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みなさんこんにちは。

 

酒井根走遊会です。

 

今回は『意識的に刺激しない能力』というテーマでお送りします。

多くのランナーが、“トレーニングキャリアを積み重ねての停滞”というものを経験したことがあると思います。今回の記事が“停滞を打ち破り、一歩先へ進むヒント”に。そして『キャリアを積み重ねてからのトレーニング』の一つのサンプルになればと思いながら書きました。

 

今回の記事では、結論から言うと、

“レースに対して重要な能力は最後まで刺激しない”

という方法が今まで越えられなかった壁を越えるポイントになります。

 

なぜそのように考えるのか、是非最後まで読んでみてください。

 

目次

1 体の慣れと適応

2 トレーニング計画 “刺激しない能力“を決める

3 基本的な能力の向上 レースの刺激での向上

4 トレーニング計画

5 ピークの持続できる範囲と休養

 

※今回の記事は前編(1~3)です。 後編(4・5)はこちらから

 

(専門種目で発揮する能力を追求すると、最終的には専門的でない部分の強化が必要ということが見えてくる)

 

1 体の慣れと適応

 

中長距離は、

“やったらやった分だけ結果が出る、タイムになって現れる”

とよく言われます。またそのように体験・経験したランナーも多いと思います。

しかし年齢を重ねる、キャリアを重ねるうちにどうもそのように行かないことが増えてくるのも事実です。その壁にぶつかった時に、“年齢”や“才能”、といった一言で線を引いたり、諦めてしまったりするのは選手やコーチとして努力不足のように思います。

 

記録・パフォーマンスが停滞する理由は、

“体が刺激に慣れてしまっている”

ことが最も大きな要因です。キャリアや体が若い時期には同じ練習を繰り返しても、その都度パフォーマンスが向上していきます。しかし何年も同じ練習を繰り返していると、それがただ“維持しているだけ”という状態にぶつかります。これは人間の体の本質的なところで、今までやっていなかったことは少しやれば能力が大きく上昇します。対して今まで多くの経験や訓練をしている分野は、強い刺激を与えたとしても能力はあまり向上しません。

 

そのような中で、壁を越えようと選択される最も多い方法は、

“量を増やす、質を上げる”

です。このように考え・実践することで壁を越える選手も多いと思います。反面、故障や慢性的な疲労によるパフォーマンスの低下というものもついて回ります。さらにはトレーニングを右肩上がりに強化し続けるというのは、年齢による肉体の変化という部分的な要素を切り取って考えてみても、長い競技生活とキャリアを考えた時に大きな矛盾を生じさせることになります。

 

 

(ランニングに関わらず、すべての運動負荷に対し体は適応していく。それは体が同じ負荷に慣れていくことを意味している)

 

2 刺激しないという選択

 

体が“刺激に慣れてしまっている“状態で、同じ刺激を体に与えても変化をほとんど感じません。さらに刺激を増強していくにはリスクが上がってしまう…

それではどうしたら体に適切なパフォーマンスアップの刺激を与えられるようになるのか。それは、

“刺激しない”

という選択です。あえてトレーニング期間の前半~中盤には“レースペースの刺激”を避けるように計画していきます。計画で考えなければならないポイントは以下の二つ。

 

・    頻繁に刺激する能力

・    意識的に刺激しない能力

 

“頻繁に刺激する能力“

これは、“走る“という運動に必要な要素(筋力・筋出力パワー・神経系・可動域など)をはじめ、走る能力だが本番のレースでは動員しない能力(スプリント・ロングランなど)といったスピードのもと、スタミナのもととなる分野です。

“意識的に刺激しない能力”

これは、狙ったレースで“最も発揮したい能力”ということになります。例えば3000mや5000mをメインの目標にしている選手は、そのレースがくる直前まで、1000mのインターバルや2000m~3000mのレースペースといった練習を控えます。レースで発揮されるVo2などの能力を意識的に刺激しないことで、体がその刺激に慣れることを抑えて能力が引きあがる上限に蓋をしないようにしておきます。

 

 

3 基本的な能力の向上 レースの刺激での向上

 

“基本的な能力の向上”

これは、“発揮できる最大スピード“などを考えると分かりやすいと思います。

発揮できる最大スピードを上げることは、余裕をもって速いペースを維持できる最大下スピードの向上にもつながり、最終的には、

レースペースでの速いペースでのゆとり

ラストスパートのキレ

といったレースでの重要な要素に繋がっていきます。

もしくは”基礎的な筋持久力”を向上させておけば、短距離では負ける選手にも、有酸素能力が必要な種目ではスピードの有無にかかわらず勝つことができます。

ここでよく間違って起こる事実として、今までやっているトレーニングにさらにこうした“基本的な能力の向上”を目指したトレーニングを組み込むことです。練習量を増やすことで新しい刺激に対する適応の時間がかかりすぎて今まで以上に、休養日を必要としてしまったり、体が疲れている状態で刺激したいポイントまで体が動かなかったりします。

そのため“基本的な能力の向上”を目指す期間は、その能力を十分に発揮できる、集中してトレーニングを積めるような計画にします。

 

“レースの刺激での向上”

これは、“レースペース”のトレーニングと考えると分かりやすいと思います。長い期間レースペースでの練習を行っていないところから、レースペースのトレーニングを始めると

回数を重ねるごとに自分の走りが変わっていく

トレーニングを重ねるたびにレベルアップしていく

感覚が味わえます。これは今まで意識的にレースペースの分野を刺激していなかったため体が刺激に対して“新鮮な刺激”として反応し、適応していくためです。

そしてこの短期間のレベルアップを可能にする準備として、前述した“基本的な能力の向上”を中心としたトレーニング期間が必要となります。

※後編へ続く