BLEACH二次創作小説 No.13 『衝動』  CP:日乱
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二週間の遠征が終わった。
思ったより早く方がついたのは良いことだが、日番谷冬獅郎の表情は冴えない。
予定より早くの帰還・・・。
十番隊舎の執務室前で冬獅郎は大きく息を吸い込むと、目を伏せたまま戸をガラリと開けた。
「隊長!?おかえりなさ~~~~い♪」
顔を上げるよりも先に、松本乱菊からいつもの抱きつき攻撃をくらう。
柔らかでありながら弾力のあるそれを頬で受けるのは男である限り嬉しくはあるのだが、いかんせん子供扱いの最たるものであるのが冬獅郎の気に障る。
「やめろ!」
腕で乱菊を引き離す。
「今回も早かったんですねぇ」
「あぁ隊の皆が頑張ってくれたからな」
「そんなこと言って、また隊長が頑張りすぎちゃったんじゃないですか?三席がいつも愚痴ってますよ」
未だ成長中の冬獅郎は訓練であろうと実戦であろうと常に先頭で戦う。
その分部下の隊員達を育てるということには関心を持たなかった。
「そんなこたぁねぇが・・・」
冬獅郎はようやく室内の異変に気付いた。
「あれ?」
いつも予定より早く戻ると、執務室は乱菊によってぐちゃぐちゃに散らかっているのが常であった。
それを見るたび疲れが倍増するのだが、冬獅郎もさすがに慣れたもので入室前に呼吸を整える癖がついた。
しかし、今日は異なっていた。
部屋は綺麗に片付いている。
あろうことか冬獅郎の机には花まで飾ってあるではないか。
「松本・・・」
「ハイ?」
「熱でもあるのか?」
冬獅郎が気味悪そうに乱菊を見る。
「は?何言ってるんですか?」
乱菊は明るく笑い、冬獅郎に遠征報告用の書類を手渡す。
「じゃあ私はお茶でも淹れてきますね」
そういって背を向けた乱菊を冬獅郎は呼び止めた。
「松本」
「ハイ?」
「ありがとう」
乱菊は素直な冬獅郎の感謝の言葉と笑みに一瞬戸惑ったものの、綺麗な笑みで返事を返した。


給湯室。
お湯を沸かしながら、乱菊は未だ戸惑っていた。
(隊長が・・・)
なんだかまた一回り大きくなったようだった。
このところ一仕事終える度にどんどん成長しているような気がする。
自分から抱きついたのに、ドキッとした。
もしかしたらもうあんな風に抱きつくことはできないかもしれない。
あの「ありがとう」の顔。
(どうしろって言うのよ、もう!)
湯はとうに沸いていたが、乱菊はまだ動けなかった。


一方、冬獅郎もまだ動揺していた。
二週間ぶりに会った乱菊、そしてその美しい笑顔に胸を射抜かれていた。
(マズイよなぁ)
冬獅郎はため息をつく。
こんな感情、隊務の邪魔にしかならないのは判っている。
しかし乱菊を他隊へ手放す気にもなれない。
では、どうするべきか。
・・・いっそ手を出してしまうか。
否、それはできない。
他に想い人がいる女に手を出すべきではない。
そんな当たり前のことは判っているのだ。
この想いに蓋をして深く沈めてしまえばいい。
自分が諦めれば・・・。
冬獅郎は無意識に書き進めていた報告書を見つめた。
字が僅かに乱れている。
苦しい。
・・・それが恋なのかもしれない。


