子供の受験等でバタバタして放置していましたが、久しぶりに投稿してみようと思いました。
子供が受験生なので、親父が遊んでいると家庭内で無言の圧力もかかりますから自粛していました。
今春からイベントへ足を運んだりといった行動を再開しましたので、こちらのブログもぼちぼち更新していきたいと思っています。以前、書きかけだったものを編集してとりあえずの投稿です。
個人的な話ですが、父の付合いの関係や嗜好から我が家ではボルボばかりを乗り継いでいました。
1984年頃だったか、ボルボ244がやってきたのが始まりだったと記憶しています。
それ以降、約30年間にわたり760、960、S90、S40と計5台のボルボが我が家の足として導入されました。
ボルボと言えばステーションワゴンというイメージがありますが、我が家にあったのは全てセダンでした。メーカーや輸入元のイメージ戦略から”ちょっとおしゃれなワゴン”というイメージだったワゴンに比べて、野暮ったい4ドアセダンというのが私の印象でした。
今回ご紹介する試乗記は、ボルボPV544です。
記事は1961年(昭和36年)の雑誌記事からの抜粋ですが、アメリカ車ではテールフィンブームが去りすっきりしたデザインが主流となってきています。しかしボルボは、独立フェンダーからフラッシュサイドボディへの移行する頃(1940年代)のアメリカの車のようなスタイリングです。
やはり、時流から遅れた野暮ったいデザインというのは、昔からボルボの伝統なのでしょうか。
最近のボルボは、野暮ったさがなくなりましたが…。
~紹介記事
この一見1941年フォードを小さくしたような旧式なセダンが、MGAに殆ど匹敵するマキシマムと加速性を持つ高性能車だとは到底信じられないくらいであるが事実なのである。乗用車を見れば、その国の道路、交通条件と、その国民の車の使いっぷりがおよそ判断できるが、スウェーデンの代表的なファミリーサルーンであるこのボルボPV544から想像されるその背景は、広い、空いた高速道路(必ずしも良い路面とは限らない)と、高速の長距離旅行を好むヴァイキングの子孫たちである。
ボルボは機構的には概してオーソドックスで、特に目覚ましい技術的特徴はないといってよい。
しかしSKFのベアリングやハッセルブラッドのカメラで名高い精密工業国の製品の例にもれず、このボルボを支えるものは堅実なデザインと優れた工作技術、それに何よりも良質の鋼である。
PV544のボディは、1930年代末にドイツ辺りで盛んに流行したいわゆるTear-Drop(水滴型)で、全溶接の、完全な防錆処理の施されたものコック構造である、ホイールベースと全長ではトヨペット・クラウンよりやや長いが、幅は逆に135㎜も細く、高さもわずかながら低い。
大きい、2枚のドアから各座席への出入りはごく容易である。フロントは、セパレート式のシートで、前後の調節はもちろん、バックレストの角度も変えることができるので、まずたいていの体格のドライバーに自然なドライビングポジションを提供する。大径のステアリングホイールの角度も適当で、腕を伸ばしてスターリング・モス流に操縦する習慣のドライバーにはまさに理想的である。
シフトレバーはフロアにある。これはリモートコントロールではなく、昔の米車によくあるような、45度くらいも傾斜したごついレバーである。したがって、シフトの際の腕の運動は前後ではなく、上下運動に近くなり、フロアシフトの利点はある程度減殺されるのは致し方ない。しかしもちろんコラムシフトに比べればはるかに確実で敏速なギヤシフトが楽しめる。
外観から容易に想像されるように、ドライバーの視界はあまりよくない。フロントピラーは太く、またリヤクォーターに大きい死角がある。ウエストラインも高く、側窓は現代の標準からは小さい。その代わり、立て付けの極めて良いドアを閉めると、室内は完全に外界から遮断されたプライベートな空間という気分が強く、鉄の鎧をまとったような安心感がある。
ダッシュボードだけは意外にモダンで、正面に100マイルまでの横へ動くリボン式の速度計があり、その中に水温計、燃料計、積算系およびダイナモと油圧の警告灯が組み込まれている。トリップレコーダーも特別注文により取り付けることができ、そのための窓が最初から設けられてあるが、このテスト車にはついていなかった。乗員に対する安全装置も良く完備しダッシュボードの上縁にクラッシュパッドがあるのは言うまでも良く、2個のサンバイザーも柔らかい安全な構造である。また、前席だけでなく、後席にも、セーフティベルトのための取り付け金具が、最初から備わっているのは普通のファミリーサルーンには異例のことであり、この車の性格をよく語っている。車室の幅は今日の標準からすると細く、フロアの中央にはトンネルが大きく出っ張ているために、リヤシートに3人乗ることは無理である。結局、このボルボは完全な4座サルーンであり、それ以上でも以下でもない。
