都知事が「銭湯みたいな・・なんとかかんとか」と

言ったらしいが


それに反応している人も

言った都知事自身も


もしかしたら

歌舞伎座が銭湯だったことを

知らないのではないだろうか?


今の

若い人たちが

知らないのも無理はない


ずうっとずうっと

昔の話だからね


そう

歌舞伎座は

もともと銭湯だったのだ


ようく見ればわかるが

古い町の銭湯の入り口は

歌舞伎座に似ている


それは

歌舞伎座が銭湯だったので

それを伝えるために

みんなが外観を真似して

建てたからだ


歌舞伎座が

銭湯に似ているのではなく

銭湯が真似していたのだ



そして

歌舞伎を演じる役者たちは

もともと

歌舞伎湯の

常連客


つまり

全員、ずぶの素人だったのだ


かれらは

毎日、風呂に入るのが

楽しみで

歌舞伎湯に

通っていた


地元の町人達だった

まだ

歌舞伎湯のまわりに

ビルもなく


狸や狐が

ひょいと道端に

出ていた頃である


そんな歌舞伎湯の客に

一人の芝居好きの

男がいた


いつも

長唄を湯船で

歌っているのだが


これが意外と上手いので

周りの客も

いい気持ちで

聞いていたという


ある日

猿輪課長で見た芝居が

いつになく気に入った様子で


脱衣所で

真似して

見せていると


おお・・


やるねえ


みんなも

やんや、やんやと

囃すので


本人も

調子に乗って

一幕、やってのけたという


すると

翌日

男が歌舞伎湯に

入った途端


やあ、待ってたよ

あんた


昨日のアレ

またやってみせてくれよ


と催促され

ちょいと仲間をひきいれて


今度は

二人で

汗だくになって

昨日以上の大熱演


見ていた客も

大喝采


そのあとの

風呂の気持ちいいこと


そこは江戸っ子

みんなもともと芝居好き


その男がきっかけで

脱衣所で

いつのまにか

芝居をやるのが

定番になり


のんびりした昔のこと


芝居をやる時は

女湯からも

女客たちがのぞきにくる始末


そのうち

芝居目当ての

客が増えたため


亭主が

考えた


こいつあ商売に

なるんじゃねえか?


そこで

脱衣所を改装し


ざぶとん広げて

みんなが見れるように


ちょっとした

舞台を作った


演じる男達には

なにがしかの礼金をだし


猿輪課長で

やった芝居は

すぐに

歌舞伎湯で

上演できるように

演目も

毎月新しいものにした


これが

大当たり


木挽町の歌舞伎湯は

連日満員


素人役者も客も

見終わった後は

熱い湯に

入って汗を流す


新しい庶民の娯楽となったのである


それから

何十年もたち


今や歌舞伎湯は

歌舞伎座と名前を変え


銭湯はあるものの

役者だけが

入れる

内湯になってしまい


彼らが

湯に入る前に

一汗かくための

芝居が

メインになってしまった



今回の建て直しでは

再び

銭湯としての

店構えに戻すようだ


客も

役者も

一幕を見たら

一緒に風呂に入れるような

システムにして


今のような

堅苦しい雰囲気は一掃


昔ながらの

庶民的な

銭湯にするのだろう


もちろん

すべてが一幕見なので


待つ場所も

銭湯の中に広く作られ


料金も

ぐっと安く

1000円均一と

なるようだ


女性の役者も復活し

女剣劇や

若衆の踊りなども

見れるようになるという


やはり

江戸ッ子は

こうじゃなくっちゃ

いけねえや


棒手振りの兄ちゃんが

つぶやいた



伊達な上屋敷

注)

現在、歌舞伎湯という銭湯が小石川にありますが

文中の歌舞伎湯とは全く関係がありません


街中ののんびりした銭湯なので

小石川植物園の満開の梅を

楽しんだ帰りに

冷えた体を温めるのに

丁度よいですよ


ただし、銭湯のマナーは

守りましょう