BLEACH二次創作小説 No.7 『銀色の道』 CP:ギン←イヅ 僅かにBL
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絶望の日。
高みを目指していたはずの僕は、今日奈落へ堕ちた。
こんなはずではなかった。
こんなはずは・・・。
僕のいる場所は、ここであるはずがない。
「吉良・・・四番隊だって?」
でかい身体にでかい声、人目を引く尖った赤い髪に、日々増えていく濃い刺青。
阿散井恋次だ。
卑屈になりたくはないが、十一番隊で揉まれ着々と強くなっていく同期には一番知られたくなかった。
なるべく笑顔で。
「あぁ、そうなんだよ」
なんでもないことのように。
笑って、やりすごせ。
だが、そんな真意を察せる恋次ではない。
「・・・大丈夫か?」
かちんときた。
「な・・・にが!?悪かったな四番隊で!・・・もう放っておいてくれよ!!」
思わず声を荒げ、言い捨てて立ち去る吉良。
その後姿に声をかけられない恋次。
(ああもう!)
ぶつけようのない心の声は、吉良の胃に鈍い痛みを残す以外に行き場はなかった。
数ヶ月が過ぎた。
吉良は四番隊では微妙な立場にいた。
治癒能力は文句なし。
元々鬼道は得意であったし、霊力も高く、器用な性質なのが功を奏した。
しかしその性格は負けず嫌い。
四番隊とウマが合うはずもなく、一人陰で延々と剣を振っていたり、他隊へ出稽古へ向かう吉良は、ただひたすらに浮いていた。
「僕は・・・僕は四番隊で終わるような人間ではなーーーーい!!」
その日も人気のない林の中で素振りを続けていた。
気合と奮起の念がこもったその言葉は、ついついでてきてしまう。
しかし。
「ほな、ウチの隊にくる?」
返事があったのは初めてだ。
「誰だ!?」
気配も霊圧も感じられなかった。誰もいないはずなのに。
慌てて吉良は辺りを見回す。
風でひらりと白いものが動いた。
目を向けるとそこには白い隊首羽織を纏った人物がいた。
「あなたは・・・市丸隊長!」
三番隊の隊長、市丸ギンがいた。
たった1年で真央霊術院を卒業し、いきなり五番隊第三席に就任、副隊長を経てあっさり三番隊の隊長になった伝説的な人だ。
その人が、ひらひらと手を振り笑顔で告げる。
「元五番隊の・・・吉良くんやったよなぁ?」
「ハ・・・ハイ!」
学生の頃、目の前で見たその異様なまでの強さにずうっと憧れ続けた。その元五番隊副隊長を前にし、吉良は緊張した。
(自分を知っていてくれた)
一隊員でしかなかった自分を知っていてくれた、それだけでも嬉しくてたまらない。
「キミ、今四番隊なん?」
「・・・はい」
「なんで?キミ別に弱ないやん?」
「・・・五番隊に在籍していときに虚討伐があって、討伐自体は何も問題なかったんですが終わった後に・・・足が震えてしまって」
嫌な記憶を思い出さねばならなかった。
己の弱さを憧れの人に告げねばならないのが、ひどく情けなかった。
思わず俯いてしまう。
「そんだけ?」
ギンはずっと笑っている。
笑ったまま、俯いている吉良の背中をぱあんと叩いた。
「ほな、ウチの隊においで」
「!?」
「・・・嫌ならしゃあないけど」
と、しょぼくれる真似をするギン。
「いっ嫌じゃありませんっっっ!!」
慌てて言う吉良を見て、ギンはにぃっと笑った。
「でも何でこんな・・・情けない僕なんか・・・」
「何言うとんのや。怖いゆうんは弱さやないで」
「え?」
「死ぬんが怖ない奴はすぐに死ぬ。恐れを知らん奴はただ無謀なだけや」
ギンは吉良の頭にぽんと右手を乗せ、顔を覗き込む。
近づいてくるギンの瞳に射竦められ固まる吉良。
「キミはちゃうやろ?死ぬんが怖ぁて、ちゃんと恐れを知っとる。しかも虚はちゃあんと倒しとる」
息が。
「・・・ボクは好きやで」
顔と顔が接しそうな近さでそう言われ、思わず吉良は息を呑んだ。
「・・・そーゆーコ」
そのまま口付けられるのかと思うほど近づいたギンの薄い唇は、吉良の長い前髪を掠め遠のいていった。
安堵するよりも・・・・・残念に思った。
(僕は何を!?)