テストの日はかなり暑い日だったので、寒いスウェーデンの車は暑くて困るのではないかと思ったのだがドア窓を開け、リヤクォーター窓のベンチレーターを(ドイツ車によくあるように、前縁をヒンジとして10度くらい外側へ開くタイプ)開ければ、室内の通風は充分であった。
機構的な特徴を簡単に説明すると、フロントサスペンションはごく当たり前の上下のウィッシュボーンとコイルによる独立懸架ユニットが、がっちりしたクロスメンバーに取り付けられている。エンジンおよびこのサスペンション・ユニットは、ボディ本体に溶接された、極めて剛性の高いサブフレームに取り付けられている。リヤは、リジッドアクスルを、コイルスプリングが支え、トルクアームが前後方向の又、パナールロッドが左右方向の動きをコントロールしている。前後のダンパーは強力な複動式である。エンジンはごく平凡な4気筒、プッシュロッドOHV、1584ccのスクエアタイプ(79.4mm×80mm)、圧縮比8.2、2個のSUキャブレター付きで、出力は85ps/5500rpmというパワフルなものである。
ギヤボックスにも3スピードと4スピードの2種がありいずれも全段シンクロメッシュ付きである。テスト車は4スピードモデルのほうであった。こう見てくると、ボルボのスペシフィケーション、その高性能を示唆するような目覚ましい特徴はほとんど何もないように見える。ただ一つ、その謎を解くカギは非常に有利な馬力荷重にある。即ち、全重量わずか970Kgに対して、85psだから、馬力荷重は11.4Kg/psにすぎない。これは1.5リッター級ファミリーサルーンとしては異例に低く、ほとんどスポーツカー並みである。
■圧倒的な加速
PV544のエンジンはまさにスポーツカーのそれである。1.58リッターで85psという高出力ユニットでは当然ながら、低速では極めてラフで、約600rpmと推定されるアイドリング時にも、シフトレバーがかなりひどく揺れるほど振動する。しかし、プッシュロッドOHVの実用車エンジンとしては全く驚くほど楽に回転が上がり、テストの際はサードでスピードメーターの針は80mph(128km/h)に再々達した。これはおよそ6500rpmに相当するが、この回転数においてもなお、バルブの躍りは起きなかった。
エキゾーストノイズはオーナーの佃氏がセコンダリーマフラーを外してしまわれたので、スポーツカー並みに大きく、健康的な音がする。このボルボに初めて乗った人が異口同音に感嘆するのはその圧倒的な加速性能である。特に急ぐつもりはなくても、ローで30mph(48km/h)、セカンドで50mph(80km/h)、サードで80mph(128Km/h)まで容易に達する。
マキシマムはカタログによれば155Km/hであるが、今日の日本の道路でも、加速が良いのでちょっとした直線路があれば比較的簡単にこのスピードまで出すことができるほどである。
フロアシフトの4スピードギヤボックスは、やや動きが大きいきらいはあるが、概して使いやすく、かなり確実である。シンクロは非常に有効で、ただの一度も不愉快なギヤ鳴りは経験されなかった。クラッチは作動がスムーズで、しかも急である。一口に言ってスポーツカー的で、理想に近い。オーナーの佃氏は有名なスピードマニアで、トップは60mph以下では使われないそうであるが、40mph位でもスムーズに走れるし、別にエンジンに無理な負担をかけているとは思われなかった。無論、この速度からの加速は無理で、踏み込むとエンジンはしばしためらう。
トップが鋭いレスポンスを示すのは50mph(80Km/h)を超えてからで60mphでもスロットルを踏めばなお、かなり敏感に加速が効く。
この車のスピードメーターはマイル表示であるが、運転している感じは国産の1.5リッター級の60キロがちょうどボルボの60マイルに相当するほどである。市内の運転は全てセカンド、サードで、しかも相当頻繁にシフトを繰り返さなければならない。混んだ市内では、しばしば走行中にローへさえシフトダウンする必要が起こるが、フルシンクロの強みで、全くフールプルーフに変速が行える。
市内の低速運転を続けると、水温系の針は直ちにHを指すが、最近日本へ来たボルボのエンジニアによれば全く心配ないそうである。
この車の最も得意とするところは、やはりその余裕馬力に物を言わせた容易な高速ツーリングであって、道路と交通さえ許せば、常時80mphを保つことは車にもドライバーにも決して無理ではない。
エンジンノイズは、このスピードでは相当に大きい。エアクリーナーは、スポーツカー式のごく小さな簡単なものなので(日本のような埃のひどいところではその効果は大いに疑わしい)スロットルを踏み込むと力強いエアの吸気音が聞こえる。
