BLEACH二次創作小説 No.37 『頼れる男』  

                 登場人物:斑目一角、松本乱菊、日番谷冬獅郎、(綾瀬川弓親)
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現世へ行くのを立候補したのは、尸魂界にいたくなかったからだ。
そこかしこにあいつとの思い出があって、ふと立ち止まってしまう自分がいる。
いつも以上に酒に逃げても、酔いが増すほどに頭の芯は冷めて、乱れるほどにむなしくて。
それならば何も考えずにいられる場所にいたかった。

でも、そんなに簡単にはいかない。


「松本、お前無理すんなよ」
斑目一角が突然そう声を掛けてきたのは、現世にきた日番谷先遣隊がそれぞれ斬魄刀との対話を行っていた時のこと。
対話にいらついた弓親がまたひとりで暴れているので、冬獅郎がそれに雷を落としに行くのを、乱菊は挑発するような笑顔で送り出したところだ。
「何よ、無理って」
「無理してはしゃいでんのが見え見えなんだよ」
「何・・・言ってんのよ」
それは問いというより、虚勢でしかない。
「お前と市丸隊長のことは、知らねぇヤツも多いけど、少なくともここにいる奴等は皆知っていることだ」
「・・・」
「そんな面子の前でまで、平気な顔してんじゃねぇよ」
忘れたいのに、忘れさせてくれない。
「檜佐木や吉良はまだ軟禁に近い状態なのに、市丸隊長と関係のあったお前が現世行きの許可を貰えたのは、偏に日番谷隊長が上に頼んでくれたからだろうが」
「・・・」
「それなのにてめぇは、こっちに来てからも無理してはしゃぎやがって」
「・・・うっさい、ハゲ」
「てめっ、人がせっかく・・・」
「無理なんかしてないわよ!いつもどうり、普段どう・・・」
声がかすれた。
涙が溢れたことに、自分でも驚いて。
一角は刀を右手に持ち替えると、左手で乱菊の頭を引き寄せた。
「たまにはそうやって素直に泣いときゃいいんだ」
一角の胸に顔を埋める形になった。
その温もりに乱菊の涙は後押しされたかのようで、溢れる涙は止まりそうにない。


不安や、悲しさや、淋しさや、悔しさが入り混じって、乱菊はもうどうしたらいいのか分からない。
ただ一つはっきりしていることは、あいつとはもう一緒にいられないということ。


声を押し殺した微かな嗚咽が一角の胸に響く。
一角は乱菊の頭を優しく撫でた。
「俺は別にお前に何もしてやれねぇけど、こうやって胸を貸すくらいの事はできんだから、・・・少しは頼れよ」
「・・・」
「日番谷隊長はまだガキだから、そうはいかねぇだろうけど・・・」
「隊長はアンタよりもずっと大人よ!」
ようやく涙の止まった乱菊が、一角を見上げながら言う。
目が、赤い。
「でも大人だからって、何でもかんでも隊長に押し付けるわけにはいかないのよ。・・・特に今回は雛森の事だってあるんだから」
二人は少し離れた場所にいる冬獅郎を眺めた。
「だから、そういうときに俺らを頼れって」
「黙れ、ハゲ」
「てっめぇ・・・」
乱菊はくすっと笑うと、一角から離れる間際、彼の頬に唇を触れさせた。
「なっ!?」
「お礼よ」
乱菊は戻ってくる隊長のもとへ向かった。
その冬獅郎は向かってくる乱菊よりも、奥の男に目を剥いた。
「斑目、お前茹蛸みたいになってるぞ?」
その言葉に全員が顔を向けると、そこには頬を押さえて顔を真っ赤にした一角の姿があった。
乱菊だけはこっそり、そんな一角にぺろりと舌を出して見せた。



<Fin>






あとがき


なんとなーく、一角と乱菊の話が書きたくなりまして、以前から温めていた作品。
ボツ墓場から復活しました。


意外に相性の良さそうな二人ですよね。


茹蛸の一角はきっとブリミュの影響です。(笑)
あの臼井一角はツボでした。


女の扱いが上手そうで、でも女慣れしてなさそうな一角が面白そうです。
好きなキャラとは違うんだけど、いいキャラだなぁと思っています。
弓親も。