BLEACH二次創作小説 No.41 『ありがとう』  CP:藍ギン・ギン乱
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注: この小説は原作416話(コミックス48巻収録)ぐらいまでのネタバレを含みます。








雨が降っている。
四角い形に切り取られた外の世界を、ギンは薄暗い部屋の中から眺めていた。
躯中に巻かれた包帯が、動きをわずかに制限する。
しかし布団から身を起こすと、少しだけ呼吸が楽になったような気がした。
「痛っ」
さらに立ち上がろうとして右手を床についたとき、酷い痛みを感じ、思わず声が出た。
(せやった。この右腕はあの時、藍染さんに・・・でも、こんなもんまで治せるんやなァ)
妙に白く見えるその腕の色は元からであったか、それとも失った血の多さのためなのか。
今度は左腕を支えに立ち上がり、窓辺へと移動する。
「雨、やなァ」
虚圏には降らなかった雨。
(天蓋の下にわざわざ太陽まで作らはったのに、何で雨は降らせへんかったんやろ)
そう思いながら、窓の外へと手を伸ばした。
指先に触れる、大粒の滴。
その白く細い手を、そっと支える大きな手の温もり。
ギンはハッとして、顔を上げた。


そんな手は、もう・・・存在しない。



◇◆◇



戦いが終わった。
尸魂界、虚圏、現世をも巻き込んだ藍染惣右介の長きに亘る反乱は、その死をもって終結した。
戦いの中、決戦では多くの重傷者を出したものの、戦いの規模から考えると非常に少ない犠牲で済んだのは、偏に四番隊や井上織姫の功績であろう。


ギンは、自分も死んだものだと思っていた。
酷い痛みに意識を引き戻されて気が付くと、目の前には泣き腫らした顔の乱菊と、激しい感情が入り混じってぐしゃぐしゃな顔をしたイヅルがいた。
袈裟掛けに切られた傷にはイヅルの手が当てられ、そこから温かい霊圧が流れ込んでくる。
躯を貫いた傷は表面上は塞がり、千切られた右腕も止血されているようだった。
残った左腕を重たげに持ち上げ、指先でそっと乱菊の目から零れ落ちる涙の粒を拭った。
もはやかけられる言葉は何もなかった。
そのまま片腕で乱菊の頭を自らの肩に押し付けるように抱きしめた。
傷は痛んだが、それは生きている証であった。
引き寄せた躯が、熱く震えるのが妙に愛おしかった。


生き残ったものの尸魂界に、護廷に戻れるものとは思っていなかった。
藍染惣右介を倒すためだったとはいえ、間違いなくギンは反逆者の一員。
ギン自身が釈明を口にすることはなかったが、乱菊やイヅル、そして死神代行の黒崎一護によって真実は明かされ、護廷はギンの三番隊隊長への復職を認めた。
しかし、それに納得できない者も多かった。
特に因縁が深く、重傷を与えられた仮面の軍勢からの非難は大きかった。
そんな声にいちいち頭を下げて説得にまわったのは、意外にも乱菊とその上司である日番谷冬獅郎であった。
そうして今、ギンは懐かしい三番隊の隊主室にて傷ついた躯を癒しているのであった。


「生き残ってしもたな・・・」
窓の外に伸ばした右腕は雨粒の感触を伝えてくる。
冷たい、雨の温もり。



◇◆◇



「何で雨に触れようとするんだい?」
それはいつの思い出だったか。
窓の外の雨へと手を伸ばすギンに、藍染が優しく問うた日。
「部屋ん中から窓の外の雨を見とると、なんか信じられへん気になるんや」
「触れると納得できる?」
「せや。ボクは触れられるもんしか信じへん」
窓の外に伸ばした手が、大きな温かい手に包まれた。
「では、こうしたら君は僕を信じるのかい?」
その笑顔が何だかとても寂しげに見えた。
「・・・ボクに信じて欲しいん?」
「そうだな・・・今ここに、君の横にいることだけ、信じてくれれば。・・・それでいいよ」
包まれた手と寄り添う躯がじんわりと温かい。
「欲のない人やな」
ギンはそっと藍染の躯に頭をもたせ掛けた。
静かな雨の音と、躯から伝わってくる柔らかな鼓動に、安らぎを感じた。



◇◆◇



「・・・ギン?」
戸惑いがちな声がかかった。
振り返ると乱菊が入ってくるところだった。
「起き上がって大丈夫なの?」
「うん」
「何、してるの?・・・傷に障るわよ」
「・・・外、見とった」
ギンは窓の外を眺めたまま、動きそうにない。
乱菊もその横に並んで、外を眺めた。


二人とも無言のまま、静かな時間が流れた。
「乱菊・・・」
「ん?」
「100年以上も一緒におった人がいなくなるっちゅうんは・・・なんや不思議な気分やなァ」
乱菊はじっとギンを見つめた。


「バカね。

 それを・・・”寂しい”っていうのよ」


ギンはそれを聞いて目を見開いた。
薄蒼の瞳が僅かに潤んだように見えた。
「そぉか、寂しいんか・・・」
乱菊はギンの背に手を当てた。
「そうよ。分かってるの?アンタ、私にそんな気持ちを味あわせるとこだったのよ?」
わざと明るい声、軽い口調で責めた。
しかし、次の声は少し揺れてしまった。
「そうなってたら、許さなかったんだからね」
声が、震えた。
「許さないんだから・・・」
溢れる涙をどうやって止めたらいいものか、あの日からずっと分からない。


「うん。ご免な、乱菊」
「・・・うん」




ギンは、窓の外に目を向け、小さな声で呟いた。


「ありがとう」


彼が何にそう告げたのか。
それを知る者は誰もいない。



<Fin>







あとがき


久々に展開妄想みたいな小説。
ギンが大変なことになってる本誌と、大好きなVAMPSの「PIANO DUET」という曲がぐるぐると頭の中を回り続け、
どっちかと言ったら本誌展開とは逆(?)に藍染サマが死んで、ギンが生き残った話になってしまいました。
もう次のジャンプのネタバレがネットで出回っているタイミングだけど、
どうしても吐き出したくて、スランプ中ではあるものの頑張って仕上げてみました。


できましたらこの曲を聴きながら読んでいただくか、読み終わった後にでもじっくりと曲を聴いていただけると嬉しいです。
この曲が無かったら生まれなかった話です。
曲は・・・YouTubeとかにも歌詞付きで上がってますので、CD持ってなくても聴いてみて下さいね。
「VAMPS PIANO DUET」で検索してみて。

バラードです。

「貴方が今~」からのラストまでの歌詞がまさにツボで。

私の中の藍ギンであり、ギン乱でもある。

誰が天国にいるかは久保先生次第ではあるのですが。(苦笑)


この曲があったので、最後の一言が「ありがとう」なわけですが。
「おおきに」に直すか、悩んだよ。(笑)
こういう時、関西弁は困るんだよね~。
でも曲とリンクさせた話なので、あえてそのままにしてみました。

この違和感が印象に残るといいな、と思います。




追記(2010.12.4)

コミックス48巻発売記念に、アメンバー限定公開から一般公開へ変更。

相変わらずこの曲を聴くと、LIVE中でも泣きそうになりますw