ギヤノイズは各ギヤについてごく低い。特にサードは音のみでは普通の車のトップと変わらないほど静かで、常時サードを連続して使っても、心理的に疲れるようなことはない。
次にスピードメーターとストップウォッチによる、簡単な加速テストの結果を示す。
0 - 30mph(48Km/h) 5.3秒
0 - 40mph(64Km/h) 7.2秒
0 - 50mph(80Km/h) 11.2秒
0 - 60mph(96Km/h) 15.2秒
0 - 70mph(112Km/h) 21.0秒
0 - 80mph(128Km/h) 30.6秒
このデータを外国のテストと比較するとかなり下回っている。
例えば80mphまでのタイムは、Road&Track誌では、13.0秒である。
これは、本誌のはロードテストであって、破壊テストではないから、エンジンの回転数は安全なマキシマムまでしか上げないことにしている。これに対し、外国のテストは、仮に6000rpmが安全なマキシマムとすれば、6500くらいまで踏み込んでおり、これがデータの差の原因である。
このロードインプレッションの数字はあくまでも非公式の目安なのであり、普通のオーナーでも少し慣れれば自分の車から期待することのできるタイムであるということをご了承願いたい。
しかし、それでも尚、60mph(96Km/h)まで約15秒というタイムは、1.5リッターの、完全な4座サルーンとしては驚くべき性能には違いない。
余裕馬力のために、ヒルクライムもボルボの得意な種目である。箱根の登坂は、セカンドとサードを使って、常に30mphから40mphを保って登った。
すぐ前を、箱根の道を熟知した60年のプリムスのハイヤーが登っていた。
古臭い外観のボルボに追尾されたのを意識して、V8(230ps)の馬鹿力を頼りに懸命に振り切ろうとしたが、カーブのたびにボルボに追いつかれた。
■スポーツカー的な操縦性
前後ともコイルによるサスペンションというと、米車のようにウルトラソフトな乗り心地を想像しがちであるが、事実は反対で、現代の乗用車としてはむしろ硬いほうである。
前後のサスペンションはボディ本体に対し、ラバーの実質的なインシュレーターを介して取り付けられているので、足回りからのノイズはよく遮断され、室内には響かない。
小さい凸凹は感じるというより、聞こえるといった程度で、一方大きい波状の凸凹を高速で乗り越えても、上下動は一回でやみ、しかも振幅は大きくない。前後のスプリングレートの均衡が良いと見えて、いかなる路面でもピッチングは全く経験されなかった。
ステアリングはロックからロックまで3回転強で、特にhigh-gearedではないが、軽く正確である。
例によって、ステアリング特性とロードホールディングを試すために、箱根十国峠の有料道路を高速で往復してみた。ギヤは終始セカンドとサードで、60Km/hから90Km/hの間を上下した。
ロードホールディングは、リジッドなリヤアクスルの車とは思えないほど優れ、タイトコーナーを80Km/h位で回っても後輪はよく路面をグリップしている。ロールも実用車としてはごく少ない。
コーナーの周り方はコロナに一寸似ている。(もちろんスピードは違うが)
PV544の操縦性の優れていることは既に定評のあるところで、TSCCのスピードトライアルで、1600cc級でボルボに勝つのはポルシェ1600スーパーしかないということを聞いたことがある。
この日、十国峠はあいにく混んでいて、充分に性能を出し切れなかったので、タイムは8分20秒であったが、理想的なコンディションなら、8分5秒くらいまでは縮まると思われた。
ブレーキは軽い踏力で、特に強力というほどではないが、少なくとも信頼性は高く、酷使に耐える。フロントシートの間にあるハンドブレーキは旧型PV444のアンブレラ式よりはるかに使いやすく、ごく有効であった。
こうした高性能の車では、燃費は重要性を持たないかもしれないが、このテストではあまり良い結果ではなかった。即ち、箱根の登坂、フルスロットルの加速テストなど、悪条件を含む230Km余りで平均7.94Km/ℓ、小田原ー東京間の比較的穏やかなドライブ88Kmで平均8.8Km/ℓという数値が出た。オーナーの佃氏によれば、日常の実用燃費も大体こんなところだそうである。
再々述べる如く、このボルボはスポーツカーではなく、スウェーデンでは最もポピュラーな、低価格のファミリーサルーンに過ぎないのであるが、その性能はこのクラスのスポーツカーにも決して劣らない。理想的なドライビングポジション、胸のすくような加速、優れた操縦性などが、この短いテストで得たPV544の好ましい印象であった。