地震発生から三日目のこと
その日私は食料を探すついでに被害状況を見るために港の近くまで出かけた
被害は甚大だった
船は全て陸に上がり、散乱していた
ヘドロが地面を覆い隠し、辺りには異臭が漂っていた
それから少し内陸へ向かい、商店が立ち並ぶ場所へ向かった
ちょうど日が暮れかかっていた
スーパーに向かったのだが、そこもひどかった
辺りには波に流された車や船があちらこちらに点在しており、スーパーの駐車場にはガラスが散乱していて、とても営業どころの騒ぎではなかった
しかしその時店の入口にちらちらと動く光と人影が見えた
私は店員かと思って声をかけた
「おい、なにをやってるんだ」
そいつはマスクをしていた
そいつはこちらを獲物のように睨み付けた
少々不味いな、と私は思った
その瞬間
そいつは地面に落ちていたガラス片でこちらを切りつけてきた
すんでのところで後ろに下がり、回避する
状況はあきらかに不味かった
ジリジリと後ろに下がり、ジリジリと追い詰められていく
相手を注意しながら周りを観察する
目に入ってきたのはショッピングカートと潰されて重なった段ボールと地面に落ちたガラス片
後ろに下がりショッピングカートに近づいた
行動を起こすのは今だった
ショッピングカートを相手に投げつけ、不意をつく
次にガラス片を広い、段ボールに近づいた
段ボールを止めていたテープを切り、カートごと段ボールをひっくり返した
後はひたすら走り、横転した車の影に隠れた
影からあちらを覗いた
どうやら見失ったようだった
おそらく元々人に危害を加えるつもりではなかったのだろう
漁った商品をいれたレジ袋を持って帰っていった
帰っていった後も心臓の鼓動は収まらなかった
車の影で一服し、ようやく影から這いずり出た
相変わらずひどい有り様だった
一つ深呼吸をしたらヘドロの臭いでむせ帰った
その日はなんの収穫もなく帰った
……あの人の行為は許されるものでは無い
が、それでもその行為は正しいのかもしれない
生きるか死ぬかなら生きるを選ぶ
生きるためにはどんなことだって許されるときもある
所詮それは所謂道徳という概念を無に帰しているのだ
道徳の限界
所詮綺麗事なのである
生きるためには許されなければいけない
それが生きるということ
誰も責められない
誰だって赦す
生きるためだから