発目の花火は、空いっぱいに広がった。



<Fin>










あとがき


これもリクエストで【剣八×やちる】
やちる、可愛くて好きです。
いつか書いてみたかったけど、書ける自信がありませんでした。
どうかな?形になったかな?


今回大変だったのが、やちるのあだ名!
迎えに行ったのが弓親で、「弓親!?弓親のこと何て呼んでた!?」とパニックになり。
ネットで調べたんだけど、「ゆみちー」?

どこでそう呼んでたのか未だにわかりません。
アニメでは「ゆんゆん」とも呼んでたらしいんですが・・・わかんない・・・。
誰か詳細を教えて下さい。(泣)


同じくやちるが頼った乱菊。
乱菊のことも「何て呼んでた!?」って。

何となく「乱ちゃん」だった気がしたのと、ネットで検索してみたら同じ意見の人がいたので採用。
これも違かったらごめんなさい。
一角だったら簡単だったのに。(苦笑)




乱菊が出てきたせいか、おまけの小説まで出来ちゃいました。
なんかウチのCPがいっぱい出てくるんですが、夏の名残りを楽しんでいただけると幸いです。




おまけ → 『男心と夏花火