BLEACH二次創作小説 No.27 『This Light I See』 登場人物:日番谷冬獅郎、松本乱菊 CP:日乱
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こんな寒い日にはアレが来る。
日番谷冬獅郎は降りしきる雪の中、尸魂界の外れの人気のない場所でひとり立ち尽くしていた。
隊には休みを申請してきた。
突然休む事はほとんどないから副隊長である松本には迷惑をかけるが、自分があの場所にいる方がかえって迷惑だろう。
息を吐くと白くけぶる。
冬獅郎がここにいることで、さらに気温が下がっているようだ。
近くで枯れ木が凍って砕ける音が聞こえた。
胸の中で自分のものとは異なる鼓動が、どくんと大きく脈打った。
・・・来る。
「氷輪丸!」
副隊長である松本乱菊は、以前から隊長の行動に疑問を感じていた。
いつもは人並み以上に仕事熱心な冬獅郎だが、冬に数日突然休みをとる事がある。
理由を訊けば風邪をひいただの所用ができただの他愛のないことを言う。
しかし普段ならばそれくらいの事で休む事はなく、体調を崩していても無理に出仕してくるので乱菊が頑として追い返さないと休まない程なのだ。
それに、そんな休みの日の前後は何だか冬獅郎の気がひどく乱れているのだ。
副官である自分にすら言えない事とは何なのだろう。
乱菊はこの日、それを突き止めることにした。
冬獅郎の休みの報を受けると即、三~五席に仕事を任せて自分も無理矢理休みをとった。
後ろから聞こえる非難轟々の声は完全に無視して、冬獅郎の後をつけた。
そうして尸魂界の外れで目にしたものは、
巨大な氷の龍が冬獅郎に襲い掛かる姿。
氷の龍は氷輪丸。
冬獅郎の斬魄刀だ。
しかし何故具象化して、しかも何故冬獅郎に襲い掛かるのか。
思わず息を呑んだ。
その息は冷たく、まるで氷の塊を飲み込んだかのようで、咽喉が痛んだ。
冬獅郎は刀を抜き、氷の龍の攻撃を受けては返し、霊力をぶつけては屈服させようと圧をかける。
しかし氷の龍の攻撃は苛烈で、冬獅郎の躯にはあちこち無残な傷ができている。
乱菊は飛び出すか否か逡巡した。
その僅かな間に、勝敗は決した。
冬獅郎の刀が氷の龍の眉間に根元まで突き刺さった。
甲高い鳴き声を上げて龍は崩れ、大小の氷の破片となって地に降り注いだ。
しかしその真下では冬獅郎が膝をついて荒い息を吐き、今にもその場に倒れてしまいそうになっている。
乱菊は耐え切れずに瞬歩で冬獅郎の元へ向かい、その軽い躯を抱えるとその場を離れた。
その一瞬でさえ、拳大の氷片に背を打たれて乱菊は小さく呻いた。
「松本っ!?お前なんで・・・」
乱菊は安全な場所まで移動すると、頭をひとつ振った。
するとその長い髪からパラパラと細かな氷片が舞い、薄い陽の光を受けてキラキラと輝く。
「隊長こそ、何をされてるんです?」
「お前・・・つけてきたのか」
冬獅郎は苦々しい顔で乱菊を睨みつけた。
「訊いても、教えて下さらないので。」
乱菊はしれっと答える。
「それよりお怪我が・・・」
冬獅郎の躯に手を伸ばすと、改めてその躯が冷気に包まれているのを感じた。
「何これ、冷えすぎですよ隊長!」
改めて冬獅郎を見て、乱菊は目を疑った。
「隊長、これ・・・」
冬獅郎の冷え切った腕はうろこ状に固く波打ち、その手は人のものでは有り得ない形状で、まるで龍の手のようだ。
「見るな!・・・俺を、見るな・・・」
冬獅郎は腕を隠すように身じろぐ。
そうして顔を伏せた。
「隊長・・・」
乱菊はそれでも冬獅郎に手を伸ばした。
「俺にかまうな!」
乱菊の手を振り払う冬獅郎。しかし乱菊は自らの躯でぶつかるようにして冬獅郎を強く抱きしめた。
「松本・・・離せ」
「嫌です」
まるで氷そのものを抱きしめているような感覚に乱菊は鳥肌を立てた。
しかし冬獅郎の事は離すまいと、より力を込めて抱きしめる。
何を言っても聞きそうにない乱菊を見て、冬獅郎はため息をつくと素直にその肩に頭を預けた。
冬獅郎が素直に従ったのを察すると乱菊は彼を掴まえていた片手を外し、彼の頬をその手で温めつつ自分の頬に押し付けた。
(温かい)
肌がざわついて、どうやら腕は人の状態に戻ったらしい。
