おばあちゃんは馬だったのかもしれない。


保育所に通っていた頃、
毎日迎えに来るのはずっとおばあちゃん。


ほとんどの友達が
仕事帰りのお母さんやお父さんで

「〇〇く~ん!お母さんが迎えに来たよ」

と、先生の声に反応して自慢のお母さんの元に駆け寄る。


20代後半から30代といった
大人の中のオトナ。要するに
かっちょいいお父さんたち。妖艶さを兼ね備えたお母さんたち。
そんな親たちの大きな手に包まれながらも歩く友達の後ろ姿は
また一段とカッコ良くも羨ましくも憧れでもあったんスよ。


「ゆうちゃ~ん!」


コレは僕だ!間違いねぇ!はいはい僕です。
お願いだから「ゆうちゃ~ん」はヤメてくれよ。
カッコ悪いじゃんか。格好も畑仕事のまんまじゃんかょ。


ちぇっ~。


いろんな感情を隠すように下を向きながら僕はおばあちゃんに連れられて行く。

「なんだよ、なんだよ、、」


おばあちゃんが運転するいかにも
おばあちゃんが乗ります自転車にニケツして帰る。

自転車だからしっかりとつかまってないと以外に危ない。


おばあちゃんだからなっ!

体にグワシと後ろから掴むのはなんだかカッコ悪いから
畑仕事で薄汚れた白のモンペのような服の布を
しっかりを握る。


家までは自転車で3分程。
近いんだけど微妙に帰りは上り坂だから5分くらい。
おまけに僕が後ろに乗っているからもっと時間がかかる。
おまけに運転が

おばあちゃんだからなっ!


いつも、登り坂になると
「よいしょ、うんしょ、よいしょ、うんしょ・・・」
とおばあちゃんのちいさな声が聞こえる。
右へ左へ。左へ右へと自転車が傾きながらおばあちゃんが必死にこぐ。

家に着き僕はゲームをやりに走りだす。

しばらくしておばあちゃんがまた僕を呼ぶ。

「ゆうちゃ~ん、ご飯だよ」



ヤメてくれ。


こんな生活が3年は続いた。



それから10数年後。


地元に帰ると
「この道、保育所の時おばあちゃんとよく通ったなぁ」
としみじみ思い出す。

ただいまと家に入ると

おばあちゃんが
「ゆうちゃん、帰ってきたの。」

とまた例の呼び方で僕を呼ぶ。時折、

「ゆうちゃ、ゆうじぃ~」
と二十歳を越えた僕に対してちゃん付けは
悪いのかなとおばあちゃんなりの気遣いで名前で呼ぶおばあちゃん。


あんだけ嫌がっていた
おばあちゃんの「ゆうちゃ~ん」が遠くなっていく感覚は


なんともいえない。



次はいつ聞けるだろうか。







データ石浜