BLEACH二次創作小説 No.4 『隊長のお仕事』 登場人物:冬獅郎、乱菊、イヅル、ギン
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その日は朝から綺麗な青空。
時折、窓の外を恨めしげに睨みながら、乱菊はしぶしぶ書類仕事を続けていた。
もちろん横の机では隊長である日番谷も淡々と仕事を片付けている。
(昨日は飲みすぎたかも・・・)
乱菊は、ひとつ大きなため息をつくと、ぼうっと意識をとばしそうになる。
「松本」
即、声がかかる。
「ハイッ!」
「さぼんな」
顔も見ずに言う。
「・・・はーーーい」
今日はずっとこの繰り返しである。
その時廊下から声がかかった。
「三番隊副隊長吉良です。松本副隊長はご在室でしょうか?」
「いるわよ~」
「失礼します」
ドアを開けて入ってきた吉良は、日番谷に一礼すると乱菊に向き直った。
「なに?」
なにやら戸惑っている吉良に乱菊から声をかける。
「あのー・・・市丸隊長を見ませんでしたか?」
「ギン・・・じゃなくて、市丸隊長?知らないけど」
何しろ今日は執務室に缶詰め状態だ。
「どこか行きそうな場所とかは?」
「知らない」
「・・・そうですか」
そのまま床にめり込みそうなほど落ち込んでいる吉良を見て、日番谷も声をかける。
「いねぇのか?」
「ハイ。ここ3日ほど執務室に来てくださらなくて・・・。隊長自身が決裁しなきゃいけない書類が期限ギリギリなんですよ。僕、もうどうしたらいいのか・・・」
さらに深く落ち込む吉良を見て、日番谷と乱菊は顔を合わせた。
「松本」
「ハイ」
「終わった書類の提出がてら、少し一緒に探してやれ」
「いいんですか?」
乱菊の顔に笑顔が戻った。
「とっとと見つけて、戻って、仕事の続きだ」
「・・・ハーイ」
不服そうではあるものの、気分転換になるからか乱菊は承諾することにしたらしい。
そうして乱菊と吉良が部屋から出ていった数分後、窓から風と共に入り込んできた人物がいた。
「勝手に窓開けんな!」
風で動きかけた書類を手で押さえながら、日番谷が言う。
「十番隊長さん、こんにちは」
市丸ギンである。
「今日はなんだか風がつよいわぁ」
言いながら窓を閉める。
それを横目で見ながら日番谷が告げる。
「吉良が探してたぞ」
「イヅルはボクのこと大好きやからねぇ」
「てめぇが仕事しねーからだろ。3日も執務室に行かねぇなんて職務放棄だろが」
ギンは3日?と頭をかしげてる。
「ボクがおった方が仕事にならんから行かんのに。・・・大丈夫、イヅルはようできた副隊長やからね」
これ以上問答しても埒が明かないと判断してか、日番谷は無視して仕事を続けることにした。
それをニコニコと笑いながらギンが見ている。
それが気に障り。
「用がねぇならとっとと出ていけ!」
と日番谷が怒鳴る。
ひどいっとしなを作っても日番谷が見てくれないので、おとなしくギンはここへきた用件を告げた。
「用ちゅうか・・・最近十番隊、仕事しすぎやない?」
「あーどっかの隊が仕事しねぇからなぁ」
「あいた。こら一本取られたわ・・・ってそういう事やなくて」
「なんだ?」
「乱菊にあんま負担かけんといて」
思わずムッとした日番谷。
「松本はウチの副隊長だ」
「だからこうして隊長さんに頼んでるんやん」
「何でお前が」
ギンは遠くを見てちょっと笑う。
「乱菊なぁ、無理すると酒量が増えんねん。ここんとこちょお酷いようやし」
「松本が?」
日番谷はハッとする。
そういえば今日は特に元気が無さそうだった。単純に仕事が嫌でモタモタ作業してるのかと思っていたが。
しかし。
「アイツ、俺の三分の一も仕事してねぇぞ?」
ぶ!と吹き出すギン。
「そら十番隊長はんと一緒にされちゃかなわんがな。ボクも乱菊も書類仕事は性に合わんねん」
果たしてそんな理由がまかり通るのであろうか。
日番谷は首をかしげる。
だから乱菊はウチの隊の副隊長にはできんねん、とギンは笑いながら言う。
そうでなかったら自分の手元に置くという意味か。
「知るか」
著しく機嫌を害した日番谷は、ギンを無視して仕事に戻ることにした。
その時急にギンは霊圧・気配を一切消し、日番谷の背後にしゃがみこんだ。
「市丸隊長!」
バンと勢いよくドアが開いた。
「・・・あれ?」
「どうした吉良?」
背後をわずかに気にしながら、日番谷が声をかける。
「申し訳ありませんっ!・・・今ここに市丸隊長の霊圧を感じたのですが・・・」
「・・・外じゃねぇのか?」
と手にした筆で窓の外を指す。
「外・・・?」
「松本はどうした?」
「はぁ。別々に探した方がはかどるからと街の方へ行かれました」
「逃げたな・・・」
日番谷の後ろではギンが両手で口を押さえ、吹き出すのを必死でこらえていた。
そんなことを全く知らない吉良は、日番谷の額の青筋を見て慌てて言う。
「あっでっでもっ、松本さんに言われて、一応三番隊の執務室に戻ってみたら、急ぎの書類は全て片付いていたんです」
「え?」
「僕がいなかったのって少しの間だったんですけど、その間に隊長がやっといてくれたみたいで」
「・・・ふうん」
「あのっお騒がせしました。・・・でもあのうちの隊長を見かけましたら、執務室へ来るよう伝えて下さい」
「終わってたんじゃないのか?」
「・・・今日期限のものだけだったので」
「わかった」
日番谷は不憫な吉良にそれしか言えなかった。
「では失礼します」
吉良は頭を下げ、部屋から出て行った。
「なんでボクがいることイヅルに教えんかったの?」
「別に理由はねぇ」
断じて自分が気付いてなかった乱菊の状態を教えてもらったからではない。と、日番谷は思った。
思いたかった、が正しいかもしれない。
「ま、ええわ。じゃあボクはこれでお暇するわ」
ガラリと窓を開けるギン。
書類が舞った。
「だから急に窓開けんじゃねぇ!!」
窓から出て行った男と、窓から入ってきた風に、今日の日番谷の仕事はとことん邪魔されたのであった。
< Fin >
あとがき
短編です。
仕事をしないと噂のギンちゃんですが、本当は書類仕事だってガンガンに出来るんだよ、出来るけどしないだけなんだよぅってことを伝えたくて書いた話です。
あとイヅルに押し付けているようで、無理させすぎないように仕事量は絶妙に加減してるってところも書きたかったんですが、ギンイヅよりギン乱にしたくてその辺は割愛しました。
でも乱菊に対して過保護すぎるなぁ・・・きっと乱菊が入隊したばかりの頃にこれやって、乱菊に怒られたんだろうな。
きっとそれからはこっそり見守ってるんだけど、今回はひっつーに嫌がらせも兼ねて言いにきたらしい。(笑)
短編らしくほのぼのに仕上げました。![]()