震えていた指先がようやく感覚を取り戻してくる。
頬の温もりは照れ臭かったが、他に見ている者がいるわけでなし、冬獅郎は素直に乱菊の頬の温かさを、柔らかさを楽しんだ。
暫くして、
「松本・・・もういい。大丈夫だ」
そう言って冬獅郎は躯を離した。
「これ以上はお前が凍死するぞ」
「そ・・・ですね」
乱菊は冬獅郎の腕が元に戻ったのを見てほっとしたように笑ったが、体温を失いすぎて顔が青ざめている。
冬獅郎は辺りを見回し、近くに小さな洞窟を見つけると、そこで少し待っているように乱菊に告げ、立ち去った。
ふらつく乱菊がその洞窟に入ると同時に戻ってきて、手にした枯れ枝を適当に折って重ね、火をつけた。
乾燥していた枝はすぐに燃え上がり、二人の顔を赤く照らす。
ようやく乱菊の頬に赤みが差してきたのを見て、冬獅郎はほっとした。
「あぁいうの、今日だけじゃないんですよね?」
冬獅郎の傷の手当てをしながら、乱菊は唐突に切り出した。
見破られているようなので、冬獅郎は隠すのをやめた。
「そうだ」
「あれは氷輪丸ですよね?なんであんな・・・」
冬獅郎は焚き火に視線を移すと、語り始めた。
「氷輪丸は、こういう寒い日に時折暴走する」
「暴走!?」
「そうだ。氷雪系最強というのは伊達じゃない。何度屈服させても度々俺の強さを確認したくなるんだろう」
「・・・隊長ほど強くて、そんな・・・」
「俺はまだ氷輪丸を完全に使いこなせているわけじゃない。まだまだこれからなんだ」
悔しいが、自分の未熟さは理解している。
「この寒さに氷輪丸が影響されるのか、氷輪丸の・・・俺の霊圧が暴走してこの寒気を呼んでいるのかは分からない。しかし、こうなった時に瀞霊廷にいてはまわりに被害が出るから、こうしてできるだけ離れるようにしている」
「では、これからもこういう事があるということですよね」
「そういうことだ」
「それならば、その時には私もお連れ下さい」
乱菊はきっぱりと言い放った。
「何?」
「隊長と氷輪丸の戦いにはもちろん手は出しません。しかし、それ以外の事で隊長が躯を損なわれるのは嫌です」
今日だってあの氷片が直撃していればこんな怪我では済まなかった筈だ。
乱菊は冬獅郎をじっと見つめた。
「私が守ります」
「・・・必要ない」
「守ります」
そう言うと乱菊は冬獅郎を抱きしめた。
本当は。
本当は嬉しいのだ。
氷輪丸が暴走するとき、冬獅郎の躯の中でずっと自分のものではない鼓動が脈打つのを感じるのだ。
その音が響いている一昼夜は気を乱され、内から溢れだす様な大きな力に支配されそうになる。
この手が、この腕が、この躯が、人のものでは無くなっていく様で、正気を保つ事すら辛い時があるのだ。
しかし乱菊はそんな自分すらも厭わずに抱きしめてくれる。
「本当に、いいのか?」
「もちろん」
「じゃあ・・・頼む」
「はい」
冬獅郎は溢れてくる熱いものを目を閉じる事で抑えると、自分を抱きしめてくれる柔らかい躯にそっと腕をまわした。
<Fin>
あとがき
タイトルは、冬獅郎のキャラソンから。
まさにそのままで、この歌を聴いたときにずぎゅーんと胸打たれてしまって。
取り憑かれたように、この話を書き上げました。
後半の絞り出すような叫びと、最後の零れ落ちた様な「抱きしめてくれ」で、もう~~~~~~~。![]()
いやぁ朴さん最高ですね。
歌詞を見ると・・・「あいつ」って普通に考えたら雛森なのかもしれないけど、私には乱菊にしか思えなくて。
間違ったって、誰かを傷つけたって、暴走したって、
「狂い出すオレを抱きしめてくれ」るのは乱菊しかいないと思うんですよ。
だからこの歌の「確かな光」は乱菊なんです。
私の中では、ね。
でも日乱と言い切るほど、CP重視ではないですね。
どっちかといえば、まだ未熟な隊長と大人で隊長思いの副隊長のお話です。
まぁ読まれた方がどう感じるかというのもあるので、ヘッダーには敢えて登場人物とCPの両方を記載しました。
タイトルはもうちょっと捻ろうかとも思ったんですが、この曲を聴いて、この曲のイメージで作った話なので、あえてそのままに。
もしかしたら、ある日突然変わっているかも。(苦笑)