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みなさんこんにちは。

 

酒井根走遊会です。

 

ブログの更新が長い間滞っていたことを申し訳なく思います。

あっという間にNZはトラックシーズンも終盤となり、私のレースの予定は3月6日3000m(記録会)、3月13日1mile(記録会)、3月26日・27日(NZ選手権)を残すのみとなりました。

 

本日のテーマは“短距離走と中長距離走の違い”という内容でお送りします。

※     今回の内容は主観的な部分(コーチングを受けず自分なりに考察した部分)が多く含まれていますので、間違いがありましたらご指摘いただけるとありがたく思います。

 

さて、最近では“ランニング・エコノミー“という言葉が広くランナーの間で知られるようになり、”ランニングフォームの重要性””地面からの反発力を効率的に利用する”ことを意識してトレーニングに取り組んでいる選手がほとんどだと思います。

そうした中で効率的なランニングフォームは“短距離も中長距離も同じ”と多くの人が話しています。

 

しかし、実際に非常にきれいなランニングフォームを持っていながら“爆発的なスプリント力があまりない中長距離選手”“短距離のレースは遅い選手”・”フォームが効率的でない別スポーツの選手より遅い”などといった状況は多く見られます。

 

そして、『なぜきれいに走れているのに短距離が全く速くならないのだろう?』と思っている中長距離選手は多いと思います。

 

短距離走と中長距離走の違い

ここでまず抑えておきたいポイントは、短距離と中長距離の違いです。(今回は同じというポイントは省略します。)

結論から言うと、“短距離選手の地面を押す動作“は、中長距離選手はほとんどのレースや練習で発揮することはありません。

中長距離選手も地面を押して走っていますが、短距離選手の地面を押すという意識は中長距離選手の考えるものとはずいぶん違います。

“短距離選手の地面を押す”という動作は、全体重を地面に向かってぶつけに行きます。乗り込むのではなく、ぶつけに行って姿勢が若干潰れます。つぶしにいくパワー、それを反発させて接地時間を短くして速く大きく遠くへ体を運んでいきます。

この体重と力を地面にぶつけにいって地面を押す動作は大きな反発力とスピードを生みますが、エネルギーの消費が大きいです。大きなエネルギーをに使って爆発的なスピードを生み出すことには非常に優れていますが、エネルギーを安定して供給し続けるということに対しては劣ります。(おそらく不可能です。)

中長距離の選手が、体が浮いた状態(完全に上体がおきて、腰が高い状態)からトップスピードにさらに加速しようとしてもスプリントとしてのトップスピードには到達しないと考えられます。というのもこの状態では、地面を押して加速するのではなく今持っているスピードを効率よく運ぶために優れた動きになっているためです。これは体軸を保って適切な位置に乗り込む(足を落としていく)、地面から体重の落下による反発力を得る、脚を体の前で捌く動作が中心になる状態。地面を強くプッシュすることによって推進力を得ることは、走りの連動性が失われやすく、タイミングを合わせることも困難。

(長距離の選手は体がすぐに浮いてしまう。対して短距離の選手はスタートから加速まで接地で地面へ大きな力を加えていく。)

 

つぶしにいく動作

つぶしにいく動作というのは、接地時(地面に力を加える瞬間)に腰や膝に多少なりとも角度が生まれます。

地面に大きな力を加えにいくという行為は、速く走ることの基本です。私たちは地面に力を加えないとスピードが発生しないということを経験としてわかっています。 

ランニングを習ったことのない人の短距離を速く走ろうとする動作は、蹴り脚が強く、前傾で脚が流れていることがほとんどです。

この“前傾で脚が流れる“という動作は中長距離のランニングフォームを洗練してきた選手にはほとんど見られません。

 

