RAIDとは、複数のハードディスクを組み合わせて、仮想的に1台のハードディスクのように利用する技術です。万一、構成しているハードディスクの1台あるいは2台が故障しても、データが保全され、仮想的なハードディスクとして動作し続けます。そして、データを保全したまま故障したハードディスクを交換すると、もとに戻すことができます。

 

RAIDには多くの種類があり、一般的に利用されるのは、RAID1、RAID5、RAID6、RAID10など。

今回のブログに出てくるのはRAID5。多くの場合4台のハードディスクで構成し、内1台が故障してもデータが保全されるシステムです。

 

RAID5の機能のあるNAS(ネットワーク接続のハードディスク)は、「ハードディスクが故障しても、データが保全されるので安心です。」というITインテグレーター会社(IT機器、サービスを提案し設置する会社)の提案を受けて、企業や官公庁にファイルサーバーとして導入されています。

 

導入当初は、ITインテグレーター会社の保守サービスがあり、NASは適切な管理が行き届いています。しかし、数年が過ぎ、保守サービス期間が終了、導入時の担当者も人事異動などで転勤してしまい、NASの管理者不在になると、どこにNASがあるのかさえも誰もわからない、迷子のファイルサ-バーになるという問題が発生してしまいます。

 

順調に稼働している時には、在って当たり前、空気のような存在のNAS。ネットワーク経由で接続されているので、利用者はどこに設置されているか意識することもありません。しかし、メンテナンスが行き届かず、遂にトラブルが発生すると、大変な被害をもたらします。そのNASには企業や官公庁で日々業務に必要なデータがすべて入っており、組織全体の活動が止まってしまいます。

 

そんな、RAID5のNASを10年前に導入し、ファイルサーバーとして使っていた公立小学校の事例です。

 

10年ほど前からデジタル化の教育予算がついて、校内高速ネットワーク、Wi-Fi(無線LAN)化、児童一人一人にタブレットの支給など、学校のデジタル機器が年々充実してきました。デジタルコンテンツを使った授業を進める環境も整い、コロナ禍によるリモート授業で一気にデジタル化が加速しました。

 

この公立小学校では、10年前にRAID5のNASを導入し、全校のデジタルデータを保存していました。ある日突然、このNASがアクセス不能になりました。

 

教科書として使っていたデジタルコンテンツが見れない、今からの授業ができないという切迫した問題。全校児童の出席や成績の情報、卒業アルバムの元データとなる児童が入学してから今までの写真などなど、貴重なデータが失われるかもしれず、学校全体が大パニックに陥りました。

 

10年前の導入担当の先生は、8年前に転勤しており、当時在校していた先生もほとんどいません。導入時のITインテグレータ会社とのメンテナンス保守契約は5年前に切れており、対応してもらえません。

 

どんな形状のNASが校内のどこに設置されているかさえ、誰も知りません。校内でIT系に詳しいのは大卒2年目の若い先生ひとり。若い先生は、いつも出入りする職員室やコンピュータ教室を探しましたが、見当たりません。そこで、書庫を探したところ導入時の書類が見つかり、設置場所と製品型番がわかりました。

 

導入されていた機器は、4ドライブのNASで、RAID5の設定がされていました。

設置場所は、なんと校長室。(見つからないはずだ。なんで校長室?)

 

どうやら10年前校内ネットワークの導入時にスイッチングハブやNASの設置場所に困ったようです。職員室にはもう設置場所がなく、比較的余裕のある校長室の片隅に設置することになりました。

 

兎に角、校長先生に事情を報告し、校長室の中を探したところ、それらしきNASを発見しました。NASの電源はついていましたが、エラーのLEDランプが点滅しています。なにかエラーが発生しているようです。

このNASは、ハードディスクの故障など重大な障害が発生すると、LEDが赤く点滅し、ブザー音で警告してくれるはずです。

 

すると、校長先生が一言

「時々ブーブーうるさいから、その度にこの機械のこのボタンを押して止めてたよ!」

って、NASの前面にあるボタンを指さしました。

 

校長先生がなんでそんなことを知っていたのでしょう?
「警告ブザー音が鳴ったらこの機械のこのボタンを押す」
 
これは、2年前に定年退職された前校長からの「申し送り」にあったそうです。過去2年の間も、何度もこのNASの警告ブザーが鳴っており、その度にボタンを押して止めていました。前校長からの申し送りなので、この機械が何なのか? この警告ブザーが何を示しているか? は全く知りませんでした。なんと、前校長の時代から何度も警告ブザーが鳴っていたのに、このNASは放置されていたのです。
 
大卒2年目の若い先生は、頭を抱えました。
 

今回は、NASの電源を入れ直しても、復活しなかったため、私が勤めるデータ復旧会社にデータ復旧の依頼がありました。

 

診断の結果は、軽度の物理障害(不良セクタ)と、中度の論理障害(RAID崩壊)。

4つのハードディスクの内2台に不良セクタが発生し、RAID5が崩壊していました。

 

不良のあるハードディスクの内1台は、なんと7年前にはエラーが発生し、RAID5から外れていました。このNASは、これ以上ハードディスクが故障したらデータを保全できないギリギリの状態で7年間稼働していました。今回ついに、別のハードディスクにも不良セクタが発生したため、データの保全ができなくなって止まってしまいました。

 

そこで、7年前に止まったハードディスクを対象外とし、残りの3台でRAID5をエミュレーションしたところ、データ復旧は成功しました。

 

この公立小学校は、どうすればこの大パニックを防げたのでしょう?

 

NASを導入した時のITインテグレーター会社の提案

 

「ハードディスクが故障しても、データが保全されるので安心です。」

には、前提条件があります。その前提条件とは

 

「適切なメンテナンスをしていれば」

です。

 

7年前にエラーが発生し、警告ブザーが鳴ったときに、故障したハードディスクを交換していれば、今回のような障害は防ぐことができました。(でも、10年経った機器はリプレースを推奨しますが・・)

 

RAID5で構成されたNASは、ハードディスクが1台故障しても、残りの3台で稼働します。稼働中に所定の手順を踏んでから、故障ハードディスクを抜き、代わりに新しいハードディスクを装着し、RAID再構築という操作を行うと、元のRAID5の状態になります。再びハードディスクが故障しても、データが保全されるので安心な状態に戻ります。

 

壊れない機械はありません。ハードディスクもいつかは壊れます。でも、RAID5を設定し、警告ブザーが鳴ってハードディスクの故障が知らされた場合、その都度、故障ハードディスクを交換し続ければ、ファイルサーバーが止まることを防ぐことができます。

 

 

さて、大卒2年目の若い先生ですが、勇気をもって校長先生に進言しました。

 

「次からは、警告ブザーが鳴ったら、お知らせください。次の校長にも「申し送り」してください。」

 
私からは、いろいろな事情はあると思いますが、校内のIT担当者を任命し、NASの設置場所をIT担当者の目の行き届く場所に変更することを推奨しました。(言い出しっぺの、大卒2年目の若い先生がIT担当者になっちゃうんだろうなぁ)ガンバレ若者。

 

 

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