BLEACH二次創作小説 No.11 『妬情』(とじょう) 登場人物:ギン、白哉
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乱菊と一緒に真央霊術院に入って1年。
『まだ』、1年のはずだったのに、気が付けばギンは既に死神になっていた。
桜の花はまだ咲くかどうかという季節。
市丸ギンは護廷十三隊五番隊第三席という地位に突如就く事となった。
1年前、真央霊術院に入った頃とほぼ変わりない幼い容姿のままである。
いきなり三席という地位には、当初隊長である平子真子も難色を示したが、副隊長である藍染惣右介と当の三席が強く希望した為、しぶしぶとではあるもののその地位をギンに与えた。
ちなみにギンにその地位を譲ることになった三席は、その後古傷が悪化したとかで除隊扱いとなっている。
ギンはまわりの嫉妬を一身に浴びる形になったが、何処で誰に何を言われようと常にニコニコと笑みを崩さなかったため、そのうちに誰も何も言わなくなった。
ギンの隣には常に副隊長藍染の姿があったというのも、ギンが直接虐められずにすんだ理由の一つかもしれない。
藍染はギンを三席に推した経緯もあって、隊務はもとより様々なことをギンに教え、ギンはそれをどんどん吸収し、幼き姿なれども三席としての職務を全うしていった。
ある日ギンは出会う。
藍染と共に隊長室へと赴いたときのことだ。
ちょうど部屋から出てきた者を間近で見る形になった。
六番隊隊長の朽木銀嶺と、その孫でつい先日同隊副隊長に就任したばかりの朽木白哉であった。
藍染に教え込まれた礼をきちんと執りつつ、ギンはこっそりと白哉を眺める。
(これが・・・)
初めてこんな近くで見た。
綺麗な若者だった。
頭を下げた時に見えた白い手の滑らかなこと。
思わず自分の筋張った手と見比べずにはいられなかった。
似たような歳だろうに、どれだけ違う暮らしをしてきたのだろう。
ギンは無性に苛立った。
それはギンが初めて持つ『嫉み』という感情だった。
白哉の方もその邂逅は記憶に残るものだった。
副隊長の肩書きを得て、隊長である祖父の後ろを歩いてはいても彼にはまだ何の実績もない。
朽木家の跡取り、ただそれだけの理由でいきなり副隊長として入隊したのだ。
もちろんその能力が他に引けをとるとは思わないが、真央霊術院を1年で卒業し突如三席に就いた流魂街出身の少年の話は白哉に焦燥感を持たせた。
しかも祖父が他隊の隊長と冗談交じりではあったものの、その少年について語っているのを聞いてしまった。
「そんなに優秀な者なら我が六番隊に欲しかったよ。・・・しかし我が隊にはそのうち白哉が入るからそうもいかんか」
自分がその少年にもし負けるようなことがあれば、隊長を引き継げなくなるからか。
自分よりも・・・その少年の方が優秀なのか、と白哉は妙な詮索をしてしまい、一人傷ついていた。
そして今、初めて近くで見たその少年・市丸ギン。
痩せぎすな身体に合わない死覇装を纏い、不思議な笑みを浮かべ、素直に頭を下げてはいたものの、その表情の奥でキラリと目が光ったような気がした。
彼の笑みは彼の自信を表し、白哉に対する嘲笑のように思えた。
(市丸ギン・・・負けぬ)
白哉は心の内でそう決めた。
数年が経ち、ギンは副隊長に昇進した。
背も伸び、少年の域を脱した今となっては、もう誰も文句をつける者はいない。
ましてや三席のときの実績は、彼の副隊長への昇進を誰もが認めるほどのものであった。
ギンは、定例隊首会へ出る五番隊隊長・藍染の供をし、初めて副隊長たちが待機する二番側臣室へと入室した。
先客は一人。
朽木白哉が静かにそこへ座していた。
「あらぁ、お一人ですか?六番隊副隊長さん」
白哉はちらりと目線を向けるも、返答はしない。
「ボク、今度五番隊副隊長になった市丸ギンですわ。どうぞよろしゅうに」
「・・・朽木白哉だ」
きちんと名乗りを上げ挨拶されては返さぬわけにはいかない。
