みなさんこんにちは。
酒井根走遊会です。
今回は記事”『ビルドアップ』というトレーニング”の後編になります。
前編では、
・ビルドアップというトレーニング
・ビルドアップの目的と効果
・ビルドアップという練習を分解する
・ビルドアップの弱点
後編では、
・ビルドアップが活きる選手
・中学生の練習
・まとめ
という内容になっています。前編を読んでいない場合には、是非前編から読んでいただけることを推奨します。
ビルドアップという練習が活きる選手
前編をまとめると、中高生にはビルドアップが効果的で、キャリアが長くなるとビルドアップが非効率的と書きました。
しかし、大人になって練習の中にビルドアップを取り入れて効率的に走力を高められる場合も多々あります。
(専門施設以外でVo2を測る場合にもビルドアップのような方法が用いられる)
① すべての長距離種目をまんべんなく走りたい
長距離種目は5000m~マラソンさらにはウルトラマラソンまで様々な種目があります。
マラソン以上になると有酸素性持久力が主に働きますが、乳酸性作業閾値やその他能力も重要になります。
5000mではVo2maxの優劣が競技に顕著に現れますが筋持久力といったベースになる能力も重要です。
今週は5000、再来週はハーフマラソン、来月はマラソンと10000m…など様々な種目をまんべんなく行う場合、ビルドアップのような様々な能力を少しずつ刺激するトレーニングは、限られた期間・時間の中で非常に有効なトレーニングと言えます。
② 短期間で能力を向上させたい(短期間で結果を出したい)
社会人(エリートではない市民ランナーなど)の場合、半年・1年・2年といった長期の計画で、目標のレースから逆算して、基礎・特化させる能力・レース能力、といった期間を考えて、今必要な練習を数週間の期間に分けて練習するというということはほぼありません。
3か月以下の短期間で、目標のレースに挑むということがほとんどだと思います。
そのため、特化させる能力に集中するのではなく、全体の能力を一回で刺激して、回復させ、再度全体の能力を一回で刺激して、回復させ…ということを繰り返すことが(能力面でいえば)最も近道と言えます。
ビルドアップを数週間行い、あとはマラソンのための距離走を多くする、もしくは5000のための1kインターバルを多くする、などといった短期計画は非常に効率的で効果的です。
(様々なレースに対応できる選手とできない選手の違いは適正だけでなく、取り組み方もかかわっている)
中学生の練習
・ 一つの能力を特化させない(専門的な練習を避ける)
中学生の場合、体が成長期の真っただ中であり、体の状態というのは日々変わっていることが普通です。
そこで専門的な練習、体や能力を特化させる練習を集中して行う場合、体はその刺激や技術、能力に対してすぐに適応するが、それが行き過ぎるとその枠が体に定着してしまい、そこから能力の向上を目指すことが非常に難しくなるということが起こります。早熟型の選手は、体の成長が非常に早かったという場合ととらえることが一般的ですが、能力・技術を若い時期に開発しすぎたためにその後に新しい刺激に対する体の反応が鈍くなってしまったという場合もあることを忘れてはいけません。
特に長距離では筋持久力と有酸素・Vo2(距離をたくさん走る・レースペースのインターバルをたくさん行う)といった部分が結果に結びつきやすく、この部分を狙ってジュニア期に過度に取り組む中学生は少なくありません。
しかし有酸素能力は、成年期になっても(むしろ30歳や40歳になっても)開発可能な能力であり、年齢や競技キャリアに応じて、少しずつ無理のない範囲で引き上げていくべきものです。
逆に有酸素機能以外の部分(スピード・出力・俊敏性・可動域など)は成年期に入ってからの開発が難しくなります。ジュニア期には中長距離の結果(タイム向上)への結びつきが低く感じられ、おろそかにされる場合も多いのですが、“走る“という運動の基礎となる部分を様々な視点から考え取り組んでいく必要があります。
(スプリントトレーニングが苦手な長距離選手は多いが取り組む価値は大きい)
・ 全体の士気を高めること(目指すものがある)が練習の吸収率と効果を高める
“この練習で強くなる。“という言葉に多くの選手は惹かれます。
特に知識や経験の浅いジュニア期に関しては、”このきつい練習をした”・“この距離を走りこんだ”そして“結果が出た“といったように、自身の行った限定的なトレーニング内容と結果を直接的に結び付けようとする傾向にあります。
しかしそのような場合、ハードトレーニングに意欲的に取り組める選手とそうでない選手で、トレーニングに臨む姿勢が大きく変わり練習で得られる効果にも差が出てきます。
また身体の成長度合いによっても、“トレーニングをできる・できない“といった能力差生じてしまいます。そこでできない選手は、やる気がでずに競技から離れてしまうこともあります。
ジュニア期(ここでは中学生)では成長度合いに差はあれ、ハードなトレーニングを長期間続けてきたという選手はほとんどいません。そのため、少量の刺激でどんな選手でも記録を伸ばしていくことができます。
記録を伸ばせる最小限の刺激で、チーム全員の能力が向上していくことは、個々人の競技に対するやる気を引き出し、チーム全体の士気を高めます。
効果のある最小限の頑張れる時間をすべての選手に与え、日々の練習の充実感、大会での達成感をすべての選手が味わえる練習のベースとして“ビルドアップ”効率の良いトレーニングと言えるのではないでしょうか。
(チームでの練習はそれだけで気持ちが高りやすい)
まとめ
『“ビルドアップ“の目的と効果は明確にしにくい』と本記事の前半に書きました。
それはチームに所属する各選手の走力・能力によって、同じ練習を行っても得られる効果の開発ペースが少しづつ変わってくるためです。
しかし、各選手で“きついとこ”・“粘るとこ”・“リラックスして走るとこ”・“気持ちよく疾走するとこ”…を考えて走り、さらに一緒に走って励まし合うことで、練習を達成する・練習の充実感を得るといった“長距離の楽しさ”を発見していくことができます。
こうした“長距離走の楽しさ”が数年後にハードトレーニングを一人でも行えるようになる根幹になるのだと思います。
つまり目的と効果を長い目で見ると、
“長距離という種目を楽しめるベースを作ること”
“キャリアを通じてのトレーニングに対する高い意識の芽をだすこと”
と言えるかもしれません。




