オイラには、大切な家族がいた。  犬なんだけど、白地に黒の斑の「雑種」。


 そいつは2000年の8月1日に生まれた。


 その犬をくれた夫婦は、園芸を生業にして、質素に暮らしていた。


 毎日を花や木、土と一緒に楽しそうに前向きに生きていた。




 その犬ともとある「事情」で、離れて暮らすことになった。


 それ以来、その犬を譲ってくれた夫婦には「不義理」をしていた。なかなか会いに行くことがはばかられていた。





 気にはしていた。




 そんな毎日を送っていた昨日、夜に留守電にメッセージが入っていたのに気がついた。


 その婦人からのメッセージだった。




 いつもはあんなに人生が楽しそうだったのに、オイラがたまーに遊びに行くと、「おぉー息子が来たー!」とものすごく喜んでくれた。たくさんの花や苗木をくれた。




 だが、昨日の婦人の声は消え入りそうに小さく、沈み込んでいた。


 そして、人生に疲れたような、あきらめたような、まるで「お別れの意志」のようなものが漂うように、途中で声はとぎれて・・・そして電話は切れた。





 ものすごく不安な気持ちになり、すぐに車を飛ばしてその夫婦の住まいに向かった。



 誰もいない・・・。


 それどころか、その住まいは雪で覆われてしばらく人が住んでいる気配がない。



 ちなみに、向かう前に電話をしてみたが、止められているようだった。




 ただ・・・、その住まいの脇に「犬小屋」があって、一匹の犬がおびえた目をしてオイラをみつめて、そして吠えた。



 以前いただいた犬と同じ目をした犬だった。





 誰もいない、しばらく探したが誰もいない。




 もう夜だった。急いで近場のドラッグストアで、缶のドックフードとドライフード、水を4リットル買って戻った。




 犬にドッグフードを上げると、わき目もふらず必死に食らいついた。


 一缶では足りなかったらしく、二缶目とドライフードを少しあげた。




 散歩にも行ってないらしく、小屋の周りはかなり汚れていた。



 しばらく何も食べていなかったのか?そのわりにはやせ細ってはいない。




 とにかく、人の気配がない。


 昨夜は一度帰宅した。 でも、気になって仕方がなかった。




 今日、昼間に仕事を私用外出して、また行ってみた。


 やはり誰もいない・・・・。






 もう一度犬に餌と水をあげた。


 もうオイラに吠えたりしない、尻尾を振りながら懸命に鎖を引っ張り、しがみついてくる。



 近所を聞いてまわるが、誰も夫婦のことを知らない。何の情報もない。





 犬小屋の周りを雪をかけて、少しキレイに見えるようにしてやった。


 でも、何も解決していない。(オイラの中で)





 ちょくちょく行ってみよう。



 犬・・・も、気になる。



 どうにも誰もいないようなら、手紙でもおいて連れてきてしまおうか。




 このまま、毎日おなかをすかして、一人ぼっちで寂しくさせるのはかわいそうだ。



 場合によっては、管理センターに連れて行かれるかも知れない・・・・。



 



 何かいい方向に、話しが進展すればいいのだけれど。




 不意の留守電だけ、まだ何も始まってはいない・・・でいて欲しい。




 明日はどうなる?




 急なことでまだ自分で整理できていない。




 うーん。