白哉は最低限の言葉を返した。
「知っとるよ。えらい有名人やさかい」
返事が無事返ってきたことにほっとしたのか、ギンの口調が砕けた。
「それは・・・兄の方であろう」
「ボク?ボクは有名人とちゃうよ。単なる流魂街出身の一死神や」
「しかし既に副隊長にまで・・・」
「それはたまたま藍染隊長に目ぇかけてもろたからや。実力とちゃう」
白哉は意外に思った。
自信たっぷりに見える市丸ギンが、自分の事をあまり高く評価していないということに。
そのとき他の副隊長たちが入ってきたので、二人の会話は終わった。
ギンは新たに入ってきた副隊長たちにも笑顔で就任報告を行う。
相手が笑顔でも、無表情でも、侮蔑顔でも。
白哉には市丸ギンという人物は理解できそうになかった。
それから数十年が過ぎ、白哉は祖父の引退と共に六番隊隊長に就任した。
しばらく前から隊長業務の大半を白哉が代行していたため特に大きな変化はなかった。
せいぜい隊首羽織を着用するようになったくらいだ。
白哉が隊長になってすぐ、ギンも三番隊隊長に就任した。
不思議な縁であった。
ギンが初めて隊首会へ出席する日、偶然にもその道すがら二人は出会った。
「またキミの後やね。六番隊長さん」
答える言葉が見つからず、無言になる白哉。
「あれぇ聞いとりまへんの?ボク、三番隊の隊長になったんよ」
「・・・存じている」
ギンはニタリと笑う。
「てっきり養子に取りはった妹さんの事で頭いっぱいかと思たわ」
白哉はギロリとギンを睨む。
「兄には関係のない事だ」
ギンは白哉の切り捨てるような冷たい口調にも躊躇しない。
「キミ、まだ若いのに大変やね。嫁はんもろうて亡くなったら養子て。お貴族サマの家っちゅうのは・・・」
「貴殿に気にかけてもらう必要はない」
白哉の怒りがギンの言葉を奪い取った。
「かわいそ」
ギンはひどく意地悪な顔で哂う。
「市丸・・・」
「ほな、ボク先に行くわ」
そう言うとギンはひらひらと手を振り、白哉の殺気をかわすようにスッと姿を消した。
一人残された白哉は考える。
(可哀想)
誰が。
緋真が?ルキアが?・・・・・・自分が?
その日以来、姿を見かける度ギンは白哉に話しかけてくるようになった。
内容はどうでもいいような世間話が多く、白哉はいつも適当な返事をしながらつい考えてしまう。
可哀想なのは誰なのか。
未だ答えは闇の中だ。
銀色の悪魔の囁きは、耳をついて離れそうもない。
<fin>
あとがき
というわけで初の朽木白哉サマのご出陣でした。
今まで出したことのない人を書こうと思って、人選した結果、白哉になったんですけど。
理由はまぁギンと絡ませやすいからかも。(笑)
年齢が近いっていうのは過去篇で出てきてたし、隊長になったタイミングも近かったから、なんとなく同じようなタイミングで昇進してきたんだろうなぁって思って書きました。
白哉はギンより先に昇進したいだろうし、ギンはそんなことは全く気にしないけど、似たような年齢で全く違う生き方をしてきた白哉という存在は気になるだろうし、苛めたいだろうなぁと。(笑)
この話、書くのに時間がかかりました。
っていうか打ち込むのも時間がかかる。
なんでかなぁ?って思ったら、会話が少なすぎ。
文章詰まって黒いもん。
もっと軽いのがいいなぁ・・・。
ちなみに私の小説は、小説のようで小説ではないと自分では思っています。
映像を文字に起こしているような感じなので、セリフと状況説明と人物の動き、内心を書いているだけなので・・・脚本に近いのかなぁ。
文学的な小説に近づくには脳みそも文章力も知識も足りなすぎのようです。(涙)
愚痴はさておき、今、困っています。
この話、まだタイトル決めてないんですよね・・・・。
何にしよう。
(考え中)
・・・『妬情』(とじょう)にしました。嫉妬する心です。
ギンも白哉も嫉妬とは縁遠い感じがするけど、二人の間にだけはあるんじゃないかと思うんですよ。