クイーンズタウンマラソン 2019 | 酒井根走遊会のページ

 

11月16日土曜日はクイーンズタウンマラソンに参加しました。→公式ウェブサイト

 

11月15日金曜日・11:50ウェリントン発の便でクイーンズタウンへ。優勝・コースレコード(2:23)の更新を目標にクイーンズタウンへ。

実際に自分の感覚ではコースレコードの更新は今の段階では難しいと考えていました。というのも

①マラソンの距離を走り切れるスタミナがない

②コースを走ったことがない

これら二つが主な理由です。また同じクラブのダンも一緒に出場予定であったので準優勝以上を一つの基準と定めていました。

 

①     マラソンの距離を走り切れる自信がない

マラソンの練習では60分~90分程維持するマラソンペースを、ゆとりを持って走れるワークアウトとして行うことが基本です。しかしマラソンペースの練習はマスタートンマラソン(ハーフ)・オークランドマラソン(フル)で行うのみでした。これらレースで感じていたことはペースに余裕があっても60分以上のマラソンペースで疲労を感じていたことです。60分で脚に疲労を感じている場合、その後60分以上走る中で脚にゆとりがなくなることは容易に想像できます。

 

トレーニングゾーンや選手特性から、地力のスピードがなくペースにゆとりがない場合でも、マラソントレーニングにおいてある程度距離をこなすことによって同じペースを2時間以上維持できるようにすることは可能です。

私の場合、現在はトラックレースのベースづくりでのマラソンなので、距離を踏んでスプリント能力が失われてしまっては本末転倒です。

こうしたマラソンという種目の競技時間に不安要素がある場合、マラソンペースを最後まで維持することは精神的にも肉体的にも難しいでしょう。

 

②     コースを走ったことがない

普通のマラソンといわれる競技は舗装された道路で42.195㎞を競います。しかし今回のコースはオフロード、それも前半21㎞は道幅が1m程の狭い走路を3分20秒前後のペースで駆け抜けます。コース上のヘアピンカーブや急激なアップダウン、湖畔の木製の遊歩道、デコボコ道は先を知らないとコースアウトして湖に落ちてしまうようなコースです。今回のマラソンは走ったことがなかった、また以前ワナカに行った際にヘイス湖の周辺を軽くJOGした程度であり、どのようなランニングテクニックで駆け抜けてよいかは全く未知数でした。

 

こうした理由で、コースレコード更新に臨むにあたっての大きな不安要素が二つもあったことは現実的に目標達成を困難なものであると私自身に理解させていました。

当初の目標が達成できない場合に、記録のほかに目標とすることは、”順位”です。しかしここでも大きな壁が。ウェリントンでのトレーニングパートナーであるダニエル・ジョーンズ選手(ダンの記事はこちらから)が一緒に参加していたためです。彼の自己ベストは2時間16分、そして練習を共にして彼のマラソンペースの持久力の方が上であると感じていたこと、なによりマルチスポーツアスリートとしてトレイルをハイスピードで走ることに対する経験値はまだNZで4年ほどしか経験していない私よりもはるかに高いということはわかっていました。

そこで最も現実的な目標を準優勝以上と定めて大会に臨みました。

 

以上を踏まえて、レース中に考えていたことは以下の通り…

 

※約3年前のワナカ・トレーニングキャンプは素晴らしい思い出です。

                                      

                                                                                    

レース当日は深夜から降り続く雨模様。雨で道が混むことを予想し、早めに出発。7時30分に会場に到着。

スタート8時20分まではまだ時間がある。

ダンと車の中で談笑しながらスタート時間を待つ。

8時過ぎ、そろそろアップを開始しようと車から降りトイレへ。トイレで用を足し、5分ほどJOG・5分ほどドリルをしてスタートラインへ。

多くのランナーが既に並んでいるが、ある程度“速そう”な雰囲気を出しているとみんな笑顔で前の方へ道をあけてくれる。(ありがとう)

スタート前は緊張しているよりも笑顔やたのしそうな会話に溢れ、いつも心地いいスタートを迎えられることがNZマラソンのいいところ。

 