「隊長~、お待たせしました」
給湯室での戸惑いなど微塵も見せずに乱菊が現れた。
「報告書は終わりましたか?・・・じゃあこちらで」
とソファ側のテーブルを示す。
「うん」
冬獅郎は素直に席を立つとソファへ移動した。
向かい合うのは照れ臭く、二人はなんとなしにソファへ並んで腰を下ろした。
湯気の立つお茶と茶菓子を手際良く並べていく乱菊。
その白い手を冬獅郎は見つめていた。
ふと、手が出た。
無意識だった。
冬獅郎の手は乱菊の手を掴まえていた。
「隊長?」
目が合うと冬獅郎は混乱した。
何かを考えているようで、考えられない。
ぐちゃぐちゃになった思考を彼は手放すことにした。
あとは衝動のままに。
乱菊の手を引き身体を引き寄せると、噛み付くように口付けた。
柔らかい唇を楽しみ、歯列を舐め上げ、戸惑う乱菊の歯を舌でこじ開け、奥に隠れている舌を絡め取る。
息つく間もなく貪るような口付けが続いた。
ようやく離れた頃には二人とも息が弾んでいた。
冬獅郎は強く乱菊を抱きしめると、
「すまん」
小さな声で謝った。
つい先程、想いを深く沈めることにした決意はどこに行ってしまったのか。
冬獅郎は自分の自制心の無さを恥じた。
しかし、この抱きしめていると感じる心地よさは何なのだろう。
合わせた頬の温かさか、顔を埋めた首筋の柔らかな肌触りか、抱きしめると意外に細いその肩の感触か、鼻先をくすぐるその淡く光る長い髪の香りか。


「謝らないで下さい」
乱菊はちょっと淋しそうに笑う。
「しかし・・・」
「いいんです。隊長になら」
(隊長になら、何を捧げてもいいんです)
乱菊も冬獅郎の背に腕を絡めた。
「でもお前は・・・」
「いいんです」
冬獅郎がギンのことを気にしているのは乱菊にも判っている。
でもそれはどうしようもないことだ。
自分でもどうしたらいいのか判らないのに、冬獅郎に言葉で説明するなんてことは到底出来そうもない。
ふと見ると冬獅郎の目はまだ問うているようだった。
乱菊は自分から唇を合わせることで、その問いを封じた。
何度も、何度も触れては離れる口付けは妙にこそばゆく、二人は笑顔になった。


「お茶、冷めちゃいますよ」
こういう時の切り替えは圧倒的に女の方が早い。
乱菊はまるで何も無かったかのように冬獅郎に茶を勧める。
「・・・おう」
冬獅郎はまだ少し照れ臭そうに茶を受け取る。
その時ふと視界の隅、今まで死角になっていた場所に積みあがっているものが見えた。
「松本、それは何だ?」
冬獅郎は茶を飲みながら、それを指差す。
「あっあの・・・」
「何だ?」
「えーーーと・・・ちょっと、ここのところ仕事が手につかなかったので・・・部屋の掃除とかしてたら・・・」
それで部屋が綺麗だったのかと冬獅郎は納得した。
「ちょっと夢中になっちゃって・・・」
「で?」
「書類仕事が溜まっちゃいました」
えへ?と首をかしげて笑う乱菊。
「!?・・・まさかあれ全部・・・・・」
「・・・・ハイ」
「松本ぉーーーーーーーーー!!」
暖かい昼下がり、いつもの怒声が十番隊隊舎に響き渡ったのであった。


<Fin>









あとがき


もえきちさんリクエストの日乱、書きあがりました♪
喜んでいただけるかな?
ラブラブ度高めで頑張りましたよ!(笑)


BLEACHアニメDVDのおまけCDで乱菊が執務室をゴミ溜めにしてたエピソードが衝撃的で。
個人的にはそれが嫌だったんで例外バージョンを書きました。
アニメの乱菊ってギャグっぽく使われるときの違和感が大きいんですよねー。
先日までの斬魄刀篇でも灰猫におばさんて言われてたのがすっごく嫌でした。(怒)


逆に冬獅郎はアニメの方も大好きです。朴さん最高♪
時々エドか!?ってツッコミたくなるけど。(爆)
(ハガレンも好きです。大佐&リザとエドが好き♪)


・・・あ、突然次の日乱ネタを思いつきました。

うまく書けたら2~3作後にupできるかもしれません。頑張ろうっと♪