省エネと効率的

中長距離ランニングの基本は“より少ない力でより速く長く走る”ことです。そのためエネルギーを大きく消耗してしまう動作を体が自然に行わなくなります。

“ランニング・エコノミーが高くなった“というのは省エネになったと同義語です。しかし、省エネした走り方でいくら短距離を速く走ろうとしても、爆発的なパワーは生まれないので、ある一定の速度よりスピードが上がっていくことはありません。

中長距離の選手は、試合が近づいてくるほどレースペースへの動きの効率性が高まります。(または、レース期が近づかなくても、経験の豊富で優秀な中長距離選手は専門種目に対する優れたランニングフォームが定着しています。)

つまり、より少ないエネルギーで効率よくその距離を走り切るように動作パターンが定着し不変のものになっています。その結果、効率を無視するような短距離の地面に向かって体をつぶしに行ってでも爆発的なエネルギーを生み出すような動きは自然にできなくなります。

以下のような経験をしたことのある中距離選手も多くいるかもしれませんが、

レース期には400m~800m(もしくは1500m)のレースペースが非常に楽で、レースペースよりも速いペースに上げたりすることも容易にできる。その反面、50m~100mあたりのスプリントを全力で行ったらあまりパワーが出ない、トップスピードに乗れない、200mを9割くらいで走った時の半分のタイムと静止から100mを全力で走った時のタイムが変わらない、といったようなことが良く起こります。これはリラックスして最大下スピードを維持することに優れている状態であり、力を大きく使ってスピードを生み出す意識とは離れた状態です。

 

中長距離選手は短距離のようなゼロからの加速を練習すべきか

この点に関しては、“絶対に必要“とはいいがたいところがあります。 しかし、”地面への力の加え方”の感性や体の使い方を養っておくことは、様々なタイプのトレーニングを行う時に優位に働きます。

中長距離選手の走動作で大切なことは、腰を高く保つ、脚が流れない、重心の真下で接地して反発力を得てブレーキ成分を無くす、ということを適切に続けることです。

“膝に体重が乗って地面を押し込むこと“・”角度のついた上半身が反発力ではじかれて上に伸びる“

これらを簡潔に言うと“膝がつぶれた”・“過度に前傾した“状態はできなくなります。

前述したとおり、レース期では専門種目のためのランニングフォームが洗練されているので、こうした中長距離にマイナスになるようなトレーニングは行わない方がいいでしょう。おそらく百害あって一利くらいしかなさそうです。

しかし、新しいトレーニングブロックを開始した時や鍛錬期では、神経系や骨格筋の発達・地面を押す感覚の調整力などを磨くことによって次のトレーニングフェーズに上がった時の様々な練習への対応力が上がります。

もちろん、トップスピードへのパワーと加速力を高めることによって今まで発揮できなかったスプリント力・ピュアスピードを高め“短距離を速く走る”という方法を体得できる可能性があります。(やらなかったら体得できることはほぼありません。)

 

地面を強く押す練習

1、片脚ジャンプで地面を抑えて止まる

 

2、片脚ジャンプで前傾を保ったまま地面に強い力を加えて跳ぶ

 

3、1・2を連続して走りの動きに繋げていく(脚は素早くさばかず、キックだけで進む)

 

4、5秒程度の坂ダッシュ

上体が浮かないように前傾を保ちつつ、一歩一歩体重を乗せながら地面を強く押して進む

 

5、5秒程度の坂ダッシュ

上体が浮かないように前傾を保ちつつ、地面を押して大きく進む(速い回転は意識しない)

 

6、20m~30m

坂ダッシュで意識した地面を押して大きく進むイメージで強く地面を叩きに行く(速さは意識しない)

 

7、20m~30mダッシュ

全力で走る

 

日本は3月でこうした基礎トレーニングを行う期間はすでに過ぎてしまったかもしれませんが、もし興味がありましたらピュアスピードトレーニングを中長距離のトレーニングの中にも取り入れてみてはいかがでしょうか?

トップスピードの向上に役立つ可能性は大いにあります。しかし30mの練習をレース前に行った場合にパフォーマンスにいい影響はあまりないことを覚えておいてください。