NZのトップランナーが来ているかどうかを確認していざスタート。

テクニカルなコースということもあり、みなゆっくりとスタート。私はコースを知らないので誰かの後ろに着こうという考えが一瞬頭をよぎるがコースが狭いトレイルなら先頭で未透視がいい方が走りやすいと思い早速先頭へ。

ペースが遅いことに合わせるよりも、自分のリズムを作る方が自分のレースと思い、脚が気持ちよく動くペースで走ることを体が自然に選択してすでに2㎞あたりで独走状態と思われたが…

 
 

スタートから約2㎞でクイーンズタウンの隣町、アロータウンを通り抜ける。アロータウンは以前ワナカで合宿をした空き時間に観光に来たことを思い出しながら走る。

町の中は300m程度と短いが後ろから誰か追ってくることがわかる。ダンかと思ったが、少し足音が違うように感じていた。ペタペタという音はダンよりもスピードがない動きの足音のように感じていた。

アロータウンを一瞬で駆け抜け、本格的なトレイルに入る。

このトレイルは走りやすいが走りにくい。というのも深夜から降り続いた雨はスタート直後に上がったが、土の路面を濡らし、水たまりを所々に作っている。そして濡れた落ち葉と濡れた土の組み合わせは予想以上に滑る。

木々に視野を遮られたトレイルの下りではロードやトラックで養われたペース感覚は全く意味をなさない。視野が狭いとペースは速く感じる、動きはリラックスしている、小さいアップダウンや90度やヘアピンカーブで大きなストライドと細かいピッチの両方を使いながら、おそらく今日のマラソンペース努力感という感覚で駆け抜けていく。この間のヘアピンカーブで後ろからついてきているのはダンでないことが確認できたが、NZトップランナーではないことも確認できた。

 

10㎞あたりでヘイス湖のトレイルへ。ここは走ったことがあるトレイルで先が何となく予想できる。リズムを上げて後ろのランナーを引き離しにかかる。これは仕掛けているというよりも、自分の自然なリズムで走れるようになったという方が適切である。トレイルの間に湖の上を走る遊歩道、道幅約1m、ゴムのマットがついた区間がある。滑ったりカーブを曲がり切れなかったら湖に落ちるな…とマリオカートの気分で疾走する。

ここでペースを落として、再び加速することに力を使ったが、ペースを元に戻した後で時計を初めて確認。3分40秒くらいかかっていると思ったが、実際には3分25秒。意外といいペースであった。その後登りに差し掛かかり再びペースを大きく落とすが、激坂にきつくなったのは私の脚ではなく、前を走る自転車伴走。たれてくる。。。100m以上先を走っていたと思うがみるみる迫ってくる。いや自分が迫っている。そして抜かそうと思ったが…

 

この区間は道幅が1m程しかなく、私が抜いたら自転車で私を向き返すことは不可能である。そのため、自転車が下り坂で加速するまで自転車の後ろで待機することにした。

来年はもう少し速いライダーを伴走にしてもらいたいものである。

 

湖畔を抜けると数少ないロードコースに入る。しかしここがきつい。

トレイルの方はアップダウンの自然な加速でペースを上げていて、ペースを保つ感覚はなくても自然に上がっていた。

しかしフラットなロードは地面をプッシュして走らなければならない。

ここでは若干、上っているのではないかというような錯覚さえ感じる。

そして視界が開ける、これがさらに自分のペースが大きく落ち込んでいるように感じさせる。

さらに追い打ちをかけたことはトレイルの上りで抜かそうとした自転車伴走は,ここぞとばかりに加速し私の遥か彼方を豆粒くらいの大きさで走っている。遠くで私の方を振り返っていることが何となく視認できる程度…

 

21㎞の通過タイムで今回二回目のタイム確認72分20秒くらいに見えた。

そして、その先のトレイルの入り口手前で後続を走っていたランナーに抜かれた。(きつい)

 

※後半のトレイルはフラットであり幅があり走りやすいが、ハーフマラソンのランナーを抜かしていかなければならない。

 