焦ってますます赤くなる顔を必死に隠そうとする吉良。
そんな様子を意地の悪い笑みを浮かべ、横目で盗み見ているギン。
殊更何もなかったかのような明るい声で言う。
「ほなキミを何席に迎えるか決めなあかんし、このまま三番隊まで来てもろうてもえぇかな?」
「もっ、もちろんです!」
「よろしくな、吉良くん」
「ハイ!!こちらこそよろしくお願い致します!市丸隊長!!」
すると急にギンは悩みだした。
「吉良・・・吉良って言いにくいわ」
「は?」
「ボクの隊に入るんやから呼び捨てにしたろと思たんやけど、吉良って呼びづらいわ」
「はぁ」
そんな事を言われても、である。
「・・・キミ、下の名は?」
「イヅルです」
「イヅル」
どきんとした。
「・・・えぇやないの。それでいこ」
名を呼ばれたその声に、心臓を鷲掴みされたかのようだ。
ギンはそんな吉良の様子には気付かず、練習するかのように連呼する。
「イヅル・・・イヅルかぁ、えぇ名やな。気に入ったわ」
ニタリと妖しく哂う隊長は、実は吉良の様子など見抜いているのかもしれない。
「イヅル、ついておいで」
「はい」
吉良は気付かない。
魅入られてしまった者には、その毒はまるで魅惑の薬。
憧れと尊敬と高鳴る鼓動を胸にし、吉良が見つめるはただ【三】と書かれたその人の背中。
周到に絡め取られた己に気付くことはなかった。
◇◆◇
時が経ち、気付けば吉良は三番隊副隊長に就任していた。
三番隊に来てからは何事も順調に進んだ。
書類仕事を好まぬ隊長に代わりそれらの仕事は増えたが、隊長を中心にまとまった三番隊は着々と実力をつけ、護廷十三隊にとってなくてはならない実戦部隊となっている。
個人的にも同期では五番隊の雛森に続き、早くも副隊長へ出世できたことで自尊心は傷つかずにすんだ。
何よりも憧れの人の副官に就けたことが何よりも嬉しく、誇りであった。
間近で見ていても隊長の市丸の強さは桁違いで、この人の傍にいれば大丈夫という安心感が、あっという間にこの人の為に何かをしたい・しなければという気持ちになった。
時折見せる意地の悪い所や得体の知れぬ部分もあったが、そこがまた人として器の大きさを感じさせ、さらに尊敬の念を増した。
「イヅル、行くで」
「はい」
今日もこの人の背についていく。
この場所を人に譲る気はない。
◇◆◇
五番隊、四番隊、三番隊とまるでカウントダウンのように移隊してきた僕だが、その先はもうない。
この隊で、市丸隊長の下で僕は終わる。
横を歩きたいと思ったことはない。
この人の背中を見据えるこの位置こそが、僕の居場所。
僕の
僕だけの 銀色の道。
<Fin>
あとがき
これをギンイヅというべきか。
私にはこれが精一杯なギンイヅです。正しくはギン←イヅ。
私の中ではまだイヅルが固まっていません。
だって原作のイヅルは根暗なヤツだし、ブリミュのイヅルは隊長命で変なヤツだし(笑)、アニメのイヅルは強くて・・・なんだかかわいい。
ウチのイヅルは・・・ブリミュのイヅルが一番近い気がします。
ギンちゃんはうまいことその気持ちを利用してる感じ。
イヅルが四番隊にいたっていうのも、さらに深く取り込むための罠かな~って思ってます。
しかし、この終わり・・・まさにブリミュの「もうひとつの地上」から来てるんですが・・・・イヅルかわいそうすぎる。
銀色の道・・・どうなるんだろうねぇ。。。
三番隊も復活して欲しいな~。イヅルの感涙が見たいな~。