抜かれた時はすでにペースが大きく落ち始めていて、3分45秒くらいかかっているのではないか、と思っていたが実際には3分25秒(ロード)。意外と落ちていないということが分かった。抜かれたランナーについていくことはできなかったが、すぐに間が大きく開かなかったこともまだ体が動いていると少し自信になった。

 

30㎞を過ぎるとトレイルの道幅は広くなり、細かいアップダウンもほとんどなくなる。コースは走りやすくなった半面、新たな壁が迫ってくる。

ハーフマラソンのランナーが道を覆っているのである。

このレースではランナーは速い選手のために左側によって走るようにアナウンスされているが、それを守って走るランナーは少ない。道に広がって走っているランナーの後ろから“Track!!”“Keep Left”と叫びながら走る。

多くのランナーは追い抜きの際に“Keep up!!” “Awesome running!!” と応援してくれる。叫んでよけてもらう申し訳ない気持ちと、きついので早くよけて、と思う気持ち。そしてコースを蛇行しながら走る苦しさに気持ちを切らさないようにゴール目指して駆け抜ける。

 

この辺りまでくると足の裏がかなり痛くなっていることにペースが落ちてきて気が付く。

今回はペガサス36で臨んだが、当初はアディゼロサブ2で臨む予定であった。アディゼロサブ2はトレイルに対してグリップが少ないうえにラバーが薄いのでトレイルの石には全く向いていなかった。ペガサスで良かったと思いながら、最後の1㎞でペースアップを試みる。コースは50mほど先までしか見えていなくゴールがどこかは全く分からなかったのだが。

 

※レース前日の会場

 

ゴール

ゴールはあっけないものだった、ゴールの公園に入ると時計は2時間30分を示している。2時間30分は切れると考えていたので少しがっかりしたが、それでも2位を守り切れたこと、”トレイルを走って股関節周りが非常に疲れているのでゴールまでたどり着けるかわからない”と不安が20㎞あたりですでに脳裏をよぎっていたが、ゴールできたことは非常に嬉しかった。

しかしゴールした時に一つ疑問が、ダンはどうしたのだろう。

1着でゴールした選手と健闘を称え合い、自己紹介としばし談笑。ナイキのネクスト%はトレイルで滑りやすかったと笑っていたが、つるつるした路面で良く走り切ったと驚きの方が大きかった。彼はフェベ。スイスのランナーで先週オークランドに来たばかりだという。これから多くの大会で一緒に走ることになるだろうと、また楽しみが一つ増えた。

しばらくして、3着の選手がゴール。3着はジョノ。オークランドベースのランナーで各大会でよく話をする。ジョノの話によるとダンは途中でレースをやめたらしい。

レース前にアキレス腱に不安がある、と話していたのでおそらく大事を取ってレースをやめたのだと分かった。ダンは私のように小さなマラソン大会でレースをすることを目標にはしていない。世界大会を目指してトレーニングをしている。当然の判断だと思った。

 

 

ゴール後にダンと少し話をしたが、小さいレースでもやはり悔しさをにじませていた。

またこの先の練習計画の変更もあるので、少し気持ちが落ち着かない様子だった。しかし、次のレースや計画に向けて希望があるから不満も出てくるのだと。

私もこのマラソンが終われば本格的なスピード練習がはじまる。楽しみでしょうがないが、今の疲労状態を感じていると休養が必要で変更点がいくつかあると不安にもなる。

このように競技に対して熱中し、日々のランニングに夢中になっていると、”適切な選択を続けて行くことが大きな目標達成に最も大切なこととはわかっていても”、衝動的に誤った選択をしてしまうことも多々ある。誤った選択をすべて回避することはランニングに夢中になっている以上、不可能といっていい。しかし、大切なところで冷静になり、自分を客観視し、分析し、危機を管理・回避できていれば何歳になっても必ず目標へ近づき達成できると信じている。

 

今シーズンこそはトラックでの自己ベストを。

全ての種目の時間が止まったのは2011年。2020年1月から止まった時間が動き出すと期待しているが、その時間を動かす準備は現在順調に進行している。